住民の団結力で打ち上げる、 2,300発の華麗な花火
7月25日(土)、横浜市旭区にある若葉台団地で、毎年恒例の夏まつりがおこなわれました。年間を通じて数多くのイベントを開催している若葉台団地ですが、なかでも今年で35回目を迎えるこの夏まつりは、毎年3万人以上の参加者でにぎわう団地最大規模のイベントとして、地域周辺にも知られています。いちばんの見どころは夜空を華やかに彩る2,300発もの打ち上げ花火で、なんとこの花火の費用は、ほぼ居住者からの募金によってまかなわれているのです。今回は、若葉台団地の居住者が見事な団結力で運営する、夏まつりの様子をご紹介します(前回は子育て広場そらまめについてお伝えしました)。
花火の打ち上げ資金は、住民からの募金!
夜8時。夏まつり参加者によるカウントダウンで、花火の打ち上げが始まりました。団地内の広場も歩道橋の上も団地内外の参加者であふれかえり、色とりどりの花火が打ち上がるたびに、あちこちから大きな歓声があがります。
花火の打ち上げ場所は、まつりのメイン会場となる若葉台公園グラウンドのすぐ横にある遊水地。会場から至近距離で花火を楽しめるのが、このまつりの最大の魅力となっています。
「間近で打ち上がる花火の迫力と数の多さに圧倒されます。住んでいる団地でこんな豪華な花火が見られるのは本当にうれしいです」「団地でこの規模の花火大会ができるところはなかなかないのでは。年々スケールアップした花火が見られるので、毎年来るのが楽しみです」と参加者も声をはずませます。
今年打ち上げられた花火の総数は、なんと2,300発。通常の花火大会にも引けを取らない打ち上げ数です。この花火の打ち上げ資金は、おもに居住者による募金と商店街から集められた協賛金とでまかなわれています。花火募金は4年ほど前から導入されたシステムで、毎年6~7月にかけて団地内の各住戸に専用の封筒が配られ、住民が任意で金額を入れて各自治会に預けるという形で集められています。今年からは団地内の商店街、ショッピングタウンわかばの各店頭でも募金が行われ、総計210万円ほどの額が集まったそうです。
やぐらから模擬店まで、すべてが手づくり
まつり当日は、午前中から団地内でさまざまなイベントが実施されていました。午前中は各自治会から出される子どもみこしをはじめスイカ割り大会など、子ども向けのイベントが中心。会場となったショッピングタウンわかば付近では、元気いっぱいな子どもたちの姿が見られました。
午後3時30分からは、若葉台公園グラウンドで団地内にある10の自治会とNPO法人若葉台スポーツ・文化クラブなどの団体による模擬店がオープン。生ビールに焼きそば、わたあめなどの食べ物やおもちゃ類が各店の軒先に並ぶと、来場者の数もしだいに増え始めます。グラウンド中央のやぐら前では、保育園児や学童、中高生のパフォーマンスをはじめ、創作和太鼓集団「打鼓音」の力強い和太鼓演奏が次々と披露され、盆踊りが始まると、会場はさらに熱気に包まれていきました。
模擬店はじめ、盆踊りに使われるやぐら、子ども用みこし、会場に掲げられる大看板など、まつりに使われるものはほぼ居住者の手作りによるもの。基本的に「まつりは手づくりで行う」というのが若葉台団地の方針です。模擬店に参加していた団地在住歴34年の主婦は、「若葉台に住む人間にとっては“自分たちのおまつりだから手づくりなのはあたりまえ”という感覚。毎年準備は大変ですけど、やりがいがあるので楽しいですよ」と話してくれました。
なお、まつり前日にはショッピングタウンわかばで夏まつりの前夜祭が行われ、ビアガーデンや子ども向けのステージショーなどで、会場は大いに盛り上がっていました。
団地一丸となって取り組む、まつりの準備
