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  • 2014.10.01掲載

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マンション管理の法律基礎知識

弁護士 渡辺 晋

第3 区分所有法・マンション標準管理規約

1 区分所有法

区分所有法は、マンションの基本ルールを定めるにあたり、最初に専有部分と共用部分の定めをおきました。構造上の独立性(壁・床・天井などによって構造上、ほかと区分されていること)、および用法上の独立性(独立して住居、店舗、事務所、倉庫などの用途に供することができる部分)のある部分が専有部分(注*1)、専有部分以外の部分が共用部分です(注*2)(同法1条、2条2項・3項、4条1項)。専有部分は、各区分所有者の所有(区分所有)、共用部分は共有となります(同法11条1項)。

注*1専有部分に所有権(区分所有権)を認めることは、区分所有法が民法上の一物一権主義(ひとつの物の上にはひとつの所有権しか成立しない)の例外を認めるという意味がある。
注*2専有部分となりうる区画が、規約によって共用部分(規約共用部分)と定められることもある。

そのうえで、共用部分の管理主体として、区分所有者が「全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体」が、当然に構成されるものと定めました(同法3条前段)。管理組合という用語は、通常、この団体を指します。

共用部分の管理については、集会が最高の意思決定機関です。日常の管理は規約に則って行われます(同法30条)が、規約を設定・変更するのも、集会の決議です(同法31条1項)。規約および集会の決議は、区分所有者の特定承継人に対しても、その効力を生じます(同法46条1項)。

規約には、専有部分の使用に関する事項も定められます(同法30条1項)。賃借人にも、専有部分や共用部分の使用方法につき、規約や集会の決議の遵守義務があります(同法46条2項)。
区分所有者は、建物の保存に有害な行為、その他建物の管理または使用に関し、区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはなりません(共同利益背反行為の禁止。同法6条1項)。区分所有者が、共同利益背反行為を行ったとき、あるいは行うおそれがあるときには、ほかの区分所有者全員で、行為の停止を求めることができます(同法57条1項)。行為の停止を求めても、共同生活上の障害を除去できないときは、使用を禁止することができます(同法58条1項)が、さらに障害が著しく、ほかに方法がないときは競売を請求し、共同利益背反行為者を排除することも可能です(同法59条1項)(注*3)。

注*3 区分所有法には、このほかに管理組合法人、建替え、復旧、団地等の規定もある。

2 マンション標準管理規約

区分所有法は、マンションにおける暮らしのルールについて、最小限の一般的な事項を定めるにとどまっています(同法30条~46条)。管理組合の組織についての定めもありません。区分所有者は、自ら管理規約を作成することによって、自主的にマンション内のルールを定め、理事長や理事会など、現実に管理を運営するための組織を形作る必要があります。

とはいっても、規約作成は法技術的な問題を含みますから、簡単な作業ではありません。かつての管理規約は、必要な定めがおかれていなかったり、論理的に矛盾する規定を含んでいたりするなど、内容が不十分ないし不完全なケースがみられ、マンションにおいて日常起こる諸問題に対処しきれない場合も、少なくありませんでした。

そこでマンションの規約作成にあたっての参考になるように準備されたのが、マンション標準管理規約です(注*4)。昭和57年5月に中高層共同住宅標準管理規約が作成されて、これを活用するよう通達が出されて以来、4回にわたって改正がなされ(注*5)、現在では多くのマンションで、マンション標準管理規約をモデルとした管理規約が設定されています。

注*4 マンション標準管理規約には、単棟型(建物が1棟で住居専用)、団地型(建物が数棟で住居専用)、複合用途型(上層階が住居、下層階が店舗・事務所に用いられているいわゆる下駄履きマンション)の3つのタイプのモデルが定められている。
注*5 当初は「中高層共同住宅標準管理規約」という名称であったが、平成16年1月の改正に際し、「マンション標準管理規約」という名称に変更になった。


区分所有法とマンション標準管理規約の主要な項目の比較
  区分所有法 マンション標準管理規約
専有部分と共用部分 1条、2条2項・3項、4条1項 構造上の独立性+用法上の独立性→専有部分
それ以外→共用部分
7条、8条 具体的に各部分を表示
区分所有者の団体 3条前段 当然に団体(管理組合)を構成する。
確認条項
6条1項 組合員全員で管理組合を
構成することを確認
管理組合の組織 - 定めはない
(定めがあるのは、管理組合法人の組織だけ)
35条~41条、51条~55条 役員・理事長・理事・監事、理事会、専門委員会など詳細に規定
管理者 25条~28条 選任・権限などを規定 38条2項 理事長を管理者とする
集会の定足数 - 定めはない 47条1項 議決権総数の半数以上
共用部分の変更・管理 17条1項、
18条1項、
39条1項
変更(形状・効用の著しい変更を伴わないものを除く)=区分所有者の頭数と議決権の各3/4
管理=区分所有者の頭数と議決権の各過半数
47条2項・3項 変更(形状・効用の著しい変更を伴わないものを除く)=区分所有法と同じ
管理=出席組合員の議決権の過半数
区分所有者の権利義務 6条、57条~59条 共同利益背反行為の禁止
義務違反者に対する措置(行為停止、使用禁止、競売請求)
12条~19条、66条 用途用法などの定めがある。義務違反者に対する措置は区分所有法と同じ
管理組合法人 47条~56条の7 成立・組織等の定めがある - 定めはない
復旧・建替え 61条~64条 復旧には大規模復旧(建物の価格の1/2超が滅失)と
小規模復旧(建物の価格の1/2以下が滅失)がある
- 定めはない