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江ノ島鑑賞会

高齢者や障害者に優しい住まいを目指して、住民有志がサポートクラブ立ち上げ

神奈川・海老名市にある「海老名みずほハイツ」は1978(昭和53)年竣工で、周辺でも先輩格の団地です。築30年を超えると、居住者の高齢化が進み、若いころは苦にならなかった階段の昇降がつらくなったり、子どもがいないなら夏祭りをやめようという意見が出たりと、建物の老朽化とともに「2つの老い」の問題がクローズアップされるようになりました。現在の高齢化率は、43%にも及んでいます。一方、分譲時から住み続ける世帯は約半数で、その6割が「終の棲家」となることを希望しています。ハード面はともかく、居住者の高齢化にソフト面で対応することはできないか――そう考えた住民有志が「みずほサポートクラブ」を立ち上げました。

シニアライフ

管理組合や自治会から独立したサポート組織

喫茶すまいる

海老名みずほハイツでは2年任期で毎年半数交代の役員からなる管理組合と、1年任期の役員からなる自治会で建物の維持管理、コミュニティ活動をそれぞれ担っています。

建物は5階建て階段室型構造でエレベーターや手すりがありません。階段の昇降に難儀を感じ、転居する世帯も出てきました。このままでは高齢者が安心して生涯を送ることがどんどん難しくなっていってしまいます。

しかし、1~2年でメンバーが代わる管理組合や自治会に福祉的な役割を期待することはできません。

そこで住民有志が立ち上がり、2012(平成24)年6月、高齢者や障害者をサポートする独立組織として「みずほサポートクラブ」を発足。海老名市社会福祉協議会のアドバイスを受けながら支援活動をはじめました。

主な活動は、団地高齢者等を対象に日常生活面のサポートとして、生ごみや資源ごみの集積所までの搬送、買い物・散歩への同行、病院等への送り迎え、電球等の取替え、家具等の移動、公共サービスの手続きなどのお手伝いです。

支援への代償、単価は「S」=スマイル

 

h430_lみずほサポートクラブは設立3年目を迎え、正会員12人、賛助会員47人、サポート隊(特別会員)15人で活動しています。正会員はサポートを受ける側の人ですが、会員でなくとも団地居住者はサポートを受けることは可能です。

賛助会員は金銭面のサポートとして1口1,000円(一番多い人で10口)で加入してもらい、2014(平成26)年度は11万円の予算を立てています。

この活動は団地内での助け合いです。賛助会員も、そしてサポート隊員も将来的にはサポートを受ける立場になる可能性があります。実際に手を使わない人も、賛助会員として金銭的な協力ができるようにし、クラブの存在意義やその活動を理解してもらっています。

賛助会員収入の他、自治会や海老名市社会福祉協議会からの助成金が活動費の年間予算となります。

支出としては、広報関係の用紙代、コピー代、喫茶代、通信郵送費、修理道具の購入費、観賞会の高速道路代などにあてています。また、「高齢者の転倒予防」や「歯の健康づくり」、「快適睡眠環境と健康」などをテーマに講演会を開き、講師への謝礼も計上されます。

サポート隊(特別会員)はサポートクラブの役員を含む肉体労働で支援する人たち。もちろん大半が賛助会費も納入しているので支援者は約60人となっています。

役員は現在9人で、管理組合理事長や理事、自治会長の経験者が選出されています。

高齢者等からの受託事業の活動実績は表のとおりです。

活動には表のとおり、支援を受ける人が「S」=スマイルを払い、このうち半分がサポートクラブ、半分が実際に支援した人(サポート隊)の取り分になります。

活動はこのほか、「喫茶すまいる」が月1回開店します。約30人が集まり、持ち寄ったお菓子を食べたり、コーヒーを飲みながらおしゃべりに耽ります。いつも来ている人が来ない、元気がないなど、会話の中から自然と、参加者の安否確認につながっていきます。

年に6回、外出支援として、役員の自家用車で遠出する会も行っています。これまで「山のホテルへのつつじ鑑賞会」「御殿場線大井駅のひょうたん鑑賞会」「埼玉・巾着田へ曼珠沙華鑑賞会」「江の島イルミネーション鑑賞会」などへ小旅行に出かけています。こうした小旅行への支払いにも「S」=スマイルが適用されます。

ただ、気になる点があります。受託事業項目の中で、会員宅内部で行う電球等の取り替えや家具の移動などの作業についての依頼がないことです。理由としては、近所に住むサポート隊に家庭内を見られたくない、動けない家族の弱みを見られたくないことなどがあげられます。表に出てこない潜在ニーズがあるのではないか――これをどう考えていくかが今後の課題だとしています。

設立発起人代表の話

昇降機の説明

エレベーター1基1,000万円として25階段に設置すると単純に2億5,000万円かかります。管理組合がこんな費用を支出できるわけがありません。

しかし、どうにかしていかなければ高齢者等に優しい団地を目指せません。2012(平成24)年度には手すりの設置を管理組合に要望し、2014(平成26)年度に実現しました。2014(平成26)年からみずほサポートクラブの役員を中心に、新たに「住みよいみずほハイツへの勉強会」を定期的に開催し、階段昇降機の設置を管理組合に要望したほか、高齢者の見守り方法、居住者名簿の策定などについて一緒に考えることをはじめました。

みずほサポートクラブでは自主防災訓練やお祭りに役員を出したり、自治会や管理組合の事業にも積極的に関与したり、団地の事情をわかっている役員が積極的に関わっています。

また、将来のNPO法人化を見据え、団地居住者だけでなく地域の高齢者も対象とするよう、みずほサポートクラブの定款を変更しました。地域の高齢者等が住みよい町になるよう、助け合いの輪を広げていきたいとのことでした。

概要(取材年月:2014年12月)
  • 建物名:海老名みずほハイツ住宅
  • 所在地:神奈川県海老名市
  • 階数 :5階建て・7棟
  • 総戸数:240戸
  • 竣工年:1978(昭和53)年
  • 管理形態:自主管理
  • 管理会社: -
  • 総会開催: -
  • 役員数 :理事10名、監事2名
  • 役員任期:2年(1年ごとに半数改選)