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大山団地健康体操フォークダンス

誰もが安心して暮らせる団地――住民への積極支援で活気あるまちへ(後編)

全国的にも住みやすい団地として有名な都営上砂町一丁目アパート(通称:大山団地)。1963(昭和38)年、東京都立川市に建てられたこの賃貸住宅はその後、建替え、新築等を経て現在は29棟にも及ぶマンモス団地になっています。長年、大山団地に住んでいる方も多く、現在は約1,470世帯の4分の1程度が単身高齢者。そのため自治会は、高齢者対策として「見守りネットワーク」の構築や企業との連携、自治会葬など、さまざまな活動に取組み、団地内の住民から絶大なる信頼と評価を得ています。活動内容を紹介しながら、その理由を探ります(前回は子育て支援活動についてお伝えしました)。

シニアライフ

孤独死ゼロを目指して

都営上砂町自治会だより低

大山団地では高齢化が進むにつれ、2003年(平成15年)までは孤独死が年に4件くらい発生するようになっていました。そこで当時の自治会長(以下、自治会長)は、「長年がんばってこられた高齢者の方が一人で亡くなってしまうのはあまりにも寂しい。孤独死をなくすには、『向こう3軒両隣』の精神で、周囲が見守る必要がある」と考え、総会や役員会、月1回の「自治会だより」などで呼びかけました。「自宅の両隣のお宅に関して、今日は姿を見かけたか、ベランダに洗濯物を干してあるか、もしくは長く干したままになっていないか、ドアポストに新聞や郵便物がたまっていないか、などいつもと違う様子に気づいたらすぐに自治会へ連絡ください。そして外出時は隣にひと声かけて出かけましょう」と周知させたのです。

さらに自治会費等を振り込みにはせず、棟ごとの班長が班のメンバー宅を訪れて、1世帯2,000円(自治会費400円、管理費1,500円、区費100円)を毎月回収してるのです。班長は集めた会費を自治会に届けるだけでなく、住民の様子も一緒に情報として伝えます。これは未払いの予防だけでなく、住民の安否確認が重要な要素になっているのです。また、毎月行っている団地内の清掃活動に長期不参加の方がいた場合も、自治会に報告することにしています。

団地内だけでなく地域との連携も万全に

都営上砂町IMG_0674明低

地域の企業や商店にも協力を仰ぎました。電力会社、ガス会社、水道局には、検針の際に普段の使用料と極端な増減があった場合、新聞販売店には前回配った新聞がポストに入ったままの場合は、自治会へ連絡していただくようにしました。商店の方には、認知症の早期発見のため、数日間のうちに同じものを大量に購入した人や近所をさまよって自宅に戻れない人を見かけたら、民生委員へ連絡していただき、身内の方に報告するようにしています。

このような「見守りネットワーク」を構築するにあたり、住民からはプライバシーの保護など、異を唱える方は1人もいなかったといいます。自治会長は「個人情報の取扱いに関しては、目的や活用法、管理法などをきちんと説明すれば、住民の理解を得ることは可能ではないでしょうか。住民の若い方は『明日は我が身』ということで積極的に協力してくれますし、高齢者からは安心して暮らせると感謝の声が多く寄せられます」と力説。これらの三重、四重の見守り体制が功を奏し、2004年(平成16年)から現在にかけて団地内の孤独死はゼロ、事故や火災の防止にも役に立っているといいます。

全面バックアップ体制の自治会葬

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大山団地では、毎年約30人、現在までに458人の方が自治会で葬儀を行いました。自治会葬を始めたきっかけは、住民の方から自治会へ葬儀代の借金の申し出が2件あったからです。そこで自治会では立川市シルバー人材センター葬祭事業部の協力を得て、自治会が主体となって葬儀を執り行うことにしました。

自治会の集会所を会場にする場合は、市から32,000円で祭壇を借り、シルバー人材センターが通夜や葬儀の運営をします。自治会の葬儀ボランティアも、外のテント設営などの手伝いに駆け付けます。自治会では、亡くなった方の親族に葬儀後の手続きまで丁寧に教えていくため、親族は死亡診断書を用意するだけで、何の心配もいらないといいます。さらに生花や食事、香典返し、線香などは地元の指定業者に頼んで割り引いてもらっているため、通常の葬式に比べるとかなりの節約になります。

住民が健康で笑顔で暮らすために

大山団地創年クラブ(高齢者健康体操)

自治会には「人材バンク」のリストがあります。これは、自治会で登録制度を作って人材を募ったのではなく、大工仕事・裁縫・植木の手入れ・電気工事ができる人など、住民が困ったときに助けてくれる人たちの情報を集めてリスト化したのです。前述の葬儀ボランティアも人材バンクの一部です。このように団地内の眠っている能力を発掘して発揮すれば、困っている住民も助かり、住民同士が知り合うきっかけにもなります。

さらに2010年(平成22年)には「創年クラブ」を設立しました。これは高齢者が介護を受けないで健康に生活できるよう体操教室や料理教室、脳のトレーニング、食事会、ハイキングを楽しむ会などを催しています。現在、会員数は約80名まで増え、高齢者の生きがいにもなっています。
以上のように大山団地では、子育て支援や高齢者対策など、住民全体がまさに「ゆりかごから墓場まで」24時間安心して笑顔で暮らせるような体制が、何重にもわたって整備されています。これこそが全国から注目を集めている所以かもしれません。

また、現在の自治会活動の基盤をつくった自治会長は、2015(平成27)年4月に任期を終えました。しかし今も役員や自治会の活動等を全面的にバックアップし、自治会では後任の自治会長のもと、積極的な住民の支援活動を継続しています。

概要(取材年月:2015年04月)
  • 建物名:都営上砂町一丁目アパート(通称:大山団地)
  • 所在地:東京都立川市
  • 階数 :3~14階建て
  • 総戸数:29棟、1,600戸
  • 竣工年:1996(平成8)年より順次建替・新築
  • 管理形態:賃貸住宅自治会
  • 管理会社: -
  • 総会開催:毎年4月
  • 役員数 :44名(会長1名、副会長5名、会計2名、区長31名、部長5名)
  • 役員任期:1年