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都心の集合住宅から始まる「つながる庭プロジェクト」

世田谷の公営団地を思わせる、築40年になる集合住宅を拠点に、「たぬき村」と名づけられたコミュニティーガーデンが生まれています。そこで都市にコミュニティーガーデンをつくろうと集まったグループ“まくびと”が始めた取組み内容を紹介します。

その他

日本独自のコミュニティーガーデン、地域とのつながりを重視

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日本でも、コミュニティーガーデンと称して、行政主導による花を植える市民活動が各地でみられますが、日本らしい持続可能なコミュニティーガーデンとはどんなものでしょうか?イギリスやアメリカでみられるコミュニティーガーデンとはその発生の仕方や環境が異なるので、流行として外見だけ真似たのでは続かないでしょう。将来、継続的に発展・定着していける道はあるのでしょうか?

今回取り上げる「たぬき村」は、パーマカルチャー※の理念をもとに、都市にコミュニティーガーデンをつくろうと集まったグループ“まくびと”が始めた取り組み、「つながる庭プロジェクト」の実践の場のひとつです。提案者のひとりが自身の造園事務所をこの団地に構え、建物の周囲のスペースに少しずつ手をいれ、近隣住民が活動できる場としての下地づくりをはじめました。

都市部の住宅が密集しているような地域に住む人々にとって、やはり庭いじりができる場所は貴重です。そうした人たちが、コミュニティーガーデンをきっかけに集まり、さまざまなジャンルのワークショップなど企画も新たに生まれています。午前から作業を始めて、昼の食事の時間も、何か食材を持ち寄ってみんなで何かを作り、一緒に食べる時間ができることで、園芸作業だけの結びつきではなく、参加のきっかけも増え、さまざまなコミュニケーションができます。そうこうしているうちに、近所の住人も関心を持ち、自宅の庭に植えてある樹木を寄付してくれたり、参加するようになったり。都市部では核家族化が進み、ご近所との付き合いが希薄になっていましたが、4年前の東日本大震災によって日常生活がままならない状況を経験したことで、地域とのつながりの大切さを再認識している人は多いのかもしれません。

自宅の庭を提供して無理なく景観整備

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とはいえ、ガーデンとして心地よい形にするには、場所・人・時間が限られています。しかし昨年は、隣地の家主さんが自宅の庭をこのコミュニティーガーデンの場として提供してくれることになりました。ご自身で世話することが体力的に負担になってきたため、地域のために提供することで、うまく活用されると同時に、自身の管理の負担が減ります。この活動のなかで井戸掘りをしたり、園路をつくったりして景観的な整備が続けられています。

今年は、この庭で活動する年間プログラムを具体的に組むことで、参加のきっかけづくりを与え、関心が高まるよう計画中です。それでも完成形はまだ先で、この地に最も合ったスタイルで、なるべく無理なく続けられる形を見出そうとしています。

東京と地域を結んでギブ&テイク

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さらに大きな問題は活動資金です。活動を継続していくうえで経費のことを除いては、思うようにこのプロジェクトも進みません。そんな中で明るい話があります。都内に残る樹林地の緑を保全することを目的に、セブン-イレブン記念財団と東京都が市民活動の支援をしています。これに助成の申請をして、活動資金の一部とする予定です。

しかしそれだけで解決できる問題とは考えていません。こうしたコミュニティーガーデンでの活動は‘ナリワイ’とならなければ、活動を進める人、参加する人のモチベーションは続かないと考えます。つまり生活を営むための仕事、暮らし全般につながっていることです。例えば都内の狭小地では野菜づくりをしたとしても、販売するにはたかが知れています。そこで、土地土地のメリット・デメリットを活用し、補完していけるように、都市部だけでなく、地方にも目を向けています。

現在、計画進行中なのは、神奈川県の藤野町。耕作放棄地、農村資源の活用をしています。また、この町に移住してきたアーティストの制作活動・作品を広く知ってもらうには、人が多く集まる東京で行った方が、発信力は高いといえます。離れた地域がつながりを持ち、ギブアンドテイクによってそれぞれのよいところを知ってもらって活用できるからです。

ソフトもハードもシェアして持続可能なコミュニティーガーデンへ

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目標は、都市にナリワイをともなうコミュニティーガーデンを何カ所もつくること。またその場を通してパーマカルチャーの倫理のひとつである「余剰物のシェア」を実現します。つまり、苗や資材あるいはソフトな部分では、アイデアもシェアすることが可能です。定型化したハードの部分をどこも同じにつくるのではなく、その土地とそこに住む人のキャラクターを反映させた個性あるコミュニティーガーデンをつくり、それぞれがつながること、共有することで、地域や社会の問題解決、既存の消費社会に代わる持続可能な暮らしへのシフトにつながるのではないかと考えています。要はこの構想はたぬき村だけでは完結するものではないようです。

まだこれから先、課題は多いが、それに向き合い、日本に合った持続可能な循環型の暮らしの一端となるコミュニティーガーデンの構築がなされることを期待しています。

※パーマカルチャー:永続的な農的暮らしのデザイン。「地球に配慮する」「人々に配慮する」「余剰物のシェア」をパーマカルチャーの倫理としている。

取材・執筆/一般社団法人 英国王立園芸協会日本支部 RHSJ編集部

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★今年の計画は・・・

【つくる】植栽計画、ピザ釜作り、畑作り、ハーブガーデン作り、エディブルフラワーガーデン作りetc.

【つかう】ハーブの活用、ブーケ・リース作り、草木染めetc.

【育ててたべる】芋掘り、よもぎ餅、さくら餅、柚子胡椒、梅シソシロップ、たんぽぽコーヒー、マシュマロetc.

★2015年は毎月第一第三火曜日にたぬき村にて開催予定!

「つながる庭のプロジェクト」のブログ⇒ http://tsunaniwa.exblog.jp/

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●一般社団法人 英国王立園芸協会日本支部(RHSJ)

1987年に設立された園芸愛好家のための協会。本部RHSは英国にあり、エリザベス女王が総裁を務める。本部会報誌「The Garden」と日本支部の会報誌「RHSJ」を通して、英国の最新園芸情報を日本に発信すると共に、各地で園芸に関するセミナーを開催するなど日本国内での園芸普及に務めている。また庭づくりや維持管理の事業も行っている。

詳しくはこちら⇒http://www.rhs-japan.org/

概要(取材年月: - )
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