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- 2012年秋号
●世帯主の高齢化が進む
●行政や管理業界の取り組み
●先進事例にみる高齢居住者の生活支援
●「自助・互助・共助」による複合的な取り組みを
●安全・安心保証の仕組みをソフト面でも確立
●高層住宅管理業協会の活動
社団法人高層住宅管理業協会では、管理組合や管理会社が高齢者に関する知識や理解を深め、マンションにおける良好なコミュニティ形成と円滑な管理業務を行えるようにとの目的から、2008年3月に『マンション居住高齢者への支援マニュアル』を公表しました。
このマニュアルによると、管理物件の居住者の家族・年齢構成を把握する仕組みを持っている管理会社は4割に過ぎず、一人暮らし高齢者の情報となると3割にとどまることがわかりました。居住者名簿の整備・更新については、管理組合や自治会など住民主導での取り組みなくしては正確な情報を得ることが難しく、個人情報の保護が重視される現在、必要性を認めながらもリスト作りに着手できないでいるマンションが多いことを示唆しています。こうした状況も踏まえつつ、マニュアルでは、高齢居住者の生活支援に有効と思われる諸方策を、管理組合・管理会社に対して提言しています。
先進事例にみる高齢居住者の生活支援
分譲マンションの中には、居住者主導で熱心に対策を行い、高齢者の生活支援にも力を入れているところがあります。「ソフィアステイシア」(神奈川県横須賀市、309戸、2003年3月入居開始)はその代表的な事例の一つです。
●挨拶運動から始まった活動
同マンションは、4棟14階建で、東京湾を一望する海岸地帯を埋め立ててできた「よこすか海辺ニュータウン」(総計画面積61ha)の一画に位置します。居住者数は約1000人、子供のいる3~5人のファミリー世帯が中心ですが、埋立事業で出現した平坦地に建設され、近隣に大型商業施設や運動施設、医療機関、公園などが集約しているという生活利便性から、丘陵地域の住宅地から住み替えた高齢者が多いのも特徴です。現在、65歳以上の高齢者94人(高齢化率9・4%)が暮らしています。
同マンションでは、住民同士の顔がわからない入居間もない時期に、空き巣や車上狙い、自転車盗難などの犯罪が多発しました。そこで、第1期の管理組合理事会では、「防犯の原点はコミュニティの充実から」を合言葉に、居住者による挨拶運動を重点的に行うことにし、住民交流の促進に取り組みました。専門委員会として防犯委員会を設置し、「防犯の手引き」の作成や居住者向けの講習会、子供たちの見守り活動や防犯パトロールを開始。まもなく成果は現れ、犯罪被害は激減しました。