四半世紀かけ建替えを実現!(下)
2015(平成27)年8月に建替えが完了、その後入居が始まった「桜上水ガーデンズ」。全878戸のうち、356戸の昔からの居住者が新マンションの引渡しを受けました。前回は建替え検討のきっかけから着工にいたるまでの経緯を紹介しました。今回は具体的な建替え内容と、仮住まい中のコミュニケーション方法、今後の取り組みなどについて紹介します。
従前より広い区画を選択
桜上水団地建替え事業は、①17棟(4階建て※一部5階建て)・404戸から8棟(6~14階建て、共用棟含む)・878戸、②全棟に免震構造採用、③駐車場の地下化によるゆとりある敷地の確保、④1住戸当たり平均70㎡の専有面積の住戸⑤一定の引越し仮住居費を事業費で見込む、これらの条件で建替え決議を可決。それでも最終的に、権利者(旧住民)の多くは費用を追加負担し、面積を増やした形で権利変換を行いました。
予想外の仮住まい長期化! 定期的な懇親会、ニュースレター発行で絆を維持
裁判やそれに伴う着工遅れが響き、仮住まい期間は4年に及びました。建替組合員の有志は離れて暮らす旧住民の絆を絶ってはいけないということで、2~3カ月に1回の割合で「桜上水のつどい」を開催。並行して建替組合では2カ月に1回のペースで「建替えニュース」を発行し、建替え工事の進捗状況と今後の予定を知らせるようにしました。
これは建替組合の広報メンバーが担当し、権利者(旧住民)に配布。工事竣工までにおよそ60回発行しました。予定よりも長期間の仮住まいを余儀なくされた権利者(旧住民)は不安も多かったといいますが、「実際に自分の目で建設が進んでいることを確認できたのでよかった」「定期的に届くニュースをみて状況が把握できたので安心できた」という声が多く聞かれました。理事も「長年ここに住んで培ってきた大切なご近所との関係。皆さん心配・不安が多かったと思いますが、横の連携が途切れることなく入居できたことは本当によかった」とホッとした様子でした。
居住世帯が若返り、活気溢れるマンションに変身
生まれ変わった桜上水団地には、新たな居住者が約520世帯増えました。当初は50代が中心になると考えられていましたが、結果的に30~40代が多く入居することになりました。中庭では子どもの遊ぶ姿が増え、毎日楽しそうな声が響き、新設した共用棟のキッズルームは連日盛況だといいます。旧管理組合の理事メンバーも「高齢化が進んでいたマンションが、新たな入居者のおかげで1つの社会が形成できるようになった。新旧住民が融合し、新しいマンションのあり方・生活を構築していければ」と考えています。
一方で昔からの居住者からは、建替えに伴い桜の木がかなり減ったことを残念がる声も多いようです。旧団地は桜並木を中心に5,000本以上の木々が植えられ、1984(昭和59)年には「第1回せたがや界隈賞」を受賞するなど、緑豊かな団地として有名でした。そのため旧管理組合では年間800万円をかけて桜並木を維持するとともに、自主植栽クラブを通じ日常的に緑化活動を行っていたといいます。今回の建替えでは樹木を植え替え、新たに360本を植栽しましたが、昔を知る人にとっては「緑が減ってしまった」と感じるかもしれません。すでに植栽クラブを立ち上げる話も出ていることから、「そのあたりは昔からの居住者を中心に意欲的に取り組んでいきそう」(建替組合理事)と期待されています。いずれにせよ何もかもが再スタートを切ったばかり。「今後は新体制の下、いろいろなことに取り組みながらいいマンションにしていきたい」というのがマンション居住者全員の願いです。
- 建物名:桜上水ガーデンズ
- 所在地:東京都世田谷区
- 階数 :6~14階建て・8棟
- 総戸数:878戸(非分譲住戸356戸含む)
- 竣工年:2015(平成27)年
- 管理形態:委託管理
- 管理会社:野村不動産パートナーズ(株)
- 総会開催:毎年6月
- 役員数 :22人
- 役員任期:2年(1年毎に半数改選予定)