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  • 2016.01.04掲載

マンションの空き家対策

横浜市立大学国際総合科学部教授 齊藤広子

■空き家に対する政策

昨今、我が国全体で空き家問題が深刻化してきています。たとえば、自分の家の隣が空き家だと、特別何か被害がなくても、それだけで不安になってしまいます。 近隣の目が届かないこともあり、泥棒が狙ってくるかもしれないと気にもなります。また、戸建て住宅であれば、建物が老朽化し、倒壊の危険性、衛生面にも悪影響が出るなど、 地域の住環境や景観が悪化し、治安も悪くなる可能性も考えられます。

このような状況を受け、地域の方々の生命・身体・財産を保護し、生活環境の保存、また使える空き家の有効活用などを目指し、「空家等対策の推進に関する特別措置法」 が2014年11月27日に公布、2015年2月26日から施行されました。ここでの空き家は、棟単位で空き家になっているものが対象で、マンションの1住戸が空き家になっている等は対象にはなりません。

この「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、問題がある空き家に対して、行政が立ち入り、調査や助言・指導、勧告、命令をすることができます。それでも問題が解決できない場合には、 代執行が行えることになっています。神奈川県横須賀市では2015年10月に全国ではじめてこの法に基づき、行政による取壊しの代執行が実施されました。

住宅は個人の財産ですが、こうした問題があれば、行政が関与できるということです。つまり、「個人の勝手」とはいかないということになります。

マンションでの暮らしも、個人の勝手とはいきません。まず一人ひとりが自分の住戸で暮らすことで、建物の保全に寄与していることになります。たとえば、共用の排水管の清掃のための各住戸立入りへの協力や、 共用部分の廊下や階段、エレベーターなど日頃使っている部分に不具合を発見すれば連絡するということを通じて、マンション全体の維持保全・修繕に協力をしていることになります。

また、いざというときに居住者がお互いに助け合えるのは、そこに人が住んでいるからです。ですから、人が住んでいるというのは、とても大事なことなのです。

しかし、空き家が増えればどうでしょうか。建物の維持管理面、そして生活管理面も問題が生じるだけでなく、運営管理面にも問題が生じやすくなります。理事のなり手が減り、管理費や修繕積立金の滞納も増えやすくなりがちです。