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共用施設の用途見直しで無駄を削減(2)機械式駐車場の一部を平置きに!

マンションの修繕積立金不足が問題視されています。当初の設定金額の低さや段階的な値上げの先送りといった要因から、大規模修繕を目前にして積立金不足に悩む管理組合が増えているのです。そんな課題にいち早く真っ正面から取り組み、修繕積立金の均等化のみならず、機械式駐車場を一部平置きにして財務の見直しを図った管理組合をレポートします。

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50年後、修繕積立金が11億円不足する!?

P6170012JR京浜東北線「新子安」駅から徒歩4分の好立地に建つ、「ザ・パークハウス横浜新子安ガーデン」。総戸数497戸の大規模マンションで、築4年目ながら既に良好なコミュニティが育っています。前回ご紹介したように、立候補をした管理組合の理事たちを中心に、1年目から様々な改革を断行してきました。

 

2年目にはアフターサービスインスペクション(※1)を実施し、居住者への内容説明の際に、第三者機関であるコンサルティング会社に長期修繕についても触れてもらう機会を持ちました。そこで「居住者の多くが永住志向の場合は長期修繕計画の見直しは早めに実施したほうがいい」とアドバイスを受け、居住志向や修繕積立金の積立方式などのアンケートを実施しました。

 

修繕積立金は、元々マンションの売主が設定しているのですが、販売時にはランニングコストを低めに設定し、段階的に増やしていく段階増額積立方式をとっていることがほとんどです。しかし、それでは積立金不足で多額の追加金を徴収せざるを得ないなど、大規模修繕を前にしてその対応を迫られるケースもあります。

 

そうならないために、アンケートの結果を踏まえ、コンサルティング会社や管理会社と一緒に、長期修繕計画を適正化する検討に着手。項目・期間などの見直しを行い再試算したところ、このままの資金計画(30年目までの段階増額積立方式)でいけば修繕積立金が大幅に不足(このまま50年経過した場合、総額で11億5千万円が不足)するため、管理組合が早期に取り組むべき事項として、修繕積立金を改訂することが望ましい、というのです。

また、それ以外にも機械式駐車場の運営および修繕計画についても「再考が必要」との意見が出ました。

 

稼働率7割の駐車場。運営について徹底的に見直す

図1ザ・パークハウス横浜新子安ガーデンには、全部で323台の駐車場があります。平面式が9台、3段昇降式の機械式駐車場が132台、4段横行昇降式が182台。しかし、実際に使用されているのはその約7割の237台で、特に4段横行昇降式の稼働率が低く56%ほどでした。管理組合としても、入居当初からの稼働率の低さに危機感を持っていました。コンサルティング会社の意見としては、「駅近のマンションでは利用者の増加を見込めず、駐車場のメンテナンス費用だけが膨らんで苦労しているところが多い。10年目に撤去するマンションが多いが、『もっと早くやればよかった』というのが共通の意見である」とのことでした。

 

そこで、管理組合では空きの多い4段横行昇降式の一部区画を撤去し平置きとすること、4段式のうち、一段のパレットを撤去してハイルーフ車に対応することを提案したうえで、早速住人にアンケートを実施。駐車場を利用していない住人は今後車を購入する予定があるか、その他運用の改善策についての意見も広く求めました。その結果、車を購入予定の世帯があり、ハイルーフ車のニーズも高いこと、理事たちの提案に対し賛成意見が多いことなどがわかりました。

 

また、意見もたくさん寄せられました。「外部貸し出しをして収入を得てはどうか」「空き場所を撤去して、レンタルボックスや駐輪スペースとしては」など、別の使い方の提案もあり、その一つひとつについて丁寧に検討した結果、4段横行昇降式の一部40台分を撤去し、その場所に平置きを11台分確保。さらに元々空いていた12台分のパレットを撤去し、ハイルーフ車の駐車を可能とすることに。外部貸し出しについても検討しましたが、近隣地域での需要が少ないことや納税義務が発生すること、一部住人からもセキュリティ上反対の声が上がったことなどから、今回は見送ることとしました。

 

長期修繕計画に関する説明会は2期から3回実施し、3期で管理組合が出した検討案の全体説明会を4回実施。居住者の生活に直結する重要な議案のため、平日・土日を問わず、日中・夜など様々な時間帯で、全体説明会のほか同内容の個別説明会を10回実施しました。また、アンケートの内容についても常に情報を開示しました。丁寧な対応をしたことで、総会の時点では住人からの反対意見はほとんどありませんでした。

将来的なメンテ費用の削減、修繕積立金の均等化を実現

OLYMPUS DIGITAL CAMERAでは、この機械式駐車場の一部撤去工事によって、どのくらいの削減効果が見込まれるのでしょうか。理事長の林さんによると、「工事費用が総額で約1,660万円。それに対して長期修繕計画を50期まで延伸した場合、機械式駐車場1台につき50年で約542万円の長期修繕積立金と年間約1万円の点検費用が削減できる見通しです。つまり、52台分で約3億円の削減効果が見込まれます」とのことです。

 

「そもそも駐車場収入は全額が管理費会計に組み込まれる仕組みになっていて、収入の85%を駐車場収入で賄っている状態。試算上、26台の解約があると管理費が不足する。駐車場収入は稼働率に左右されるためコントロールできず、常に変動リスクを伴っています。そこで、それらを見える化するために駐車場会計を独立させることを同時に考えたんです」と林さん。駐車場契約数の増減による管理費会計への影響を明確にするため、「駐車場・駐輪場会計」を分離・独立させました(※2)。

 

また、修繕積立金についても50年均等方式に改定。全額で10,000円~17,000円程度の増額となりましたが、これにより、現在の計画では追加徴収の心配はなくなりました。住人からは様々な声が寄せられています。「均等方式への変更、機械式駐車場の削減はできるだけ早く取り組んだ方がいいということを改めて感じた」「自分たちは高齢なので関心が低かったが、子どもたちが引き継ぐことを考えるきっかけになった。ありがとうございました」など、理事の皆さんの活躍により、住人がマンションの管理について真剣に考え始めるようになったことがうかがえます。「財務については、管理の質を落とさずに管理費に関わる費用を削減する方法などまだまだ課題もあるので、これからも積極的に取り組んでいきたい」と林さんは語ってくれました。

 

 

※1 マンションの売主によるアフターサービス期間が終了する前に不具合を把握し、保証を活用するために、2年目にインスペクションを実施している第三者機関に発注した。

※2 駐車場・駐輪場会計を分離・独立させたことで、管理費の収入が減るため、管理費は月額3,000円~4,000円/戸の値上げをした。

 

 

☆☆☆

次回は、入居開始からわずか3年で管理組合を法人化した理由についておうかがいします。

 

To Be Continued.

概要(取材年月:2018年07月)
  • 建物名:ザ・パークハウス横浜新子安ガーデン
  • 所在地:横浜市神奈川区
  • 階数 :地上10階・地下1階建て
  • 総戸数:497戸
  • 竣工年:2015(平成27)年築
  • 管理形態:全部委託
  • 管理会社:三菱地所コミュニティ(株)
  • 総会開催:毎年1月
  • 役員数 :18名(昨期まで15名)
  • 役員任期:2年(半数交代、最長4年、立候補者がいなければ輪番制)