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  • 2014.10.01掲載

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マンション管理の法律基礎知識

弁護士 渡辺 晋

◆第1 はじめに

マンション管理はさまざまな法律にかかわりがあります。そして、現在では情報を得るための手段が充実していますから、法律に関する情報の入手は容易です。ところが、いくつもの法律があって、かつ法律の情報が氾濫しているため、それぞれの法律の趣旨を理解したり、法律相互の関係を把握したりすることが、かえって難しくなっているように見受けられます。また、しばしばルールの変更や追加がなされるため、新しい情報を整理することも簡単ではありません。

そこで本稿では、日常的なマンション管理に直接かかわるものから、日々の管理に直接のかかわりはないけれども、マンションでの生活のために知っておくべきものまで、マンション管理の法律全般の基礎知識について、まとめて解説をすることにしました。マンション管理に関する法律の全体像と相互関係を鳥瞰したうえで、基本となる区分所有法とマンション標準管理規約がどのようなものであるかを再確認し、加えて、マンション管理適正化法、建替え円滑化法、被災マンション法、耐震改修促進法の概要を述べます。

◆第2 法律・ルールの全体像

私法の分野において人の法律関係は、一般的に民法によって規律されます。現行の民法が制定された明治29年(1896年)当時、木造の長屋という住居形式があったため、制定時から、民法には、「数人ニテ一棟ノ建物ヲ区分シ各其一部ヲ所有スルトキハ建物及ヒ其附属物ノ共用部分ハ其共有ニ属スルモノト推定ス」(旧法208条1項)、「共用部分ノ修繕費其他ノ負担ハ各自ノ所有部分ノ価格ニ応シテ之ヲ分ツ」(同条2項)という規定がありました。

ところが、建築技術の発展や人々の生活様式の変化などから、時代とともに、堅固建物の共同住宅という新たな住まいのスタイルが生まれます。そのために、古い民法の規定だけでは到底共同住宅のルールとしては十分ではなくなり、昭和30年代になって、共同住宅の新たな法制度が求められ、その結果、昭和37年に区分所有法が成立しました。 その後は、マンション管理に関する法律としてもっとも基本的な法律が、区分所有法となっています。

マンションは、規模、区分所有者の数、用途、住戸のタイプ、地域の特性など、多種多様です。そのため、一律に管理のルールを法律で決めてしまうことは適切ではありません。そこで区分所有法は、専有部分や規約・集会などの基本的な事項だけを法律で決め、それぞれのマンションの個別具体のルールを管理組合自らの手で定める、という考え方を採用しました。管理組合の定める自主的ルールが管理規約であり、管理規約を定めるにあたって参考となるように、国土交通省が作成しているモデルがマンション標準管理規約です。

現実のマンション管理においては、多くの場合、管理組合がマンション管理会社に管理業務を委託しています。マンション管理適正化法は、管理組合から委託を受けてマンション管理を実際に行うマンション管理会社を登録制として、その業務に関する規律を定めています。

また区分所有法には、建替えの規定がありますが、建替えの決議がなされた後の建替事業の取り進め方については定められていません。建替え決議がなされた後、どのようにして建替事業を進めていくのかを規定しているのが、建替え円滑化法です。

さらに、わが国は地震国であるため、近い将来に大地震を想定しておかなければならないことを考えると、マンション管理においても、地震に対する対策や、実際に地震などの被害を受けた場合の取扱いを法で定めておくことが必要です。耐震性能の十分ではないマンションについて、安心、安全を確保するために政策的に改修を促進する法律が耐震改修促進法、マンションが災害の被害を受けた場合の取扱いの特例を定めた法律が、被災マンション法です。 法律・ルールの全体像