トップページ > 特集 > 取材レポート マンションで、ペットともに生きる
  • 連載
  • 特集
  • 2013.10.01掲載

記事一覧を見る

取材レポート マンションで、ペットともに生きる

株式会社住宅新報社 取材

◆ペットクラブを円滑に運営するためには

トラブル1位は屋外でのトイレ問題

最近では、「ペットクラブ」をつくってペットを飼っている人が参加するマンションが多いようです。

マンションのコミュニティ支援をしている一級建築士事務所・ディーワークの中川直人氏によると、マンション内で起こりやすいペットトラブルの第1位は共用施設内でのトイレ問題。エレベーターやエントランスなど共用部に犬がおしっこをしてしまうことや、共用部にしたうんちを放置することで、トラブルに発展するケースが多いとのことです。

ペットのトラブル1位は屋外でのトイレ問題 「おしっこは犬のマーキング行為だから“仕方ない”とする飼い主と、しつけができていないとする人との間で揉めることがよくあります。実際にマナー違反をするのはほんのひと握りの人なのですが、毎日の行為なので1頭がおしっこをしてしまうだけで多くの人が不快になるんです」(中川氏)。

1人のマナー違反者のために、ペットクラブ全体が“悪者”とみなされてしまうことも問題だとか。ほとんどの人はマナーを守ってペットを飼っているだけに、とても残念なことです。

清掃やイベントでコミュニケーションを

こうした事態に立ち上がるペットクラブもあります。例えば、共用部の清掃作業を行うクラブは多く、これはペットを飼っていない入居者に対するアピールとなるほか、一部の汚物放置を行う飼い主に対しても効果があるそうです。

また、ペットクラブが主宰するバーベキューパーティなど、入居者全体を巻き込んだイベントを行うクラブもあります。これは、「ペットを飼う人はマナーが悪い」と考えがちな人の誤解を解くだけでなく、マンション全体のコミュニティ形成にも大きく寄与するものだと、中川氏は言います。

「立地条件がほぼ同じで、最初から“ペット共生住宅”と銘打ったマンションと、通常のマンションを比較すると、前者の方がマンション内のコミュニティが活発であるという報告もあります。ペットを媒介として、コミュニケーションがより円滑になったんですね。

 動物嫌悪者は“ペットを飼う人は皆マナーが悪い”という見方を改め、ペットを飼っている人はそうでない人にもっと理解してもらえるよう働きかける、お互いの歩み寄りで、よりよいコミュニティをつくっていけるのではないでしょうか」(中川氏)。

ペットクラブは何のため?

「では、ペットクラブとは、いったい何のためにあると思われますか?」

反対に中川氏に聞かれ、戸惑ってしまいました。
改めて考えると、ペットを飼う人にとってはペットクラブに入会することが“義務”であり、そうでない人の中にはペットトラブルの“苦情窓口”と捉える人もいるかもしれません。

ペットともに楽しく暮らしたいしかし、「それでは続かない」と中川氏は言います。
「ペットクラブに参加するのは、“ペットとともに楽しく暮らしたいから”というのが一番健全な形。その気持ちがつながってマンション全体に広がっていけばもっと楽しい。こういうペットクラブは結果としてトラブルが少ないと思います。

トラブル解決をペットクラブの“ノルマ”にしないこと。クラブの会員はプロのトレーナーではないのですから、そもそもマナー違反者を取り締まる強制力も問題解決能力も、ペットクラブにはありません。クラブ外の人もマンション内の一つのコミュニティとしてペットクラブを評価し、ペットトラブル発生の抑止力になってくれていると捉えてみてはどうでしょう」。

考えてみれば、マナー違反者の問題もマンション内のひとつのトラブルの形であり、決してペットクラブだけの責任ではありません。例えば、マンション内のその他のサークルやクラブのように、“好きだから参加する”。これがペットクラブが楽しく長続きする秘訣だと、中川氏は教えてくれました。