トップページ > 特集 > マンション居住者の〝高齢化〟を考える
  • 連載
  • 特集
  • 2012年秋号

マンション居住者の〝高齢化〟を考える

先進事例から学べること

「ソフィアステイシア管理組合・自治会」での取り組みには参考になるべき点が多々あります。以下に6つのポイントを挙げます。

①管理組合と自治会の両輪走行

管理組合とは別にマンション居住者を構成員とする自治会を設置し、両組織の連携・協働によって、安全・安心確保のための対策を推進しています。2つの組織を置くことで、管理組合は共有財産の管理に特化した合意と決定を行い、コミュニティ運営や住民交流は自治会がリードして担うといった役割分担をしています。両組織の連携のために、兼任理事を任命しているのも特徴の一つです。賃貸居住者が管理上の〝お荷物〟となることなく、当該居住者も巻き込んでの一体的なコミュニティ形成を目指しています。

②「生命重視」の信念が明確

自治会で詳細な居住者台帳を整備し、災害や事故・急病などの緊急事態に備えています。個人情報保護法にとらわれすぎると、災害や犯罪、孤独死・孤立死に対処できない脆弱なコミュニティになってしまう恐れもありますが、「命より大事な個人情報はない」との信念に基づき、賃貸化住戸も含めた全居住者に台帳の提出を促し、9割以上の提出率を達成しています。

③シミュレーションと訓練を継続して実施

防災については、地域固有の災害リスクを洗い出し、マンション居住者一人ひとりが防災知識を身に着けるとともに、災害時の行動・対策等をマニュアル化して共有しています。また、日頃から種々の講習会や訓練などを実施し、緊急事態が起こった場合にどう対処すればよいかを住民総出で繰り返し学習・経験しています。居住者台帳が整備され、データの管理がされているおかげで、一人暮らし高齢者や障害者など災害時に援護を要する人の所在や状態も詳細に把握しており、こうした人たちの避難誘導の方法もすべてルール化されています。

④管理会社・管理員との関係が良好

入居開始当初から現場に配属されている管理員への居住者の信頼が厚く、結果として管理会社の信任にもつながっています。長期にわたる建物の維持管理と良好なコミュニティ形成という目的に向かって管理組合と管理会社の足並みが揃っているため、高齢居住者の支援に関しても両者間での誤解や戸惑い、不安が少なく、いざという時に居住者と管理会社が共に知恵を出し合い、協力しながらの対応が実現できています。

⑤高齢者が気楽に集える場がある

自治会の下に「長寿会」を置き、高齢者が気楽に集えるサークルや会食などのイベントを定期的に実施しています。趣味にいそしむだけでなく、見守りや安否確認の機能も兼ねることになり、高齢者の引きこもりや孤独死などを防ぐ役割を果たしています。また、プレ高齢者や若年居住者が賛助会員として会の運営をバックアップしており、常日頃から高齢居住者に関心を寄せることを意識的に行っている点も注目できます。

⑥地域への関わりが深い

「よこすか海辺ニュータウン連合自治会」(同ニュータウン内に所在する7つの分譲マンションの各自治会の連合体)や「よこすか海辺ニュータウンまちづくり協議会」など地域の広域団体・組織の設立に主導的な役割を果たし、その活動に積極的に関与・参画しています。マンション単体ではなく地域全体で生活者の安全・安心を守っていこうとする姿勢が明確です。

2012年春には、連合自治会が主導して地区社会福祉協議会(地区社協)を設立しました。「生まれ育ったまちで、住み慣れた我が家で、いつまでも暮らし続けるために」をコンセプトに住民主導、地域ぐるみで少子高齢化に対応するコミュニティづくりを目指しています。

住民自身が地域の福祉問題やニーズを主体的に捉え、自発的に地域福祉活動に取り組む住民組織。地区住民や、町内会・自治会、民生委員・児童委員、その他地区の各種団体から選出された代表者によって構成される。