引き継ぎにも使える「決議事項ログシート」で、理事会の業務を省力化!
管理組合理事の仕事は多岐にわたります。時には、以前に話し合ったことや決議された内容について調べなければならないことも。そんな時にとても便利な「決議事項ログシート」を理事の1人が提案し、実践しているマンションがあります。備忘録としてだけでなく、理事の引き継ぎ、マンション管理組合の活動内容がわかる資料としても使えるログシートをご紹介しましょう。
5期目に入って、議事録を追うのが面倒に
東急池上線の石川台駅から徒歩2分という便利な立地にある「サンマンションアトレ東雪谷」は、築23年、総戸数48戸のマンションです。管理組合の立ち上げ当初から立候補して理事を務めていた釜石さんは、竣工から5年目になった時、理事会の際に過去の議事録を追うのが面倒になってきたことを課題だと考えていました。
それまでは、話し合いの際に「管理規約の見直しをしたのはいつ?」とか、「来客用駐車場の運用はどうすることに決めたんだっけ?」というように、疑問が出てくるたびに過去の議事録を引っ張り出して、一つひとつ読み込んで拾っていくしかありませんでした。4期分の資料だけでも相当な分量になるのに、今後もずっと増えていくことを考えれば、何か手を打ったほうがいいのは明白。そこで釜石さんは、これまでに総会や理事会で決議されたことだけを集めて、簡単なシートをつくることを提案したのです。
釜石さんの考案した「決議事項ログシート」のつくり方は、とても簡単です。①総会および理事会で決議された事項を1行に要約、②そこに第〇期、総会または理事会回数、開催日を付す、➂分類別にして記録する、というもの。分類は、例えば「理事会運営」「管理費」「修繕積立金」「管理規約」などと分けておけば、その項目においてどのように見直しが行われてきたのかも、一目でわかります。しかも、エクセルで作成しているので、比較的誰でも利用することができるのです。
ログシートが理事会の無駄を省く
「私たちのマンションで行われる決議は、総会や理事会で年間10~20程度。大規模修繕工事のあった時で、年間30以上の決議が行われたことがありました。しかし、議事録ではその時に話し合われたことが時系列に記載されるため、項目別になっていないし検索性が悪い。ログシートの作成は最初こそ4期分をまとめてつくる必要があったので少し大変でしたが、一度つくってしまえばその後は1期ごとにシートにその年の決議事項を足していくだけなので簡単なんです」と釜石さん。
ちなみに、議事録作成の際も途中の経過やその他の意見などは省いて「結論だけを書く」ことにして、できるだけA4で2ページ程度に収まるようにしています。議事録の作成は書記担当の理事か管理会社が行うことが多いものですが、ことのほか大変で「もう理事はやりたくない」と思われてしまうこともあります。簡潔な内容のほうが見やすいことも理由のひとつです。サンマンションアトレ東雪谷では、2ページに収まった議事録を両面印刷して、毎回全戸に配布しているそうです。
「理事会で決議されたかどうかを短時間で判断できる」ことが最大のメリットであるこの「決議事項ログシート」。過去に決議したことを知らずに一から議論をしたり、「過去の検討記録はどこにあるのか?」と探し回ったりするのを防ぐことができます。ログシートで該当項目を見つけたら、その期と回数の議事録を見ればいい、つまり、「目次」の役割を果たしているのです。
引き継ぎ資料、歴史資料、コミュニケーションにも一役
また、マンションの理事は全員が1年で交代するため引き継ぎが大変で、下手をすると新年度第1回目の理事会は、何をしたらいいのか、また、これまで何をしてきたのかもわからず、管理会社フロントマンの話を聞くだけになってしまいます。そんな時にもログシートが役に立ちます。毎年第1回目の理事会では、前期からの「課題引き継ぎ事項」を前期理事長から説明してもらいます。このときに、それぞれの課題について過去にどのような議論がされたのかをログシートを使って確認することで、すぐに議論に入ることができます。これなら初めて理事になった人でも、管理組合の活動状況を把握することができると好評。ログシートが引き継ぎ資料の役割を担っているわけです。さらにログシートには、管理会社のフロントマンと管理員の名前および勤務期間まで記載されています。
マンション管理組合では、周年記念の際に『管理組合活動記録』を発行して居住者に配っていますが、そこにもログシートをそのまま掲載しています。活動記録には歴代の管理組合理事長や主なマンション行事を年表形式で載せているため、結果的にマンションの由来がわかる資料となっているのです。そのため、居住者からも大変好評で、ログシートに記載されている内容が共通の話題になって、住人間のコミュニケーションにも一役買っています。
新しく入ってきた居住者には直近の『管理組合活動記録』をお渡しします。すこし年数が経っている場合もありますが、その中のログシートを見てもらえば、入居者にマンションの現状を知ってもらいやすくなります。「ログシートのポイントは、簡単にわかりやすく。そのためには総会や理事会で議題に上がったものは、しっかり決議をすることが大事です。たとえそれが現状維持や持ち越しという結果だったとしても、しっかりと挙手をしてもらって決議する。それをログシートに蓄積していくことで、流れが把握できるんです。とても便利なので、ぜひたくさんの管理組合でも試してみてほしいと思っています」と釜石さんはおっしゃっていました。
⇒ 当マンションの記事「首都直下地震に備える!エレベーター閉じ込めの救出訓練を実施」はこちら
- 建物名:サンマンションアトレ東雪谷
- 所在地:東京都大田区
- 階数 :10階建て
- 総戸数:48戸
- 竣工年:1997(平成9)年
- 管理形態:全部委託
- 管理会社:(株)長谷工コミュニティ
- 総会開催:毎年10月
- 役員数 :6名
- 役員任期:1年(輪番制)