共通

mainView
大山団地桑の実学級保育

誰もが安心して暮らせる団地――住民への積極支援で活気あるまちへ(前編)

東京都・立川駅からバスで約20分の距離にある都営上砂町一丁目アパートは、通称「大山団地」として親しまれている賃貸住宅です。約1,470世帯を擁する29棟のマンモス団地を管理する自治会では、子どもや親をサポートする子育て支援や高齢者の見守り制度など、居住者にやさしく住みやすい環境を整えています。近年ではそれらの活動内容が全国的に知れ渡り、入居倍率が14倍だったときもあるほど! そこで前編では子育て支援、後編では高齢者の見守り制度を紹介しながら、その秘密に迫ります。

その他

行政に断られてもあきらめない! 支え合いの子育てを目指して奮起

都営上砂町IMG_0675明低

1999年(平成11年)、大山団地内で2件の傷ましい児童虐待事件が起こりました。1件は、父親が子供に熱湯をかけ、やけどを負わせた事件。もう1件は父親が子供に殴る蹴るの暴力をふるい、子供の体にあったあざから事件が発覚しました。さらに子供たちの夜間外出などの非行も目立ってきたのです。当時の自治会長(以下、自治会長)は、自分が子育てをした昭和50年代においては、地域の方々の応援により子どもも親も育った時代だったが、最近は人とのかかわりがとても希薄になっている、と危機感を抱いたといいます。

そこで自治会では子育て経験者と話し合い、地域ネットワークの構築が急務であるという結果に至りました。まずは立川市へ赴き「子育ての相談窓口をつくってください」と市長へ提言したところ、「国からの指令なしに動けない、予算がかかる」と断られたそうです。しかしあきらめずに自治会は「それならば問題解決には自分たちで立ち上げるしかない!」と一念発起。まず団地内の民生委員など、6名のサポーターを集め、支援組織づくりの準備にとりかかりました。

相談を受けるのは厳選された専門集団

大山団地子育て2

自治会長は、サポーターを選ぶ基準をかなり厳しいものにしたといいます。第一に子育て経験者で、プライバシーを守れる人。第二に地域の学校とのつながりを考慮して団地に隣接している立川市立大山小学校の卒業生、もしくは子供が卒業生であること。第三にボランティアでの対応となるため、経済的に余裕があり、穏やかで親身になって取り組んでいただける心の豊かな人。以上の条件をもとにサポーター6名のそれぞれが住民の中から適任者を推薦し、看護師、保育士、会社員などさまざまな職種による専門集団24名を集めました。そしてついに1999年(平成11年)11月、「大山ママさんサポートセンター(大山MSC)」が設立されたのです。

24時間体制で徹底支援

相談内容は、子供の夜遊び、不登校、十代の妊娠・出産、朝ごはんを食べさせる方法や、親に料理を教えてほしい、など多岐にわたります。相談者からは、まず自治会事務局に電話が入ります。事務局が休みのときは、自治会業務専用携帯電話につながり、24時間体制で相談を受け付けています。予約制になるため、事務局側で相談内容に応じて、サポーターの選定と日程調整をします。その後、最初は民生委員が集会室で話を聞きます。

「大山MSC」では、毎月1回、第四水曜日にサポーターを集めて定例会を開き、一つひとつの事例に対する解決法を話し合ったり、経過・結果報告などを行っています。事例に対し、サポーターだけの対応で解決する場合もありますが、いじめや引きこもり、訴訟にまで発展した傷害事件など難しい問題に対しては、学校や子育て支援センターと連携したり、弁護士などの専門機関を紹介したりして解決の糸口を探ります。

自治会長は、住民に寄り添って納得するまで根気強く何度でも話を聞くことが大切だといいます。保護者からは「相談後は子供とうまくコミュニケーションをはかることができました」、児童からは「親がおいしい料理を作ってくれるようになってうれしい」など、感謝の声が多く寄せられるそうです。

団地内だけでなく市外からも相談者が殺到!

都営上砂町IMG_0662低

「大山MSC」が設立されて16年経過し、毎年約40名、延べ600名くらいの方々が相談に訪れました。現在では、口コミやインターネットの情報などで評判になり、大山団地内だけでなく、西東京市や小平市、多摩市など市外の方々からも相談者が訪ねてくるほどです。

自治会長は、「今は人とのかかわり方が難しい時代。地域で子供を育てていけば、子供は先輩である高齢者を敬う気持ちが養われ、若いお母さん方は高齢者から子育てを学んで自分自身も成長する。結果としてそれぞれが地域の中で居場所ができていきます」と今までの活動を振り返ります。さらに今後の課題として、「現在は行政の相談窓口もできましたが、時間外に相談できないときに、24時間体制で即座に対応することが私たちの役目。この活動をもっと広めて、悩んでいる方々のお役に立ちたい」と意気込みを語りました。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

次回は、高齢者の見守り制度を紹介します。
乞うご期待!

To Be Continued.

概要(取材年月:2015年04月)
  • 建物名:都営上砂町一丁目アパート(通称:大山団地)
  • 所在地:東京都立川市
  • 階数 :3~14階建て
  • 総戸数:29棟、1600戸
  • 竣工年:1996(平成8)年より順次建替・新築
  • 管理形態:賃貸住宅自治会
  • 管理会社: -
  • 総会開催:毎年4月
  • 役員数 :44名(会長1名、副会長5名、会計2名、区長31名、部長5名)
  • 役員任期:1年