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  • 2016.01.04掲載

マンションの空き家対策

横浜市立大学国際総合科学部教授 齊藤広子

このような状況のなか、大阪府では、宿泊施設の不足を解消することを狙い、宿泊施設を営業する条件として6泊7日以上滞在することや、府の立入り調査ができることなどを盛り込んだ、民泊条例を制定しました。

また、空き家問題を深刻にしている例として、「相続放棄」の問題もあります。こうした場合には手続きが大変で時間もかかります。競売しても売却できない、あるいはマンション売却価格より管理費などの滞納額が上回る例もあります。

管理組合は、空き家が問題となるような利用をされないように、きちんと規約を整備するとともに、リフォームの承認制度を利用し、不適正な利用の予防(2014年冬号 住戸の使い方のマナー 参照)や、滞納管理費等の速やかな催促を通じて、所有者の把握と滞納管理費等を無くす努力が必要となります。

●空き家をマンションの資源に

最後に、マンションの空いた1住戸を学生用のシェアハウスに利用した例を紹介いたします。

管理のための勉強会 5階建てでエレベーターがない団地型マンションの住戸に、学生3名が使うシェアハウスが生まれました。学生が近所に迷惑をかけて暮らさないように、 アドバイス、指導する係の人をマンション内で任命しています。この係の人といっしょに、学生たちはマンションの行事にも参加しています。こうした取り組みは、空き家が深刻な地域で近隣の大学と協力して行われることが多いようです。

また、空いた1住戸を借りて、管理組合の集会室にしているところもあります。空き家をマンションの資源として活用する方法も、ぜひ前向きに考えていただければと思います。

齊藤 広子 Profile
齊藤 広子
横浜市立大学国際総合科学部まちづくりコース不動産マネジメント論担当教授。工学博士、学術博士、不動産学博士。
(一社)マンション管理業協会「マンションいい話コンテスト審査委員会」委員長

専門は住まい学、住環境管理学、 居住のための不動産学。研究テーマは、マンションの管理、住宅地の住環境マネジメント。日本マンション学会研究奨励賞、都市住宅学会論文賞、日本不動産学会業績賞、日本不動産学会著作賞、不動産協会優秀著作奨励賞、日本建築学会賞等受賞。
著書に『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価値が上がる住宅地』(学芸出版社)、『住まいと建築のための不動産学入門』(市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出版社)など多数。