どうすればいい? 管理組合の新型コロナウイルス対策【後編】
新型コロナ対策に取り組んできたマンション管理組合として、前回は「ザ・パークハウス横浜新子安ガーデン」の前編をご紹介しました。管理会社の業務内容の短縮やWeb会議での理事会開催など、参考になる実例がたくさんありました。今回は、様々な共用施設の使い方やマンション敷地内にキッチンカーを呼び住人たちの気分転換を図るなど、大規模マンションにおける取り組みについてレポートします。
共用施設にも使用制限
「ザ・パークハウス横浜新子安ガーデン」は、総戸数497戸のマンション。築5年と新しいうえ、ファミリータイプのマンションであることから若いファミリー層が多く、ITツールやデジタルサイネージ(電子掲示板)の導入など、若手の理事たちならではの改革を推し進めてきました。大規模マンションだけに共用施設も数多く、パーティルームやキッズルームのほか、ゲストルーム、シアタールーム、スタジオ、スタディルーム、ミニショップなど、便利な施設が揃っています。
しかし、新型コロナが流行してから、共用施設への考え方は一変してしまいました。屋内の施設は「密閉・密集・密接」の3密になりやすく、使い方を変更せざるを得なかったのです。4月7日に「緊急事態宣言」が発出されたのを受け、パーティルーム、キッズルーム、ゲストルーム、シアタールーム、スタジオの5つの施設の新規予約・利用の停止、および4月20日以降の予約分については当面の間キャンセルとしました。裏にある公園「サークルガーデン」や洗車スペース・レンタサイクルなど屋外の施設は通常通り利用できますが、上記5つ以外の屋内施設、スタディルームについては席を1つ空けて座るようにするなど、使用制限を行いました。
清掃・消毒については、清掃員の勤務時間を短縮したため、エレベータのボタン・手すりなど居住者の多くが手を触れる部分を優先的に実施してもらうとともに、各自気を付けてもらうことにしました。なかには、「キッズルームにあるおもちゃを消毒してほしい」という声も住人から上がりましたが、そういった要望に一つ一つ応えるのは難しいと判断。自己判断で気を付けてほしい旨を理事会だよりで住人に周知しました。ちなみに、私語厳禁のスタディルームはデスクワーク、ラウンジはリモートワークをする人に利用され、重宝されたそうです。
イベント開催は規模を縮小、もしくは見送り
では、マンション内で行われるイベントに関してはどのような対応をとったのでしょうか。ザ・パークハウス横浜新子安ガーデンでは、コミュニティ醸成のため季節ごとのイベントを開催しています。大きなところでは7月開催の七夕、10月のハロウィン、12月のクリスマス等のイベントがあります。
取材にお伺いした時は、ロビーに七夕の笹飾りが数本立てられていました。以前、七夕イベントの様子を当コーナーでもお伝えしたように、例年は笹飾りだけでなく、ステージで子どもたちが歌やダンスを披露したり、卵のつかみ取り大会や野菜販売、ミニ四駆走行大会が行われたりと大盛況で、ロビー内は人でごった返していたのですが、今年はそれも叶いませんでした。
「今年は各住戸に短冊を配り、ロビーに設置した笹に各々飾ってもらう笹飾りのみの実施です。これまでやっていた屋外でのスイカ割りも、業者を呼んでの飲食物の販売もワークショップもすべて中止。10月のハロウィンでは子どもたちが各住戸にお菓子をもらいに回っていたのですが、今年はそれも中止で、ロビーの飾りつけのみです」とイベント担当の牧野さん。クリスマスについても、人を集めない方法で何ができるか現在検討中とのことです。
「イベントではその場の住人同士の交流はもちろんのこと、準備の時には理事同士が仲良くなるいい機会なんです。また、当理事会は2年任期の半数交代で、2年目の理事が1年目の理事にイベントの準備をとおして引継ぎをしていたのですが、今回はそれもできなくなって困りました」と牧野さん。直接顔を合わせて交流することを目的とするイベントが縮小されるのは、管理組合の運営上かなりの痛手となっているようです。
また、毎年9月に行っている防災訓練も、どのような方法で行うか現在検討中です(※1)。いつもは通報訓練や安否確認、サークルガーデンに避難して人数確認、その後グループに分かれて消火器訓練や仮設トイレの組み立て訓練などを行ってきましたが、今年は同じようにはできないと考えています。防災担当の岡上さんは、「消防法で決められていることなので、防災訓練自体をなくすことはしませんが、規模を縮小せざるを得ないでしょう。人が大勢集まることはやめ、屋外で間を取ってやれることはないかなど、消防署と相談して決めたいと思います」と教えてくれました。
キッチンカー(フードトラック)で楽しくコロナ禍を乗り切る
以上のように、コロナ禍の管理組合運営は不自由で頭が痛いことばかりですが、ザ・パークハウス横浜新子安ガーデンでは、知恵を絞って楽しい企画を考えました。それがキッチンカーの出店サービスの実施。家族の在宅時間が多くなり3食分の食事づくりが大変、自粛疲れでストレスが溜まっている、といった声を受けて、マンション敷地内にキッチンカーに来てもらい、1食分の手間を浮かすと同時に気分転換を図ってもらおうという試みです。
7月19日から毎週日曜日、11時から14時までの出店。場所は駐車場脇です。感染防止のため、並ぶ時は間隔を開けてもらうことなど注意点も記し、理事会だよりやデジタルサイネージ(電子掲示板)で告知しました。3回実施した時点で、7月19日31食、25日45食、26日50食と毎回ほぼ完売。「いい気分転換になった」「毎回楽しみにしている」などと、住人に大好評だったため、当初1か月をトライアル期間としていましたが、今後も続ける予定です(※2)。
何かと暗いニュースばかりが耳に入る昨今ですが、理事の皆さんの経験と豊富な人脈や工夫により、住人の皆さんに喜んでもらえるイベントが開催できるといいですね。皆様のマンションではどのような工夫を凝らし、新型コロナと対峙されているのでしょうか。
(※1)オンライン防災訓練を実施。訓練の様子は後日レポートします。⇒ レポートはこちら
(※2)好評につき、その後も継続中(2020年9月時点)。
* ザ・パークハウス横浜新子安ガーデン管理組合法人 公式ホームページ
https://www.tph-shinkoyasugarden.com
- 建物名:ザ・パークハウス横浜新子安ガーデン
- 所在地:横浜市神奈川区
- 階数 :地上10階・地下1階建て
- 総戸数:497戸
- 竣工年:2015(平成27)年
- 管理形態:全部委託
- 管理会社:三菱地所コミュニティ(株)
- 総会開催:毎年1月
- 役員数 :18名
- 役員任期:2年(半数改選、再任は妨げない)