- 連載
- 特集
- 2014.10.01掲載
●その1 | 第1 はじめに |
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第2 法律・ルールの全体像 | |
●その2 | 第3 区分所有法・マンション標準管理規約 |
1 区分所有法 | |
2 マンション標準管理規約 | |
●その3 | 第4 マンション管理適正化法 |
●その4 | 第5 建替え円滑化法 (平成26年6月改正の解説を含む) |
●その5 | 第6 被災マンション法 |
第7 耐震改修促進法 |
第5 建替え円滑化法(平成26年6月改正の解説を含む)
区分所有法には、特別の多数(区分所有者の頭数および議決権の各5分の4以上の多数)によって、建替えを決議できること(特別決議)が規定されています(区分所有法62条1項)。ただ、区分所有法に規定されているのは決議をするところまでであり、決議がなされた後の建替事業の事業主体や、実務を取り進めるためのルールの定めはなく、また賃借人や抵当権者の独自の権利主張を制約する仕組みも設けられていません(注*9)。
そこで、建替事業を円滑に進められるように、マンションの建替えの円滑化等に関する法律(建替え円滑化法)が制定されています(平成14年12月施行)。建替え円滑化法によって、都道府県知事の認可を得て、法人格をもつ建替組合を設立することができます(同法5条、6条、9条1項・2項、13条)。事業主体に法人格が付与されれば、信用力が付いて資金調達が容易になり、建築工事請負などの契約関係も明確になりますから、外部的な関係の法的な安定性を確保できます(注*10)。また、同法には建替組合の内部的な意思決定が詳細に規定され(同法29条、30条)、加えて区分所有権および賃借人や抵当権者などの利害関係者の権利を一括して変換し、関係者の利害を法的に調整する手続も定められ(同法70条~73条)(注*11)、事業の根幹を固めることが可能になります。
注*11 建替え円滑化法の適用があるのは、マンション(=2以上の区分所有者が存する建物で人の居住の用に供する専有部分のあるもの)である(同法2条1項1号)。
ところで、耐震性の不十分なマンションにおける対策としては、まずは耐震改修工事を行うことが考えられますが、住宅には一定の面積の開口部が必要であるなどの理由から、マンションの耐震改修の工事は容易ではありません。仮に改修を行っても、多くの場合に快適な生活環境が損なわれてしまいます。他方で、区分所有者が自ら建替えをするためには、通常多額の資金が必要なので、建替えも困難です。そのため、現在多くのマンションについて耐震性不足のまま放置される状況が生じています。
そこで平成26年6月、建替え円滑化法が改正され、耐震性不足の認定を受ければ、多数決によりマンションおよびその敷地を売却できる制度が創設されました(改正後の同法108条、建替え円滑化法によるマンション敷地売却制度)(注*12)(同年6月25日公布。同年12月24日施行)。同法に基づいて新たに建築されるマンションにおいて、特定行政庁の許可により容積率制限を緩和する仕組みも導入されています(改正後の同法105条)。
改正後の建替え円滑化法によるマンション・敷地売却制度は次のような制度です。
① 耐震性不足の認定を受けたマンションについては、区分所有者等の5分の4以上の賛成で、マンションおよびその敷地の売却を行う旨を決議できる(改正後の建替え円滑化法108条1項)。
② 決議に係るマンションを買い受けようとする者は、決議前にマンションに係る買受計画を作成し、都道府県知事等の認定を受ける。決議で定める買受人は、認定を受けた者でなければならない(同法108条3項、109条1項)。
③ 決議合意者は、決議合意者等の4分の3以上の同意で、都道府県知事等の認可を受けてマンションおよびその敷地の売却を行う組合を設立できる(同法120条1項・2項)。
④ この組合は、決議に反対した区分所有者に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すことを請求できる(同法124条)。
注*14 都道府県知事等の認可を受けた分配金取得計画で定める権利消滅期日に、マンションおよびその敷地利用権は組合に帰属し、マンションとその敷地利用権に係る借家権・担保権も消滅する(改正後の建替え円滑化法149条1項)。組合は、権利消滅期日までに決議に合意した区分所有者に分配金を支払うとともに、借家権者に対して補償金を支払う(同法151条、153条)。