災害対応に欠かせない!―― 防災名簿の作成
築30年以上経過しているパークシティ溝の口は高齢の世帯が多く、その比率は6割を超えています。前回はその対策として住民交流の場を設置した様子をお伝えしました。今回は、住民から好評を得ている防災対策を紹介します。管理組合では以前より防災防犯分科会を設置し、自治会、民生委員などとともに共同防災管理協議会を組織し、災害時にどのような対応を行えばいいかを検討していましたが、2011(平成23)年3月の東日本大震災後に民生委員から「居住者の防災名簿を作ってみてはどうか」との呼びかけを受け、名簿と安否確認用マグネット製作に取り掛かりました。管理組合では、積極的に安全対策に取り組んでいるマンションを自分たちで探した結果、東京都板橋区にある「サンシティ」の事例を参考にし、2012(平成24)~2013(平成25)年にかけて準備を進め、2013(平成25)年に災害・緊急時の安否確認を目的とした「災害対策名簿」を整備しました。
住民の協力で完成した、名簿と避難支援マップ
作成した名簿は、世帯主とその家族の名前と緊急連絡先、緊急時の避難支援の希望の有無、近隣の個人ネットワークの有無を記入する内容となっています。協議会では提出された情報をもとに棟単位での避難支援マップを作成。援護希望者や川崎市指定要援護者をマーキングし、支援が必要な人がどの棟・階にいるかが一目でわかるようにしてあり、居住者の健康状態の変化や転入・転出を考慮し、名簿は2年に1回更新する予定です。
心配されることが多い個人情報保護体制も整えました。提出された記入用紙はデータ化せず、そのまま棟ごとにファイリング。名簿管理を管理組合保有の保管室にある専用金庫(10キー式、番号は自治会長責任で毎年変更)に入れ、保管室の鍵は管理会社の協力を得て、管理防災センターで管理しています。管理組合役員と自治会役員で構成する「自衛消防隊」と民生委員は「個人情報に関する誓約」に同意・押印することで漏えいを防止。ただし緊急時と判断される場合には、協議会を通じ消防・警察など行政機関に名簿を提出することを取り決めました。これらはすべて居住者にも説明会を開催・公表しています。
あくまで任意提出ですが、東日本大震災後に居住者の防災意識が高まっていたこともあり、秋祭りと、年1回の防災訓練で最初に実施する防災講演会の後に提出してもらうと回収時期を定めたことが「(回収率を高めるには)非常に効果的でした」(防災防犯分科会)とのこと。回収率自体は60%ほどでしたが、民生委員で作っている川崎市指定要援護者名簿と補完し合う形での名簿が出来上がったそうです。また、今年は2年に一度の名簿(全戸対象)の情報整備を実施する年。過去の経験を生かし、説明会の実施回数を増やしたり、回収方法(担当による訪問など)に工夫を凝らしたり、精度の高い名簿を作り上げる予定です。
分かりやすいと好評!“避難済み”マグネットシート
災害・緊急時の即時安否確認は、全戸に配布した「避難済みマグネットシート」を活用します。これは「避」マークが記載されたマグネットで、居住者が戸外に避難するときに玄関ドア表側に貼ることで、支援が必要な人の在宅の有無が確認できるようになります。通常は玄関ドア内側に貼っておき、災害時はそれを外側に貼るだけという簡易な点もポイント。「緊急時は動転していることが多いので、居住者にとって簡単で、かつ支援に動く側が一目で確認できるには何がいいだろうか」を念頭に考案したとのこと。これにより避難したかどうかが外から一目瞭然となる上、名簿を提出していない人に対しても救助支援対応ができると想定しています。居住者からも「単純で分かりやすくていい」と好評を得ています。
防災訓練ではAED講習も
このほか同マンションの防災防犯活動の中には、日々の敷地内パトロールに加え、毎年秋の防災訓練もあります。川崎市消防局の協力で火災時の消防活動方法や煙体験訓練などを行い、毎年200人前後の居住者が参加。子供達も消火器を使った消火活動の手順を体験し、火災発生時の初動消火について学習します。「親子で参加できて楽しみながら学べるのがいい」「訓練をきっかけに同じ棟・フロアの住民と交流ができる」と、参加者は年々増加しています。
また高齢者が多いことを考慮し、2012(平成24)年にAED(心臓救命装置)も導入しましたが、「使い方が分からないし、難しそうだ」との声があったので防災訓練時に練習を行うようになりました。同装置はなかなか使う機会がないため1度の練習では要領を得ないことが多いことから、「毎年練習する必要があると思っています」(管理組合理事)と、引き続き防災訓練の一環として実施していく予定です。
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そんなパークシティ溝の口管理組合のホームページはこちら⇒http://www.mizopark.com/
- 建物名:パークシティ溝の口
- 所在地:神奈川県川崎市
- 階数 :15階建て・4階建て 計12棟
- 総戸数:1,103戸
- 竣工年:1982(昭和57)年
- 管理形態:委託管理
- 管理会社:三井不動産レジデンシャルサービス(株)
- 総会開催:毎年6月
- 役員数 :理事9人、監事2人(住棟委員30人、住棟監事2人)
- 役員任期:1年(半数はさらに1年継続し、計2年となる)