潤沢な資金と良好なコミュニティが後押し!自分たちでつくった計画にのっとった大規模修繕工事
前回ご紹介したコープ南砂のユニークな長期修繕計画案の作成方法。その計画にのっとって、大規模修繕工事がとうとう始まりました。保守点検や修繕などを通じて付き合いのあった業者に「改修工事提案書」の提出を依頼。それを基につくった長期修繕計画による大規模修繕工事とは、いったいどのようなものなのでしょうか?
建物診断の結果、大規模修繕工事が必要との判断が
総戸数165戸の「コープ南砂」は、1981年に竣工。管理員の受付・巡回業務と清掃員の日常清掃業務を除くすべての管理業務を住人が主体となって行っている自主管理のマンションです。前回お伝えした長期修繕計画案は2011年に作成され、その内容に沿って少しずつ修繕を繰り返してきたコープ南砂ですが、最も大きな工事である外壁塗装工事の周期が2018年で12年を迎えたのを機に、大規模修繕工事検討委員会が構成されました。
構成員は理事会役員の8名に、常設委員会である環境整備修繕委員を足した3名の11名。塗装工事の「改修工事提案書」を提出してくれた日本ペイントに建物診断調査を依頼したところ、前回2005年の工事から12年が経ち、躯体の一部にひび割れ・鉄筋爆裂、外壁塗装仕上げ面のチョーキング・変色、鉄部のさびや塗膜剥離が進行していることが確認され、早期の修繕工事が必要との診断結果となりました。
検討委員会では、これを受けて2019年に大規模修繕を実施することを決定。内容は、建物の外壁をはじめ扉や面格子などの鉄・アルミ部分、構内の壁や駐車場などの鉄部等の塗装です。その他、屋外の階段の床シートの張替えと防火戸の改修、照明器具のLED化、管理事務室等の空調設備の改修などの工事も大規模修繕工事に組み入れました。予算が許す範囲で行う予定です。
急遽臨時総会を開くも、出席者多数で無事承認
外壁塗装工事について検討委員会はまず、数社に見積もりを依頼したいと考えました。また、それらを比較しやすくするためには全く同じ条件を掲げる必要がありましたが、こちら側で「施工仕様書」や「設計価格書」を作成することは困難であることから、アドバイザーを立てることなどを決めたのです。アドバイザーは、前回の外壁塗装⼯事で施⼯監理を委託した会社の社長にお願いすることにしました。
また、それと並行して消費税改定時期の問題もありました。2019年10月から消費税が10%に上がることを踏まえ、何とか値上げ前に着工する必要があります。確認したところ、2018年度内に契約書を交わしておけば、工事が翌年の10月を超えても消費税率8%が適用されるとのことで、3月中に工事契約書を締結することについて承諾を得る必要があるため、検討委員会では急きょ臨時総会を開催することを理事会へ提案しました。この時点では、外壁塗装工事の業者は未定、工事金額も9,700万円の予定ということでしたが、業者の選定は随時進めていること、5月の定期総会以降に発注すると総額で200万円程度の増額となってしまうことなどを説明し、無事承認されました。この臨時総会には143人が出席(委任状含む)、全体の約87%の出席率で、関心の高さと素晴らしい協力体制があることがうかがえます。
潤沢な資金と住人の協力は、日ごろのコミュニティ活動の積み重ね
さて、アドバイザーに依頼して作成してもらった「施工仕様書」と「工事見積書」は、単価や工事金額の部分を白抜きにして、そこを埋めてもらう形式にしたことで、大変比較検討がしやすくなりました。全部で4社に見積もりを依頼し、それぞれの内容をしっかりとヒアリング。工事内容と金額のバランスやアドバイザーからの助言なども踏まえて、当初より屋外の階段床シートの張替えをお願いしていた建装工業に発注すること決まりました。
ところで、塗装工事以外の改修工事については、これまでの工事履歴を踏まえた専門業者との随意契約により選考。当初の予定に駐輪場の電灯配線の改修工事を加えて、総額1億円強となりました。工事費用については、当初より同程度の金額を予定したため、予算内に収めることができました。
ちなみに、コープ南砂の管理費は、管理組合費と修繕積立金を含めて全戸一律で月16,600円。そのうち8,700円が管理組合費、7,900円が修繕積立金という割合になっています。月7,900円という積立金では心もとないと思われるかもしれませんが、実際に修繕積立金から今回1億円強を支出したとしても残高が1億円、また別に1億円は「すまい・る債」で運用と、大変潤沢です。たたし、今回の消費税2%アップに合わせて10月から月16,600円を18,000円に増額しました(管理費9,500円、修繕積立金8,500円)。それでも十分安い方ですが、値上げというととかく反対されがちなところ、コープ南砂ではほとんど反対意見は出ずに無事可決されたとのことです。
「急遽臨時総会などを開いても住人がさっと協力してくれるのは、普段のコミュニティ活動のおかげ。資金がうまく回っているのは、みんなが日ごろからできることは自分たちでやってきたこともあるし、清掃デーなどの際に住人に協力してもらうことで管理費が抑えられているから。やっぱり日ごろのコミュニティ活動が一番大切です」と小林さん。築40年のマンションでは、今後も様々な修繕工事が必要になってくると思いますが、コープ南砂は100年マンションを目指してこれからも盤石な管理運営を続けていくことでしょう。
- 建物名:コープ南砂
- 所在地:東京都江東区
- 階数 :14階建てなど
- 総戸数:165戸
- 竣工年:1981(昭和56)年築
- 管理形態:自主管理(一部委託)
- 管理会社:─
- 総会開催:毎年5月
- 役員数 :管理組合8名、自治会13名
- 役員任期:管理組合1年(毎年4人が交替)、自治会1年(輪番制・総入れ替え)