消防署やボーイスカウトと協力!サンマの塩焼きも大好評の、大規模マンションの防災訓練
地震や豪雨など、数十年あるいは数百年に一度といわれるような災害が各地で発生することが増えた昨今、マンションでは、防災についてやらなければならないことが数多くあります。防災訓練はその最たるもの。実際に災害に見舞われた人たちが「防災訓練をしていたのが役に立った」とコメントしていることも多々あり、特に東日本大震災以降、積極的に活動するマンションが増えています。今回は、秋の味覚を上手に利用した防災訓練についてご紹介します。
秋の味覚を生かしたユニークな防災訓練
千葉県市川市にある「クレストシティタワーズ浦安」は、総戸数609戸のマンションです。9月の終わりに行われる防災訓練が、秋の味覚「サンマ」を活用したユニークな訓練だと聞いて、お邪魔しました。
クレストシティタワーズ浦安では、以前レポートした2月の防災訓練のほか、毎年9月にも防災訓練を行っています。内容や規模としては、秋の防災訓練の方がメインで、毎年2、300人が参加している本格的なものです。お天気が心配されていましたが、朝には雨が上がり、さわやかな秋空が広がりました。
敷地が広く、2棟ずつA・B街区に分けられているクレストシティタワーズ浦安。朝10時、街区ごとにかかる防災訓練開始の館内放送を合図に、各戸は防災マグネットを玄関ドアに貼付。それを防災委員が棟ごとに見回り、集計します。その間、エントランスでは、消防による通報訓練が行われていました。管理事務室の電話を使い、消防に火事発生やけが人の有無などを通報する訓練です。
さらに中庭に移動すると、さまざまなテントや機材が用意されていました。本部の受付テントにはスタッフが並び、参加者の確認と食べ物の販売を行います。それと向かい合わせに張られたテントはボーイスカウト市川第五団のもの。子供たちを飽きさせないための遊び道具やポップコーン製造機が用意されていました。
消防署だけでなく地元のボーイスカウトも協力
まず中庭で行われたのは、消防による消火器を使った初期消火訓練。そして、大きなテントの中に煙を発生させ、その中を歩く「煙体験訓練」も行われました。煙の中では前を見ることができず、姿勢を低くして進まなければいけないことがよくわかります。それから気道に詰まった異物を除去する応急手当訓練が行われました。これは災害時だけでなく、小さいお子さんがいる家庭などでも役に立ちそうです。
ボーイスカウトのテントでは、“ぼうさい”絵本の読みきかせや“じしん”紙芝居が始まり、続いて、災害に関連したクイズや新聞紙食器のつくり方講習などが行われました。実際に自分がつくった紙食器にできたてのポップコーンを入れて食べ、使い心地もしっかり試すことができました。
防災訓練に消防署が協力することはあっても、ボーイスカウトの参加はあまり聞いたことがありません。実は、防災委員長の田邊さんがボーイスカウトのリーダーとして所属しており、息子さんも所属している縁で、マンションの防災訓練に参加してもらうことになったようです。ちなみに、田邊さんは地元の消防団にも所属。消防との連携も、防災訓練を始めた6年前から続いています。
ボーイスカウト市川第五団の小泉さんは、「ボーイスカウトの活動で培った技能と知恵を用いて、この防災訓練に対してできる支援を行うことが目的。小さいお子さんが多いマンションなので、親しみやすいプログラムを考えました」と言います。この団に所属しているマンション内のお子さんも数人いて、防災訓練を通じて団の活動を知ったお子さんが入団したというケースもあったそうです。
秋といえば「サンマ」、サンマといえば……防災訓練!
中庭全体にいい匂いが漂い始め、参加者が楽しみにしているサンマの塩焼きが提供されました。クレストシティタワーズ浦安の中庭には、元々BBQコーナーがあり、そこを利用してスタッフたちが手慣れた様子で次々にサンマを焼くのです。230匹仕入れたというサンマは1尾200円で販売。その他、ジュースや唐揚げなど、すべて手ごろな値段で売られています。
ところで、サンマやビールを手に談笑している人たちをよく見ると、着ている服に数字と名前が書かれた色付きのガムテープが貼られています。これは受付の際に配られるもので、コミュニケーションを促進するため、棟ごとに色分けしたテープに部屋番号と名前を書いてお互いをもっと知ってもらうための工夫だということです。
「冬の防災訓練では最後に芋煮を提供していますが、炊き出し訓練なので無償。秋の訓練ではサンマを提供していますが、これはみんなの楽しみのためなので、材料代くらいは出るようにお金をいただいているんです」と田邊さん。エレベーターで出会う人に「そろそろサンマの季節ですね~」と声をかけられることもあるそうで、「みんなが楽しみにしているのを感じる」と言います。秋が来るとサンマを思い出し、サンマを思い出すと必然的に防災訓練があることを思い出す、ということで、サンマが訓練参加を促すポイントになっていることがわかります。
ちなみに、防災訓練を運営する防災委員会は全部で13人。5月くらいから話し合いをはじめ、仕入れ班・外部団体との折衝班など手分けして取り組みます。委員の家族を含め、ボランティアスタッフの参加も多く、当日のテント設営から手伝ってくれています。経費は、予算の30万円をあらかじめ仮払いでもらっておき、材料の仕入れ等に15万円弱、当日の売上げが約7.5万円で、計約7万円です。
「毎年盛況な防災訓練ですが、まだ一度も参加したことがないという人もいる。なかには、参加したくても、習い事や部活等で行けないという人たちがいて残念ですね」と田邊さん。理事長を務める秋元さんも「実は今回初めて参加した」と言います。「理事をやってみて、防災訓練の意義や準備の大変さなどを知りました。今後は理事を辞めても訓練には参加すると思う」と話す秋元さんに、「逃がしませんよ~」と田邊さん。「秋元さんのように、理事を経験することで活動を知り、もっと積極的に参加する人が増えてくれれば」と田邊さんは語ってくれました。
☆☆☆
次回は、共用部分に置かれた私物の撤去に奔走する“私物撤去マナー向上委員会”の活動の様子をご紹介します。
- 建物名:クレストシティタワーズ浦安
- 所在地:千葉県市川市
- 階数 :地上20階建て
- 総戸数:609戸(4棟)
- 竣工年:2006(平成18)年
- 管理形態:全部委託
- 管理会社:大和ライフネクスト(株)
- 総会開催:毎年5月
- 役員数 :18名
- 役員任期:1年(輪番制)