多世代共生・多用途型のマンションで奮闘するコミュニティクラブ【後編】
JR武蔵浦和駅から徒歩3分という好立地に建つ「武蔵浦和 SKY&GARDEN」。全5棟、総戸数776戸というマンションですが、そのうちの1棟がSOHO室付き住宅、別の1棟がアクティブシニア向け住宅であることから、多世代共生をコンセプトに据え、コミュニティを促進する「オアシスコミュニティクラブ」を立ち上げました。入居前から企画されていた街びらきの「空庭祭(そらにわさい)」が大盛況だったことは、前回ご紹介したとおりです。
コミュニティクラブはイベントが盛りだくさん!
管理組合理事会の下部組織であるオアシスコミュニティクラブ運営委員会では、毎年9月に開催する年間最大のイベントである空庭祭をはじめとして、ほかにも様々なイベントを運営しています。6月には防災イベント。避難訓練に加えて消防署に協⼒を依頼し、消⽕訓練も実施しています。7月には七夕。コミュニティ棟の入り口に用意した短冊に子どもたちが願い事を書き、笹に飾り付けをするほか、浦和フィルハーモニーを招き、コミュニティ棟内にあるアリーナで七夕にちなんだ曲を演奏するコンサートを行います。
8⽉には近くにあるロッテの⼯場⾒学を実施しました。昨年は120名近い参加者があったそうです。9月の空庭祭を経て、12月はクリスマスイベント。子どもたちが飾り付けをしたツリーはエントランスに、中庭にある大きな木には電飾を施して、夕方になると点灯式を行います。七夕の時と同じようにアリーナでのコンサートも。最近、子どもの部と大人の部を分けて行うようにしたことで、大人の部にシニア世代の参加者も増えたそうです。
コミュニティ支援会社の手助けがあればこそ
これだけたくさんのイベントをたった5人の理事で回すことができるのには、訳があります。前回にもご紹介したマンション等のコミュニティ形成支援をする「フォーシーカンパニー」の助けがあるのです。フォーシーカンパニーは、イベントの年間計画策定の際に助言をしてくれるほか、工場見学先のロッテやコンサートをする浦和フィルなどへのアテンド、七夕の短冊やクリスマスのツリーなど、様々な小物等の手配をしてくれています。そのほか、イベント告知やイベント後の報告、オフィシャルクラブや各種サークルの活動報告などを掲載する「コミュニティレター」をフォーシーカンパニーが毎月発行しています。
売主により販売当初から体制作りが計画され、竣工後すぐにコミュニティクラブが立ち上がるというマンションは時々あります。そういった場合、コミュニティ支援会社が間に入って、入居間もない住人のコミュニティを支えることが多いわけですが、たいていは2年契約などになっていて、ある程度コミュニティが自立できるようになったら契約を終了する、という流れになっていることが多いようです。しかし、武蔵浦和 SKY&GARDENでは竣工から5年目となった今でも、フォーシーカンパニーとともにコミュニティ活動を続けています。
「このマンションは、子育て世代がとても多いんです。小さな子どもを育てている働き盛りの世代は、コミュニティ活動の時間を作りだすのが難しい。理事になったらそれぞれの委員会に割り振られるのですが、『オアシスコミュニティクラブ運営委員会はイベントの企画・準備・開催と時間が多く取られるために⼤変』と避ける人が多く、 武蔵浦和SKY&GARDENが⽬指す“⾃⽴”にはまだ遠いのが現状なんです。そのため、現在もフォーシーカンパニーさんに大きく頼りながらイベントを開催しています」と語るのは運営委員長の堀野さん。
管理会社のサポートも重要。今後は課題に取り組む組織づくりを
また、管理会社のサポートも大きな支えになっているそうです。ほとんどのイベントに人手を割いてもらっているほか、空庭祭では焼きそばの模擬店を出店して毎年好評を博しています。もちろんイベント関連だけでなく、マナーに関する注意なども細かく行っていて、「うちは管理会社さんに本当に助けてもらっているマンション」と堀野さん。まだまだ住人のマンパワーが生かせていない部分が多く、管理会社の協力に頼るところが大きい、と話してくれました。
また、せっかく多世代共生型のマンションであるのに、今のところそれをうまく生かせていないとも感じているそうです。アクティブシニア用住宅であるE棟では、単独で新年会や文化祭などのイベントを開催し、こまめに住民同士のコミュニケーションをとっています。一方で、コミュニティクラブが運営するイベントは、子どもや子育て世代向けを対象にした内容が多く、シニア層と一緒にコミュニケーションを図り取り組めるような機会を作り出せていないと言います。
堀野さん自身、委員長になって仕事をしてみて「住民同士のコミュニケーション」に対する考え方が変わったそうです。イベントのために時間を拘束されるのは確かに大変ですが、イベントで喜ぶ子どもたちの顔や住人が交流を深めている様子を見て、コミュニティの大事さに気がついたのです。「私にも子どもがいますが、これからもここにずっと住むことを考えると、子どもたちが育つ場所づくり(このマンションだからこその特別な体験)が大事だと思うようになったんです」。
堀野さんは来年からの取り組みとして、理事のみならずもっといろいろな人が委員会に顔を出してコミュニティクラブの運営に携わる仕組みづくりができれば、と考えています。「そもそも、年間予算約450万円もある組織なのに、理事たち数人でいろいろ決めてしまっていいのか、という疑問が常にありました。参加すると楽しいことだとわかる。今後はできるだけ多くの人にクラブの運営に関わってもらいたいと考えています」と堀野さん。課題を乗り越えて、より成熟したコミュニティをつくることに期待を抱いています。
- 建物名:武蔵浦和 SKY&GARDEN
- 所在地:埼玉県さいたま市
- 階数 :地上32階建てなど・5棟
- 総戸数:776戸
- 竣工年:2016(平成28)年
- 管理形態:全部委託
- 管理会社:(株)日鉄コミュニティ
- 総会開催:毎年3月
- 役員数 :理事21名(輪番制)
- 役員任期:2年(半数改選)