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地権者が企画・設計から関わった 最強防災マンション!

マンションの防災では、ソフトとハードの両面からの対策が必要ですが、特にハード面での災害対策には時間もコストもかかるため、なかなか進まないのが現状ではないでしょうか。前回、さくらまつりで紹介した大崎ウエストシティタワーズは、マンションの企画段階から地権者が関わり、災害への備えについて考え抜かれた防災マンションです。今回は、防災の取り組みについて話を伺いました。

防災・防火

建設前から考えられていた災害への備え

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JR山手線「大崎」駅の新西口からペデストリアンデッキを歩いていくと、ガラス張りのツインタワーが見えてきます。総戸数1,084戸、地上39階の大規模マンション「大崎ウエストシティタワーズ」です。

前回もご紹介したように、このマンションは大崎駅周辺の再開発に伴って、240名ほどの地権者がマンションの企画段階から深く関わってきたマンションです。地権者の中には建設関係者や医療関係者、その他それぞれの分野に詳しい人が数名いたため、マンションの設計に様々な知見を集めて臨みました。

一般的にマンションでは、建物ができてしまってからハードを変更することは、費用も手間もかかり、管理組合の承認も必要になってくるためなかなか難しいもの。住み始めてみてから「これがあればよかったのに……」と思っても、変えることは至難の業です。

しかし、このマンションでは、後にマンションに住む地権者たちが企画から参加したので、それが可能になりました。地権者の皆さんは「安心・安全で住みやすく、ずっと住み続けたい」とみんなに思ってもらえるマンションを目指すことに。その中で特に力を入れたのが、防災でした。

震災前に建てられたマンションでも、防災への備えは最高レベル!

防災共助区域

例えば、このマンションは制震構造なので5階以上はある程度の揺れが予想されますが、給排水などは予め揺れても破損しない耐震性のものを備えています。また、地下には300トンもの受水槽があり、万が一の際の水不足にも対応できるようになっていて、1世帯当たり約3日分に相当する量の水を配ることができるのです。

1階エントランスの奥にはマンションのすべてを管理する防災センターがあり、マンション内の異常をいち早く察知し、対応するシステムが出来上がっています。センターでは受変電設備や衛生設備等の異常を知らせる中央監視盤、スプリンクラーや防火戸などを監視する防災監視盤、12基あるエレベーターの運転状況が一目でわかり、非常時には管制を実施するエレベーター監視盤が備えられ、専門のスタッフによって常時モニターされているのです。

そのほかに、地下に大きな防災倉庫があるほか、各フロアには「防災共助区域」と名付けられたエリアがあります。そこには非常用エレベーターと備蓄倉庫があり、災害時にそのフロアで必要な物資や備蓄品が備えられています。東日本大震災以降、防災を意識したマンションが多く建てられましたが、各階に備蓄倉庫がある高層マンションはあまり多くありません。大崎ウエストシティタワーズの建設が2009(平成21)年であることを考えると、その先見性に驚きを隠せません。

東日本大震災以降の取り組み

ハンドブック

もちろん、建設以後も管理組合を中心に防災機能が強化されてきました。管理組合の下部組織として防災委員会が設けられ、主にソフト面において様々なルールなどを整備してきたのです。

特に、東日本大震災の後に「地震災害用ハンドブック」には、目を見張るものがあります。2年間かけて作成したハンドブックは、全45ページと別表4枚からなるボリュームたっぷりの防災マニュアルです。

発災時の計画や対策フロー、緊急時の役割分担、マンション内の備えについてのリストなど基本的なことに加え、支援物資の配給や援助が本格化する発災から4日までを乗り切るための「72時間プログラム」など、オリジナルかつ詳細な内容になっています。

このマニュアルとともに、「居住者安否情報確認表」、「介添え必要者申請表」、「震災協力者プロファイル表」、「水・非常用食料引換券」が居住者に配られるのですが、「中身が伝わらなれば意味がない」との思いから、きちんと説明を受けてくれた居住者にだけ配ることにしています。

そのほか災害時に居住者から協力を得るために、あらかじめ「震災時協力プロファイル表」を全戸に配り、持っている資格や特殊技能、特技等を記入し提出してもらうよう要請をしています。現在、医師や看護師の免許を持った人や、力作業の得意な人など、70名近くの人のリストが集まっているそうで、「いざというときにみんなで助け合えるマンションにしたい」と居住者も思いを強めているようです。

また、これまで7時間分だった自家発電の設備を見直し、72時間の電源が賄えるよう、敷地の地下に2万リットルの重油を備蓄することを計画しています。これは、マンションでは類を見ない備蓄量で、危険物に関する法律とも照らし合わせ、品川消防署とも何度も相談をしながら今夏から設計に入る予定です。

「まだまだやり足りないことがたくさんある」と、地権者としてマンションの企画から関わった自治会長の鈴木さんは言います。「今年1年で防災倉庫の管理をする人をワンフロアに2人、募集して決めたい。それから、『高層マンション用の消防団をつくろう』をテーマに、災害時に指揮を執る常設の自衛消防組織をつくるため、今消防署と相談をしているところです」。このように鈴木さんは、これからの抱負を語ってくれました。

概要(取材年月:2016年06月)
  • 建物名:大崎ウエストシティタワーズ
  • 所在地:東京都品川区
  • 階数 :39階建て・2棟
  • 総戸数:1084戸
  • 竣工年:2009(平成21)年築
  • 管理形態:委託管理
  • 管理会社:住友不動産建物サービス(株)
  • 総会開催:6月
  • 役員数 :22名
  • 役員任期:2年