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旧萩中住宅1

よみがえったマンション――住民の強い思いで実現した、建替え(上)

京浜急行電鉄「糀谷」駅から徒歩5分、商店街を抜けた場所に建つ「オーベルグランディオ萩中」は、今から9年前の2006(平成18)年3月に建替えを実施して誕生しました。前身となる「萩中住宅」では、勉強会のスタートから建替え決議が成立するまで10年以上かかり、竣工後も資産価値を維持・向上させる努力を重ねています。現在、築10年目となり大規模修繕工事を控えている同マンションの取り組みと、建替えに至る経緯を改めて紹介します。

その他

まず勉強会からスタート!

旧萩中住宅2

旧萩中住宅(5階建て8棟、368戸)は1968(昭和43)年10月に建築された、東京都住宅供給公社が管理する団地でした。区分所有ではなかったので、管理組合はありませんでした。しかし、1982(昭和57)~1985(昭和60)年に実施した第1次大規模修繕工事で、給排水設備を中心とした老朽化や居住者の高齢化に伴うエレベーター設置の必要性など設備面で不安が生じていたことから、問題発生時の迅速な対応体制整備が不可欠と判断。築20年が経過した1988(昭和63)年、残金を一括で償還し、自主管理体制に移行しました。

その後、第2~第3次修繕期を迎えます。工事を控え共用部・専有部の不具合を調査したところ、改修・修繕するには基礎が弱くバリアフリー対応や防災設備の追加導入も難しいことが判明。そこで1991(平成3)年に建替えを視野に入れた区分所有者による勉強会を開始し、2年後に「再開発検討委員会」を設立。翌1994(平成6)年5月に「建替え準備委員会」を正式に設立し、本格的な検討に着手しました。

全体の84%は賛成。ところが第1回決議は不成立!

萩中住宅概要

その間にバブル崩壊が進み、阪神淡路大震災が起こるなど社会を取り巻く環境が変化したことで建替え計画は一時、遠退きました。地道に勉強会を続ける中で、高齢化の進展によるスラム化や耐震・防災対策が講じられないことへの不安から居住者の機運が一気に高まりました。そこで1997(平成9)年に事業推進コンサルタントとして「シティコンサルタンツ」を選定し、第1次建替え計画案を発表。1999(平成11)年に第2次計画を策定・発表し、翌年に「建替え推進決議」を採択(4分の3特別決議)し、事業協力者として「有楽土地」(現大成有楽不動産)と「長谷工コーポレーション」の2社を選定しました。2002(平成14)年から近隣住民への説明と総合設計申請を行い、同年9月には棟別実施計画案についての個別相談会も開催しました。

ところが2002(平成14)年末に実施した建替え決議は、全体の84%が賛成していたにもかかわらず、8棟のうち1棟だけ5分の4の賛成を得ることができなかったため、旧区分所有法(62条)に基づき不成立となってしまったのです。

その後のコミュニティーにも考慮して全員合意目指し、重ねた話し合い

オーベルグランディオ概要

決議成立に至らなかった理由は、個人の資産面が公になることへの不安や追加費用・引越しなど経済的負担増、所有権の売却先となる分譲会社に対する財務担保の問題、居住者の高齢化や病気といった健康面などの不安が大きかったといいます。

しかし管理組合がシティコンサルタンツや有楽土地、長谷工コーポレーションと練り上げた建替え計画では、萩中住宅で主流だった居室規模44㎡プランについては追加費用の負担なく取得できるなど、所有者に対するメリットや実現可能な提案を盛り込んでいました。コンサルタントによる居住者側に視点を置いた中立的な立場でのコンサルティングや建替え組合にも参画している事業協力者によるきめ細かな仮住まい計画など、専門家による提案・支援を受けながら“全員合意”を目指し協議を継続。反対者に対しては、組合理事や再開発検討委員が個別にその方が納得するまでわかりやすく説明したり、各棟から参加してもらっていた検討委員を中心に棟単位での検討会を何度も開催したりしました。具体的には、容積率が上がって増床したことによって建替え費用が軽減する仕組みをはじめ、計画内容の説明と確認を行うなど、住民が抱いている不安を一つひとつ解消するための努力を重ねました。ときにはコンサルタントに出席してもらい、細かな疑問に中立的な立場で答えてもらうこともあったといいます。

法改正の後押しもありました。2003(平成15)年6月に施行された「建物の区分所有等に関する法律」(改正区分所有法)は、それまでの各棟単位での建替え決議(旧区分所有法62条)から一括建替え決議(第70条、区分所有者・議決権者5分の4以上の賛成)に要件が見直されました。管理組合ではこの改正法施行を見据え、1回目の建替え決議後すぐに臨時総会を開催し、①建替え事業の続行②改正法による建替え推進―を決議。2003(平成15)年8月に実施した2回目の建替え決議は91%の賛成を得て成立し、無事に建替え事業着手に至りました。

1回目の建替え決議で不足したのはたった2票。しかも「まさか自分達の票で不成立になるとは思っていなかった」と否決に回った居住者自身も驚き、すぐに2回目で賛成する意思を表明していました。建替え決議要件が変わったので、1回目の議決数のままでの2回目は成立する見込みはありましたが、建替え後の円滑なコミュニティー形成を考え、全員合意を目指しました。「1回目が不成立となったからこそ組合理事や再開発検討委員による地道な説明、理解が必要だと感じた。住民すべてに理解してもらいたい、全員合意を目指すという考え方でないとうまくいかない」(当時の管理組合理事)ことを痛感したといいます。

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次回は仮住まいの引越しや工事見学会の様子、建替え組合の奔走の状況などを紹介します。
乞うご期待!

To Be Continued.

概要(取材年月:2015年03月)
  • 建物名:オーベルグランディオ萩中
  • 所在地:東京都大田区
  • 階数 :18階建て、2棟(A~D棟+共用施設1棟)
  • 総戸数:534戸
  • 竣工年:2006(平成18)年
  • 管理形態:委託管理
  • 管理会社:大成有楽不動産(株)
  • 総会開催:毎年6月
  • 役員数 :理事10人、監事2人
  • 役員任期:2年(1年毎に半数改選)