夏まつりの準備は5月下旬から始まります。まずは、若葉台連合自治会の役員経験者で結成された「若葉台まつりの会」のメンバーを中心に、若葉台夏まつり実行委員会が立ち上げられます。ここで企画委員会はじめ、警備、広報、花火など全部で15の部局が組織され、団地内の自治会役員や若葉台まちづくりセンターの職員のなかから、各部局に担当者が集められます。
夏まつりの準備に携わるのは、総勢270名ものスタッフ。このほかに住民も加わって、当日までの2カ月間で集中して準備を進めていきます。「夏まつりは長年続いている若葉台団地の一大イベントなので、ノウハウを蓄積した計画書もありますし、みんな手際よく準備してくれます」と話すのは若葉台まつりの会会長。若葉台まちづくりセンターの職員も「毎年5月になると、団地内では自然と夏まつりの準備体制ができあがっています。花火募金にも住民のみなさんは協力的ですし、自分たちで夏まつりを盛り上げていこう、という意気込みは本当にすごいですね」と話します。
まつり当日までの間には部会メンバー全員で2回集まり、必要に応じて各部会で数回打ち合わせを行い、現場には、細かい部分まで徹底して指示を出すそうです。
団地外から若葉台スポーツ文化クラブの模擬店に参加していた男性は「模擬店で食品を扱うにしても衛生面での指導は厳しいですし、指示も一つひとつが的確。若葉台団地は自治会の団結力が驚くほど強いので、これだけの大規模なおまつりでも、トラブルなく運営できるのだと思います」と、運営面での手際のよさに感心していました。
ちなみに、花火以外でまつりに必要な費用は、各自治会に戸数を割り当て、その戸数に応じて分担金を居住者から集めているとのことです。
若葉台団地はみんなのふるさと
現在、夏まつりは若葉台団地全体での開催となりましたが、団地ができた当初は各自治会で夏や秋にまつりを開いていました。団地の開発が進み、入居者も増えてきたところで「住民全員が参加できるまつりをやろう」という声が上がり、若葉台連合自治会の前身である若葉台自治会協議会が実施した夏まつりが、現在の夏まつりの前身となっています。若葉台団地は新興住宅地だったため、「自分たちのふるさとのまつりをつくりたい」という昔の自治会役員たちの、夏まつりにかける情熱と結束力は並々ならぬものだったそうです。
団地への入居開始から37年経った今、若葉台団地では少子高齢化による人口減少問題を抱えています。そのため、一時は夏まつりの子どもみこしでも、子どもの数を集められないこともあったそうですが、まつりの規模自体は立ち上げから35年間、ほぼ変えることなく行っているとのこと。それは、この夏まつりのために若葉台に里帰りしてくる人や、今若葉台で暮らす人たちのために、いつまでも変わらない“ふるさとのまつり”であり続けるためだといいます。
帰省中の参加者は、「毎年この夏まつりの時期にあわせて帰省するのが楽しみです。家族やここで育った友人たちと一緒に花火をみていると、自分のふるさとに帰ってきたんだな、と実感できますね」と顔をほころばせていました。
最後に若葉台まつりの会会長は、「この夏まつりを継続してきたことで、“若葉台で生まれ育ってよかった”というふるさと若葉台に対する感謝の気持ちが、多くの住民のなかに生まれてきたのだと思っています。今、団地内には新たな世代も増え始めていますし、これからも団地全員でこの夏まつりを盛り上げて、若葉台をもっと活気づけていきたいです」と、夏まつりと若葉台団地に対する思いを語ってくれました。
- 建物名:若葉台団地
- 所在地:神奈川県横浜市
- 階数 :13階など
- 総戸数:7棟 792戸(賃貸)、65棟 約5,200戸(分譲)
- 竣工年:1978(昭和53)年
- 管理形態:委託管理
- 管理会社:若葉台まちづくりセンター
- 総会開催:5~6月ほか
- 役員数 :-
- 役員任期:-