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「互近助」ネットワークで、災害時の「死者ゼロ」を目指す管理組合の取り組み【自助編】

地震列島・日本。特に最近では、台風や豪雨による洪水や土砂災害なども増え、ますます災害が多くなっています。そんな災害に備えるため、マンションの管理組合ではそれぞれ様々な対策を講じていることと思います。今回は、災害時の「死者ゼロ」をスローガンに、「逃げる防災」から「いのちを守る防災」へ舵を切り、自助や共助のための努力を続けているマンションをご紹介します。

防災・防火

阪神・淡路大震災を受けて自治会を発足

1_空からみなさんは、「防災」と聞いてまず何を思い浮かべますか? 食料品の備蓄、防災リュックの準備、避難訓練……。何より防災とは「避難すること」と考える人が多いと思います。しかし、そんな「逃げる防災」ではなく、死者ゼロを目指した「いのちを守る防災」を提唱しているマンションがあります。東京都昭島市にある「昭島つつじが丘ハイツ北住宅団地」です。

 

昭島つつじが丘ハイツ北住宅団地は、JR青梅線昭島駅徒歩10分ほどの場所にある、団地型マンションです。計14棟、1,397世帯という規模の大きさで、38年前の入居当初から住み続けている人も多いため、65歳以上の高齢者が45%以上を占めています。

 

この団地が最も力を入れているのが“防災”です。きっかけは1995年に起きた阪神・淡路大震災。堅牢なはずのマンションが、簡単に崩れたり傾いたりするのを目の当たりにし、当時理事をしていた宮田さん(現 理事長)は衝撃を受けたそうです。「これは人ごとではない。早急に私たちも対策をとるべきだと思いました。震災で行政などと連携して復興していく様子を見て感じたのは、災害への備えを強化するには管理組合だけでは難しいということ。平時から昭島市や関係団体、周辺地域との連携が必要であると判断し、早速、翌年に自治会を発足させたのです」と宮田さんは言います。

 

発災時にまず命を守ることができるのは自分

2_P6230249「いのちを守る防災(災害時の死者ゼロを目指した活動)」のポイントは3つ。

 ① 自助を啓発する活動を続ける

 ② 平時におおいに楽しく“互近助(ごきんじょ)”の仲間づくり

 ③ 発災後、15分以内の全戸安否確認

宮田さんは防災について学ぶうち、防災・危機管理アドバイザーの山村武彦さんと出会いました。講演会や個別で防災について教えてもらうなかで考えたのが、これら3つの内容です。

 

特に力を入れているのが“自助”。発災時にまず命を守る行動をとれるかどうかは、一人ひとりの意識にかかっているからです。住人に対し自助の意識を啓発するため、防災訓練のほか、各家庭に配る広報誌「つつじが丘北防災ニュース」や「防災マニュアル」などを活用して、防災グッズの準備や各家庭内の安全対策を呼びかけています。

 

具体的な内容としては、定期的な家庭での「防災会議」の推奨があります。東日本大震災のあった3月11日と防災の日の9月1日、つまり私たちが最も防災について考える日を、年2回の家庭内防災会議開催の日としようと提案。防災マニュアルは、会議の議題や確認しておいた方がいいことがチェックリストになっていて、どんなことを話し合えばいいのか一目瞭然です。

3_防災会議チェックリスト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、備蓄品についても、かなり詳しく「どんなものを・どんなふうに」備蓄しておけばいいかが記してあります。食料品・飲料水は3日分以上を、ガスや電気が止まった時に役に立つカセットコンロとカセットボンベの備え、備蓄品の賞味期限や使用期限の確認など、懇切丁寧に解説してあり、各家庭で備蓄について準備を始める際にとても使いやすいガイドとなっています。

 

家具の転倒防止推奨や安否確認のためのグッズも

OLYMPUS DIGITAL CAMERAさらに、阪神・淡路大震災における死因の4分の3が、家具の転倒などによる圧死だったことを受け(※)、各家庭の家具転倒・落下・移動防止対策も強化。家具を固定するためのL字金具の取りつけ方、窓や棚のガラス部分に飛散防止フィルムを張ること、いざという時に逃げ込む「安全スペース」を部屋の中に確保することなどを提唱しています。

 

家具の転倒防止については、やり方を解説するだけでなく、L字金具の取りつけなどに必要な工具を管理組合で購入し、いつでも住人に貸し出しをしています。電動ドライバーといった定番品だけでなく、壁の下地が入っているかを調べる下地探知用センサーも備えているという念の入れようです。

 

そして、発災時にマンション中の安否確認を円滑に行うため、各戸にはマグネット式の安否確認ステッカーと家族の人数分のネームプレートを作成して配りました。いずれも宮田さんの発案で、ネームプレートは手づくりです。安否確認ステッカーは黄色の「大丈夫」と赤の「SOS」ステッカー、2種類をつくりました。ネームプレートは、縦階段ごとのグループ別に色分けされた紐がつけられています。これらを玄関ドアの裏にいつも貼って用意しておけるよう、ネームプレートを吊り下げるフックまでも支給しました。

 

ちなみに、これらの原資はマンション内で資源を回収することで昭島市から交付された、資源回収奨励金を充てる承認を得て賄っているそうです。「私が作成したネームプレートは、避難訓練の時だけでなく、イベントや地域活動などの際にもつけてもらうようにしています。すると顔と名前が覚えやすくなり、名前を呼びあう仲間に。また、号棟内でのあいさつ運動も活発になってきたんですよ」と宮田さんは目を細めます。

 

  ※ 国土交通省近畿整備局資料より

 

  ※ 次回は、近くの人たちと助け合う「互近助(ごきんじょ)」ネットワークの取り組みについてご紹介します。

 

To Be Continued.

 

 

概要(取材年月:2020年06月)
  • 建物名:昭島つつじが丘ハイツ北住宅団地
  • 所在地:東京都昭島市
  • 階数 :14棟・11階建て
  • 総戸数:1,397戸
  • 竣工年:1982(昭和57)年
  • 管理形態:部分委託(窓口・清掃・会計業務のみ委託)
  • 管理会社:日本総合住生活(株)
  • 総会開催:毎年5月
  • 役員数 :理事14名、監事2名、防災管理1名
  • 役員任期:1年(自薦→各号棟から代表1名を選出)