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エルザタワー55低-防災見学会の様子

居住者1,800人を守るため大型防災倉庫を設置――――オリジナル防災マニュアル策定に動く

埼玉県川口市にある「エルザタワー55」では、2004(平成16)年の新潟県中越地震を体験した管理組合理事を中心に「災害時にマンションではどうしたらいいか」を話し合い、防災倉庫を設置しました。備蓄する防災用品は毎年追加するとともに、見学会や防災訓練などで居住者への説明や周知にも取り組んでいます。また、今年に入り新たな取り組みとして、「防災マニュアル」の策定にも着手しました。地上55階建て・650戸と日本初の大規模タワーマンションとして、居住者の安心・安全を守るための“エルザタワーオリジナルマニュアル”に仕上げていく予定です。

防災・防火

10年前から大型防災倉庫を整備。見学会で理解深める

エルザタワー55防災倉庫

コンテナ仕様の防災倉庫は、同マンション共用設備のテニスコート隣の北側イベント広場に、今から10年ほど前にマンション管理組合自治会とで1つずつ整備しました。中に備蓄するのは、簡易用トイレや担架、ガソリン式発電機、投光器、ヘルメット、炊き出し用調理器具、タオルや懐中電灯など各種備品など。設置後も水や食品以外で使用する道具類を中心に、毎年20万円前後の予算で少しずつ追加購入しています。この他にもマンション内の共用スペース数カ所に担架や背負い紐、薬などを常備するようにしました。飲料水については地下貯水槽の水を利用する体制を整えていますが、災害発生から3日間の飲料水・食料は「基本的に各世帯で備蓄する」とのスタンスです。

これら倉庫については、毎年2月頃に開催する防災見学会のコースの1つにもなっています。同見学会はマンション内の防災設備を確認してもらうことを目的に管理会社の協力の基に実施しており、各フロアに設置されている消火栓の位置や自家発電機、給水ポンプ、防災倉庫、防災センター、駐車場の消火設備、屋上ヘリポートなどを見学。毎年40人前後の居住者が参加し、各設備について理解を深めています。中には「1度見ても忘れてしまうし、普段入れない地下や屋上の設備も見ることができるので、子どもと一緒に数回参加している」という居住者もいるとか。イベント的な意味合いも含め、楽しみながら理解してもらうよう心がけています。

防災訓練で炊き出しも。併催イベントで居住者参加取り込む

エルザタワー55低解像度-防災見学会の様子②

毎年7月に実施する防災訓練でも、より多くの居住者に参加してもらうためのイベントを併催しています。昨年実施したときには、消防署の講話や消火訓練、担架・AED体験に加え、防災倉庫に常備している非常用調理器具を使った炊き出し訓練やスタンプラリー、くじ引き大会などを開催。ロビーではマンションに居住する演奏家によるコンサートも開きました。

参加した居住者からは「楽しみながら、親子で防災意識を高めることにつながった」「炊き出し調理や消火器など、実際に使ってみることができてよかった」との感想が多く聞かれました。

また、同マンションでは管理組合理事を中心に、消防署が実施している防火・防災管理講習の受講を推奨しており、参加した場合の講習費用は管理組合で負担しています。これについても、「理事役員になってみて初めて、(防災訓練や講習会の)重要性に気付くことが多い。防災意識を広げるためにぜひ積極的に受講してもらいたい」との考えで進めている防災活動の一例です。

まずは、火災対応マニュアル作成へ。今後は震災・水害対策も準備

エルザタワー55外観

現在同マンションでは、自治防災委員会を中心に防災マニュアルの策定に取り組んでいます。地方自治体やマンション管理会社などさまざまな組織・機関が消防・防災マニュアルを発行していますが、「エルザタワー55は超高層という特殊な事情があるため、そのまま流用できません」。そのため、「同マンション独自のマニュアルを作ったほうがいい」と理事会で話題となり、新たに作成することを決定しました。準備する必要がある項目として火災や水害、震災などが挙がり、第一弾として今年は「火災対応マニュアル」を策定することになりました。同マンションでは今まで居室内火災や駐車場の放火・ぼやなどが発生したことはありませんでしたが、敷地内でも居室内でも発生しやすい災害ということ、居住者からの希望として「今までなかったからこそ何をしたらいいかが分からない」との声も多かったことから、最初のマニュアルとして整備することにしました。

内容としては、55階という超高層マンションで火災が発生したときの各フロアでの避難経路や高齢者や体の不自由な居住者をどう避難させるかといった避難パターンに加え、消火設備の使い方なども盛り込む予定です。「とくに女性や子供の在宅が中心となる平日に災害があった際、どのように皆が避難したらいいかなど、このマニュアルを見て誰もが動けるようなものにしたいと考えています」(自治防災委員会メンバー)。完成は2015(平成27)年夏を予定しており、完成後には住民説明会を開催し、居住者からの意見も聞いていく方針。理事会では、マニュアルを作るという目的だけでなく「作ったマニュアルを通じて居住者同士の話し合いの土台を作りたい、知識のレベルアップを図りたい」という願いも込めています。

そのため、今年7月26日に実施した防災訓練では、マニュアルに不足している点や追加したい項目を抽出することも目的の1つとしました。基本的な初期消火対応として、屋内消火栓設備のうち1人で操作可能な「屋内2号消火栓」を使った消火訓練を実施し、訓練を通じ感じた点や疑問などを居住者から意見として出してもらいました。これら意見もマニュアルに反映していく予定です。

もちろん同マンションには、竣工当初から管理会社が用意している防災マニュアルはあります。ただ「エルザタワー55は超高層という特殊な事情があるため、一般的なマニュアルが使えず、あくまでも参考程度の位置づけ」(管理会社担当者)だといいます。基本的な消防計画や行政への届出などは管理会社を通じて整備・提出していることから、今回作成するマニュアルは管理組合理事会と自治会防災委員会、管理会社と三位一体で作り上げる“エルザタワー55オリジナル”となる予定です。

概要(取材年月:2015年05月)
  • 建物名:エルザタワー55
  • 所在地:埼玉県川口市
  • 階数 :地上55階建て・1棟
  • 総戸数:650戸
  • 竣工年:1998(平成10)年
  • 管理形態:委託管理
  • 管理会社:(株)大京アステージ
  • 総会開催:毎年10月
  • 役員数 :理事26人、監事1人、顧問3人
  • 役員任期:2年(1年ごとに半数改選)