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★図1

管理会社が奮闘!組合員間をつなぐ3つのアイデアで修繕積立金の見直しを実現【前編】

築13年ではじめての大規模修繕工事の時期を迎え、修繕積立金の大幅な不足が浮き彫りに。工事の一部を先送りにしても、この先も満足な修繕工事は見込めず、管理・運営への組合員の関心もほとんどみられない──。そんな問題を抱えたマンション管理を担当したのが、日本ハウズイング(株)関西事業部大阪北支店の坂本賢政さん(現・住宅営業部管理課チーフマネージャー)です。管理・運営への組合員参加を促しながら修繕積立金の引き上げに向け、奮闘が始まりました。

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好立地マンションの隠れた問題とは?

1615113_m坂本さんが担当したのは、大阪都心・梅田へ電車で10分強、大阪メトロ御堂筋線江坂駅の最寄りに建つ地上10階建て総戸数40戸のマンション。2016年7月の社内異動で、北摂エリアを担当する大阪北支店に着任したと同時に、このマンションの担当者として管理業務を引き継ぐことになりました。

 

子育て世代を中心とするファミリー世代30世帯と、定年を迎えたシニア夫婦世代10世帯が居住する築13年(当時)のマンションで、ちょうど第1回目の大規模修繕時期を迎えていました。実際、「大規模修繕工事に向けて工事仕様や予算を決定し、管理組合定期総会の決議を待つのみの状況」だったといいます。

 

管理組合役員は任期1年4名(理事長、副理事長、会計、監事各1名)で構成。毎年3月に定期総会を行うことになっており、大規模修繕計画に関しても2017年3月の総会で審議しました。ただし、出席は役員4名のみ。委任状も未提出者多数の状態だったといい、大事な議案であるにもかかわらず、組合員の関心は高くはありませんでした。そのうえこのマンションでは、肝心の修繕積立金が不足しているという大問題も抱えていたのです。

 

最初の大規模修繕工事で修繕積立金の不足が発覚

坂本さん①坂本さんはこう振り返ります。「第1回目の大規模修繕計画は工事の仕様や予算などが決まっていましたが、工事実施が計画より1年遅れの状態で、しかも修繕積立金内で収まるように施工範囲を縮小していました。本来なら2016年内には行っていなければならない大規模修繕工事ですが、資金不足で全体工事に着手できなかったのです」。竣工後10年目で屋上防水工事を実施していますが、その時点で修繕積立金が不足することが分かっていたため、「先に屋上防水を行い、2年後に改めて大規模修繕工事を」という話になっていたといいます。

 

しかし、その2年が経っても修繕積立金不足の状況を脱しきれず、外壁と階段・廊下の改修だけという部分工事で済ませようとしていました。先の総会で可決したのは、この“部分工事”の実施に関しての決議で、坂本さんの話す「修繕積立金内で収まるような施工範囲の縮小」のことです。

 

ではなぜ修繕積立金が不足する事態になってしまったのでしょうか。坂本さんは、まず「販売時の長期修繕計画が根本的に甘かった」としたうえで、このマンション固有の問題もあるとして次の点をあげています。

 

修繕積立金が不足する、マンション固有の問題

「この規模のマンションなら通常1基のエレベーター設置で済むところですが、こちらでは2基設置されており、その分メンテナンス費や改修工事費も倍かかる」と坂本さん。さらに、「平面・機械式駐車場のうち20数区画分が販売時の分譲駐車場で、1区画当たり月500円程度の維持管理費の徴収はあるのですが、管理組合にとって貴重な収入源になるはずの月額駐車場の使用料がない。江坂駅周辺の駐車場相場は1台当たり月3万~4万円ですが、それが戸数分見込めないし、機械式駐車場のメンテナンス費用もかかってきてしまいます」。構造的に慢性的な資金不足を招く問題が横たわっていたわけです。

 

坂本さんは、担当を引き継ぐ際に、過去の総会議事録や長期修繕計画書に目を通しており、総会の出席者は毎年役員だけという状況や、修繕積立金が絶対的に足りない事実を把握していて、「これらの問題を何とかしなければ」と考えていたそうです。

 

そこでまず行ったのが、向こう30年間を見通した長期修繕計画による資金シミュレーションです。現行のままでは、2028年に行わなければならない次回の大規模修繕工事で修繕積立金が不足することは目に見えています。第2回工事も含め、エレベーターの更新など各種設備全般で必要な工事すべてを盛り込んだ30年間の修繕計画を練り直したところ、修繕積立金不足を解消するには、「毎月の積立額を現行の2.8倍まで引き上げる必要がある」ことが判明。これらは管理規約の見直しを伴う特別多数決議(区分所有者総数および議決権総数の各4分の3以上の賛成で決する)事項になるため(※)、臨時総会を招集・開催し、修繕積立金の改定(値上げ)を議案上程しましたが、「出席者は理事のみで、委任状も含め22名ほどしか参加がなく、定数不足で否決」されます。坂本さんが担当になった半年後、2017年4月のことでした。

 

総会参加率を上げるための3つのアイデア

ここで「総会への出席者不足」という課題も明らかになります。それは自分たちが居住するマンションへの組合員の関心の低さの現れだといえるでしょう。マンションの管理・運営に組合員意識が及ばないと、早晩マンションそのものの資産価値低下を招く恐れが高まります。坂本さんは「まずは特に若い世帯の組合員にマンションの管理・運営に興味を持ってもらい、総会への参加率を上げること。最終的には、修繕積立金改定の必要性を理解してもらい、合意を得ること」を目的として独自の対策を講じます。

 

それが、①「子ども向け工事体験会」の実施②「世代を越えた花火祭り」の開催③総会開催に向けての「特別招待状」の作成とお届け――の3つのアイデアで、どれも居住マンションの資産価値維持と大規模修繕工事に対する組合員の理解と関心を高めるための工夫です。

 

(※)総会の議事については、管理規約で出席組合数の過半数(普通決議)で決する議事と、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上(特別多数決議)で決する議事とが定められています。

 

☆☆☆

組合員にマンションの管理・運営に興味をもってもらうための3つのアイデアについては、後編でご紹介します。

 

概要(取材年月:2020年09月)
  • 建物名:─
  • 所在地:大阪府吹田市
  • 階数 :10階建て
  • 総戸数:40戸
  • 竣工年:2003(平成15)年
  • 管理形態:全部委託
  • 管理会社:日本ハウズイング(株)
  • 総会開催:3月
  • 役員数 :4名
  • 役員任期:1年