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管理組合の問題点を改革! 理事会の活性化を目指し、法人化へ

管理組合の運営には、苦労がつきもの。特に理事長の負担は大きく、毎年理事長のなり手がいないと嘆く理事会も少なくありません。管理組合の問題点に切り込んで、立ち上げ1期目から様々な改革に取り組み、ついには管理組合を法人化したケースをご紹介します(前回は秋祭りについてお伝えしました)。

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入居前からSNSで情報を交換して、理事長に立候補

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隅田川に面して大規模マンションが立ち並ぶ、千住エリア。「イニシア千住曙町」は、7年前に竣工、総戸数515戸のリバービューが壮観なマンションです。現在8期目と、管理組合が発足してそれほど間がないにもかかわらず、様々な改革を行い、多くのメディアに取り上げられてきたマンションでもあります。

第1期と2期の理事長を務め、現在も副理事長として管理組合の運営に関わり続けている横山さん(仮名)は、入居前からSNSを通じてマンション入居者のコミュニティをつくっていたそうです。

「入居の2年前に、イニシア千住曙町入居者専用のSNSを自分で立ち上げました。そこで情報交換をしているうちに、何となく意識の高い人たちが集まっていったんです」と語る横山さん。管理組合発足と同時に、理事に立候補する人が9人、全員SNSの参加者だったそうです。

設立総会で第1期の理事長に立候補した横山さんですが、職に就いて初めて理事長の責任の重さに驚いたといいます。「管理会社や売主からなど、あらゆる案件がすべて理事長のもとに回ってくるんです。理事会には20人も役員がいるはずなのに、理事長だけが年に4~500回も押印して、メールのやり取りだけでも3000通はあった。それに、私たちのマンションは管理費・修繕積立金・駐車場使用料などで年間収入が約2.6億円あるのですが、そんな大きな責任を理事長一人で背負うのかと思うと、今後理事長になる人は大変だ、と考えたのです」。

「理事会の継続性」を目指して、1期目から改革を断行!

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理事長の責任の重さとともに、横山さんが問題視したのが理事会活動の継続性でした。イニシア千住曙町の管理規約では、理事は立候補者を優先とする輪番制、任期は1年でした。

「理事会の進め方を学んでもらうだけでも3カ月はかかり、半年くらいしか実質的な活動ができない。複数年にまたがった事案の処理も難しい」。このままでは理事会活動の継続性が確保できない、と考えた横山さん。第1期から理事会内に委員会制度を立ち上げたり、第2期では役員の選出や委員会設置の細則を策定したりと、何とか理事会を活性化させようと、数々の手を尽くしてきました。

特筆すべきは、管理組合を法人化したことです。「役員全員が責任を持って理事会運営に関与し、理事長の負担の分散を図るにはどうすればいいか、を第一に考えました」と言う横山さん。マンションにかかわる法律や管理規約などについて詳しく調べた結果、管理組合を法人化することがその解決策だと考えたのです。早速5期の理事会で法人化を総会に提案。その期の役員の半数が自ら立候補して6期に居残る形で、管理組合法人へと移行をしました。

実際に管理組合の法人化をした事例では、不動産登記を行う目的、竣工時期が異なるなど複数の組合と全体組合の関係を整理する目的がほとんどで、特に理事会の内部統制(ガバナンス)の改善を主目的として法人化した事例はほとんどありません。また、規約の改定で対応することも不可能ではないかもしれませんが、それだけではそこに法的な裏付けがないこと、さらに規約で対応したものはまた規約で変更ができるということでもあり、より将来にわたって拘束力の強い「法人化」へと踏み切ったのです。

管理組合の法人化で、みんなが参加しやすい理事会に!

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法人化にあたって変えたことは、以下の通りです。

1. 理事長個人が“管理者”とする規定をなくし、監事の権限を強化する

2. 副理事長の数を3名に固定。理事長とあわせて4名を法人の代表理事とすることで副理事長の権限を強化する

※副理事長の役割は以下の通りで、各々が限られた範囲内で最終的な決裁権限を持つ

 A:ソフト……細則などの共用部分の決まり事や共用部分の備品調達など

 B:ハード……マンションの建物全般

 C:渉外………防災や自治会との連携

3. 規約・細則の中で保存行為(現状を維持すること)に関して、これまで理事長のみに集中していた権限を法人または代表理事に書き換え

4. 任期2年、半数改選へと制度を移行

これによって、理事長は月例の理事会の資料を作成したり、個人レベルのクレームを処理したりする必要がなくなりました。理事会に持ち込む資料は、各専門委員会からの議決要求等を3人の副理事長が中心となってまとめて提案する形にしたため、理事長は月例理事会では議長役に専念し、マンションにとって真に重要な案件にのみ集中できるようになったのです。

また、共用施設委員会、営繕委員会、防災・防犯委員会の3つの委員会を設置。3人いる副理事長は全員いずれかの委員会を責任を持って総括し、さらにそれぞれの委員会に参加する理事の数を2名以上確保して、1年目の理事を2年目の経験豊富な理事がサポートするようにしています。そうすることで、全ての委員会で初回から活発な議論が展開できるのです。

「1年目で仕事を覚えた理事が、次の年委員会で先生役を務めるような“人でたすきをつないでいく”仕組みを確立したい」と横山さんは言います。20名の理事全員がそれぞれ役割を持つ理事会。理事たちがいきいきと活躍できる場となっています。

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イニシア千住曙町管理組合法人の公式ホームページはこちら!

http://www.isa515.com/

概要(取材年月:2016年08月)
  • 建物名:イニシア千住曙町
  • 所在地:東京都足立区
  • 階数 :24階建て・5棟
  • 総戸数:515戸
  • 竣工年:2009(平成21)年築
  • 管理形態:委託管理
  • 管理会社:大和ライフネクスト(株)
  • 総会開催:4月
  • 役員数 :20名、監事3名
  • 役員任期:2年(半数改選、再任は妨げない)