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消火訓練

“できることからはじめよう” 、主婦のパワーで自助・共助を謳う防災会

マンションに暮らす人々は災害が起きたときにどこへ行けばいいのか? 東日本大震災では、マンションからの避難者が想定以上の人数になったため、避難所不足という事態が実際に起こりました。災害時にマンションにとどまって避難生活を送るために、自助・共助の啓蒙から始めた手作り感覚のマンション防災組織をご紹介します。

防災・防火

「避難所に行けばいい」は間違い?

水消火器

ルネ吉祥寺が防災会を立ち上げたのは2013(平成25)年、武蔵野市の地域防災計画の修正がきっかけでした。全体の約7割が集合住宅に住むという武蔵野市。災害時に全住民が避難所に押し寄せると避難所が足りなくなる恐れがあることから、耐震性のあるマンションに住む市民はできるだけ避難所へ行かず、自宅で避難生活を続ける「自助」を推進したのです。

当時のルネ吉祥寺の管理組合理事は、これを受けて管理組合の下部組織として「ルネ吉祥寺防災会」を設立。すでにあったコミュニティ委員会のメンバーを中心に賛同者を募り、10数名から始まった防災会は、現在34名になっています。その内訳は、男性が4人、残りの30人が女性で、年齢は60歳以上がほとんどの「主婦」主体のメンバー構成となっています。

世帯数155戸、14階建てのルネ吉祥寺。ワンフロアに13戸の部屋があるため、各階におよそ2名以上メンバーが配置されていることになります。力仕事は難しいものの、比較的家にいることが多いメンバー構成のため、有事の際の機動力が期待できます。防災備蓄品の見直し、年2、3回配る「防災だより」づくりや防災マニュアルの作成など自助に対する居住者への啓蒙活動、避難訓練の実施が主な防災会の活動内容です。

「私は何か起こったら避難所へ行けばいい、と当然のように思っていました。しかし、避難所は遠いし足りなくなる可能性もある。マンションでの避難体制が整っていれば、かえってそちらのほうが快適な避難生活が送れるかもしれないと思ったんです」と、防災担当理事は言います。

最近では、各世帯にアンケート用紙を配り、防災会の日々の活動には参加できないが、有事の際に力仕事や怪我等の対処に尽力してくれる男性、医療関係の知識がある居住者をリストアップし、共助の輪を広げつつあります。

予算がない中で始めた手作りの活動

手作りの防災箱

一方で、ルネ吉祥寺は東京都が制定した「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」の対象にあたり、耐震診断実施が義務化され、耐震改修実施も努力義務となっています。耐震診断・改修の費用は都から一部助成を受けられるものの、理事会は現在、耐震化に手間も予算も取らざるを得ない状況であるなか、防災会は備蓄品の補充などを工夫する必要がありました。

今できることからやってみようと、まず着手したのは、各階に置く簡単な備蓄品でした。自助を標榜する防災会では、水や食料などの備蓄は各世帯で3日分以上を用意することをお願いした上で、フロア内の連絡用ボードなどの備蓄品を各階に置くことを検討。入れ物は市から支給されたクラッカーの空き缶、中身は100円ショップで買うなどして、予算を極力抑えました。

もうすぐ出来上がる予定のマニュアルは、全戸に配布する居住者用、細かい指示が入った運営委員用、本部用の3種を用意しました。中でも特徴的なのが本部用のマニュアルで、全体的に大きな文字で各指示に番号をふり、見やすくしてあります。実際に本部を立ち上げる際に細かい指示を確認している余裕はないだろうとの判断から、短い言葉でわかりやすく指示をまとめ、用紙を1枚ずつラミネート加工してあるので、これを本部の壁に貼って順番に従い指示通りに行動すれば、だれでも本部が設営できるように工夫されています。ルネ吉祥寺は、国土交通省の補助事業「平成26年度 マンション管理適正化・再生推進事業」に指定されていることもあり、マニュアルの作成については、一般社団法人マンションライフ継続支援協会(MALCA)のサポートを受けました。

また、その他のマニュアルも冊子形式ではなく差し込み式にして、いつでも改善できるようにしているとのこと。マンション内の災害弱者リストは、主婦のクチコミ力で独自に作成しているそうです。「いつも冗談を言い合いながら楽しく活動しています。防災会を始めてから色々な人が声をかけてくれるようになった。もっとマンション内に知り合いの輪をつくっていくことで、みんなで助け合っていけるマンションにしたい」と防災担当理事は話してくれました。

概要(取材年月:2015年02月)
  • 建物名:ルネ吉祥寺
  • 所在地:東京都武蔵野市
  • 階数 :14階建て・1棟
  • 総戸数:155戸
  • 竣工年:1978(昭和53)年
  • 管理形態:委託管理
  • 管理会社:日本住宅管理(株)
  • 総会開催:毎年5月
  • 役員数 :12名
  • 役員任期:1年