- 連載
- 特集
- 2012年秋号
●世帯主の高齢化が進む
●行政や管理業界の取り組み
●先進事例にみる高齢居住者の生活支援
●「自助・互助・共助」による複合的な取り組みを
●安全・安心保証の仕組みをソフト面でも確立
安全・安心保証の仕組みをソフト面でも確立
マンションはもとより「集まって住む」住宅です。高齢居住者が増えても、集住のメリットをうまく活かせば、見守りや安否確認、引きこもり防止、災害時の救援など幾重もの独自のセーフティネットを構築することができます。さらに、マンション外の行政や地域資源・人材と連携すれば、より確かな支援に発展させることも可能でしょう。そのためには、高齢者が増えてから対策を練るというのではなく、安心生活拠点としての日頃からの良好なコミュニティづくりが不可欠となります。
高齢者支援の中心を担うのは、あくまで居住者(管理組合・自治会)自身ですが、管理会社が居住者による高齢者支援の力をうまく引き出していくことも重要です。居住者主導で熱心に取り組めるところはよいですが、管理組合が十分機能していないようなマンションでこそ、管理会社の持つ知識や技術を上手に〝移植〟していくことが必要です。築年数が経つとともに、居住者の高齢化と賃貸化が進んだマンションでは管理組合の役員のなり手が減り、管理組合機能を維持することが難しくなってきているところもあります。特定の居住者に過度な負担や責任が及ばない仕組みを考え、居住者への提案や支援を行うといったことも管理会社として必要になってくるでしょう。また、「高齢者住宅支援員」のような専門人材を育成し、管理の現場に投入していくような積極的な姿勢も今後は求められます。
超高齢時代にあって、数十年経ってもマンションの資産価値や魅力を下げないためには、建物性能の維持に腐心するだけでなく、居住者の安全・安心を保証する仕組みをソフト面でも確実に作り上げることが求められます。終の棲家となり得る、高齢期に誰もが安心して住めるマンションを実現するための準備は、居住者・管理会社双方ともになるべく早い時期から始めるべきでしょう。
吉村直子(Naoko Yoshimura)
1992 年(株)長谷工コーポレーション入社。
1994年(株)長谷工総合研究所に出向、2012 年より現職。
大学時代より高齢者の居住環境に関する研究に取り組み、全国各地の有料老人ホーム等で調査を実施。
現在は、高齢者住宅事業に関わる制度・政策や市場環境の評価・分析、事業計画立案のための調査・研究、コンサルティングに携わる。
著書に「実践“高齢者の住まい” ~医療・介護・住宅からのアプローチ~」(創樹社、2010 年、共著)
など。