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  • 2013.10.01掲載

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マンションで、ペットともに生きる

株式会社住宅新報社 取材
麻布大学獣医学部教授 一般社団法人日本動物看護職協会会長 NPO法人日本ペットドッグトレーナーズ協会理事長 太田光明氏 約4割の世帯がペットを飼っていると言われる中で、近年ペット飼育可のマンションが増えています。しかし、それと同時にマンションにおけるペットトラブルが増えているのも事実。

マンションでペットと上手に共生していくには、マンション居住者がペットに関する正しい知識を知っておく必要があります。

そこで、専門家やマンションのペット支援を行う会社にお話を伺うとともに、一般的なマンションのペットクラブの事例をご紹介します。

(注:「ペット不可」とされるマンションでは、そもそもペットを飼うことできません。ペット可のマンションであっても、規約やペットの飼育細則などに同意し、それを順守する必要があります)

◆ペットの習性を知っておきましょう

まずは、ペットを飼っている人も飼っていない人も、ペットの習性を知ることが大事です。 日本ペットドッグトレーナーズ協会の理事も務める麻布大学獣医学部教授の太田光明氏に、主に犬の習性についてお話を伺いました。

犬の「吠える」はしつけが難しい

犬が無駄吠えしたり、人に向かって吠えかかったりして困っている飼い主さんは多いと思われます。

「“犬は吠えるのが仕事”です。だから、まずは吠えさせないようにしつけをするということ自体、大変難しいことだと考えてください。

犬は犬種によって違いがあるものの、おおよそ生後6~8週の間に母犬との分離をします(欧米では生後8週齢を過ぎてから)。その時期にしっかりしつけをすれば、吠えない犬になる。そもそも母犬が吠えなければ子犬もほとんど吠えません。

しかし、小さくてかわいいからと、実際には6週以下の子犬がペットショップ等で売られています。こうした子犬を母犬から離したままの状態でしつけることは、一般の方にとって大変なことなんです。吠えやすい行動を観察して、その行動をなるべく避けるようにする、などどうしても消極的な方法を取らざるを得ません」。

犬は子供が嫌い?

犬のしつけは基本は褒めること、という太田氏。できないことを怒るのは逆効果なのだとか では、大事故に発展しかねない「噛みつき」についてはいかがですか。
「噛みつきも吠えるのと同様、犬にとっての“攻撃行動”ですから、同じようにしつけの問題ではありません。ただ、犬の習性を知れば避けることはできます。

犬は案外子供が嫌いなんです。なぜかと言うと、子供は突然走り出したり手を出して来たりと、予期せぬ行動に出やすいからです。噛みつき事故の被害者に子供が多いのはそのためです。

だから、まずはお子さんを犬にむやみに近づかせないようにすること。どうしても触りたい場合は、飼い主に声をかけてからゆっくり近づくこと。飼い主の方も子供が近くにいたらいつもより強くリードを握っておくなどの配慮が必要でしょう」。

トイレトレーニングはしっかりと

犬のトイレトレーニングの様子。根気強く取り組むことで、決められた場所に排泄することができるようになる では、おそらくもっともトラブルの多い犬のトイレ問題についてお聞きします。

「攻撃行動と違って、犬のトイレはいつからでもできます。どんな犬でも数週間から長くても3か月できちんと決められた場所でできるようになるんです。

まずは、散歩と排泄行為を一緒にしないこと。おしっこを色々な場所でするのは犬のマーキング行為なので、一度した場所ににおいが残っていればまたします。その場所を根気強く飼い主がきれいに洗ってください。

家の中に犬用のトイレの場所を決めて、はじめはうんちから、必ずその場所でするものだということが分かれば、そのうちおしっこもトイレでできるようになります。

大事なのは妥協せず、辛抱強く教えることです」。

動物嫌いの人にはコミュニケーションを

マンションにはどうしても動物が好きではない人も住んでいるかもしれません。最後に、動物嫌悪者への対応はどうすればよいのでしょうか。

「世の中には動物嫌悪者が全体の15パーセント、さらに動物アレルギーの人は何らかのアレルギーを持っている人の5パーセントほどいると言われています。

そのうち、後者のアレルギーがある人は、なるべく動物の近くに行かない方がいいので、マンションならばそのことに配慮した動線が考えられているといいのですが、現実にはそれは難しいですね。

また、動物嫌悪者の中には、動物そのものが嫌いというよりは飼い主のマナーの悪さが気に入らない、という人も結構いるんですよ。だから、ペットを飼っている人は普段から色々な人とコミュニケーションをよくとって、誤解が解ければトラブルも起こりにくくなるはずです」。

まずは、飼い主がマナーを守り、トイレトレーニングはしっかりと根気強くすること。また居住者間のコミュニケーションを積極的にとり、ペットのことを知ってもらうことが大切ですね。