内閣府が選定した「最強の」自主防災会
数多くの災害に見舞われる我が国において、昨今、地域住民が主体となった防災組織の取り組みが注目され始めています。今年度の内閣府「地区防災計画モデル」に選定された「ソフィアステイシア」自主防災会の取り組みを取材しました。
防犯・防災に注力し、自主防災会が誕生
横須賀市東部の東京湾に面した約61haに広がる「よこすか海辺ニュータウン」の一角にソフィアステイシアはあります。2003(平成15)年築、14階建て2棟、13階建て1棟、8階建て1棟の計4棟に309戸、約1,000名が暮らしています。
管理組合の第1期理事長は、就任と同時に「防犯・防災活動」を重点目標に据えました。ニュータウン地区内で当時空き巣被害や車上荒らし被害が続発していたためです。まずは、居住者同士顔を覚えるために住民交流会などを開催し、挨拶・声掛け運動を展開したことで、入居1年後には犯罪被害が激減しました。
翌年には理事会の諮問機関として「自治会設立準備委員会」を設置。2005(平成17)年に住民全員が加入する自治会が設立されました。その際に同時に誕生したのが「ソフィアステイシア自主防災会」です。管理組合と自治会の合同編成組織としての位置づけでした。
自主防災会の肝となるのが、自治会設立と同時に細則を制定し、居住者の詳細な個人情報を世帯別・個人別に自己申告する「居住者台帳」です。この台帳のおかげで救命処置が間に合い、一命をとりとめた人もいて、現在の台帳提出率はなんと96%。災害時要援護者と一人暮らし高齢者の情報は、自主防災会で100%把握しています。
組織形態は役員数が43名(2014(平成26)年度現在)。東日本大震災の際に全館が停電し、高層階の高齢者などに生活物資を支給した際に高校生が活躍したのをヒントに、昨年、中学・高校生によるジュニアレスキュー隊も結成され、現在35名が在籍しています。また、全309戸を11班(およそ30戸平均)の避難誘導班に編成し、班ごとにリーダー、サブリーダーを輪番制で任命。毎年住民交流会や防災講習会を開催して、班内の住民の交流を促しているほか、毎年12月には総合防災訓練を実施しています。
試行錯誤を繰り返しながら、更なる進化を
このように、入居初期から防犯・防災に注力してきたソフィアステイシア。試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ防災備蓄品を増やし、3基もの防災倉庫もつくってきました。自主防災会の運営費用は、管理組合と自治会の年間予算規模(管理組合約8,100万円、自治会約600万円)に応じて分担しています。
事業年度ごとに行う防災への投資(防災資機材設備費)は、150~160万円程度。費用負担割合の内訳は、市の補助金が限度額いっぱいの74万円、管理組合40万円、自治会40万円前後です。建物や設備の耐震性能を向上させるための投資は、マンションの資産維持につながるため全額管理組合の会計から拠出しています。
内閣府「地区防災計画モデル」にも選定され、マスコミに「最強の防災組織」と取り上げられるようになった自主防災会ですが、更なる進化を遂げようとしています。これまでは平常時の対策が整っていれば非常時にも対応できると事前防災(防災資機材の整備や危機管理マニュアルの作成など)に力を入れていましたが、今年度からMLCP(災害時マンション生活継続計画)事業に取り組んでいるのです。
MLCPとは、事後防災に力点を置いた防災計画のことで、具体的には発災時の初動対応や応急対応、在宅避難生活の継続、復旧・復興、マンション生活の再建などを想定しています。このMLCPが策定された後は、来年度から防災組織を①リタイヤ組の男性と専業主婦で編成された平日昼間の災害対応組織と、②会社勤務の現役世代を含む休日・夜間の災害対応組織の二部編成に再編する予定です。
- 建物名:よこすか海辺ニュータウンソフィアステイシア
- 所在地:神奈川県横須賀市
- 階数 :14階建て等・4棟
- 総戸数:309戸
- 竣工年:2003(平成15)年
- 管理形態:委託管理
- 管理会社:双日総合管理(株)
- 総会開催:毎年6月
- 役員数 :14名(理事12名、監事2名)
- 役員任期:2年(1年ごとに半数を改選、理事の再任は妨げず、立候補制を採用)