- 連載
- マンガで事例研究
- 2015.10.01掲載
④決まったことは管理組合員全員に報告する。
理事の皆様が大いにがんばっておられるのに、文句を言う人もいます。その原因の一つに、「何をしているのかがわからない」といったことがあります。実際に、「理事会の議事録には詳細に書かれていないので理事会が何をしているのかが不明である」という意見があります。わからない「不安」が「不満」に変わっていくのです。ですから、今、どんなことを議論し、どこまで決まっているのか、今後どのようなことを検討する必要があるのかを組合員の皆様にも見えるようにしましょう。マンション管理標準指針(http://www.mlit.go.jp/common/001080787.pdf)でも、理事会議事の広報は約3/4のマンションで実施されています。
●コミュニティ活動などのイベントは管理組合運営に寄与する
先ほど紹介したイベント活動に対しては、「イベントばかりしていて、管理組合運営に寄与しているの?」「安心して暮らせるマンションになるの?」と、ご心配になるかもしれません。そこで、2つの調査をご紹介します。
1つは私も参加して行った国土交通省の調査結果です。
(マンションの適正な維持管理に向けたコミュニティ形成に関する研究:
http://www.mlit.go.jp/pri/houkoku/gaiyou/syousai/kkk91mokuzi.html)
「コミュニティ活動が活発なほど総会の参加者が多い」「コミュニティ活動が活発なほど防犯や防災対策などの取り組みが多い」という結果になっています。
もう一つの調査は、私が実施した、東日本大震災で被害を受けた浦安市の埋め立てエリアの管理組合に対して行ったものです。日ごろイベントを実施している管理組合では、災害時の取り組みが多くなっています。特に、全員参加を促すイベントを実施しているマンションでは、いざという時の対応が積極的になって、助け合いに寄与していました。マンションで安心して暮らすには、せめて居住者がお互いに顔を知るぐらいは必要ですよね。
ぜひ、皆様のマンションでも「わかる→ 安心 → 楽しい → 参加 → わかる…」のすてきな好循環をつくってほしいと思っています。管理に無関心な人が減り、お互いの顔が見え、安心して暮らせるマンションになることを心から願っています。
齊藤 広子
横浜市立大学国際総合科学部まちづくりコース不動産マネジメント論担当教授。工学博士、学術博士。
(一社)マンション管理業協会「マンションいい話コンテスト審査委員会」委員長
著書に『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価値が上がる住宅地』(学芸出版社)、『住まいと建築のための不動産学入門』(市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出版社)など多数。