初の女性理事長就任時に、大規模修繕工事が急務に! トラブルを乗り越えて、高まった団結力【前編】
みなさんのマンションでは、どのように理事長を決めていますか? 申し送り、くじ引き、なかにはジャンケンで決めるところもあるかもしれません。また、理事となる区分所有者は男性が多いこともあり、理事長に選任されるのは男性が多いようです。今回は、初の女性理事長となったその年に大規模修繕の話が持ち上がり、周囲の協力を得ながら任務をやり遂げた理事長の事例をご紹介します。
副理事長を決めた「あみだくじ」
埼玉県の南西部、西武池袋線「入間駅」のロータリーに降りると、高台に白いマンション群が並んでいるのが見えます。全23棟(内、分譲16棟、総戸数429戸)の「入間駅前プラザ」です。ロータリーにある歩道橋を上ると、そのままこの大規模マンションにアクセスできる道が続いています。車道を歩くことなく駅にアクセスできる便利な立地から、1987年の竣工から現在までずっと人気を保ち続けているマンションです。
マンションは、中央にある道を挟んで1~8号棟が「第一管理組合」を、16~23号棟が「第二管理組合」を構成しています(他は賃貸棟)。第二管理組合はもともと管理会社に管理業務を全部委託していましたが、ある時から「できるだけ自分たちで管理しよう」と、週3回の管理員業務と出納業務のみを部分的に外部に委託し、あとは管理組合で自主管理をしていく形を選択しています。そのため、住人同士のコミュニティも成熟しており、餅つき大会などのイベントのほか、植栽管理をするボランティアのグリーンクラブなどが活動しています。
今回ご紹介するのは、8棟210戸の第二管理組合の理事長を経験した女性、中澤さん。2011年春、輪番制で決まった次年度の理事たちの初会合で副理事長を決める際、なかなか手が上がらず「では、あみだくじで決めてはどうですか?」と提案したのが中澤さんでした。
「なかなか決まらずに過ぎていく時間に耐え切れず、提案したんですが、こういうものは言い出しっぺに回ってきてしまうものなんでしょうか……」と中澤さん。結局あみだで副理事長のくじを引いたのは、提案した本人だったのです。ちなみにこの管理組合では、副理事長は次年度の理事長を務めるというルールがあり、この年は、くじを引き当てた人が副理事長をやり、翌年に理事長を務めることになったのです。
副理事長・理事長を務める年に、長男・次男の受験が重なり、さらにはご主人が単身赴任中だったという中澤さん。大役を果たすことはできたのでしょうか?
女性理事長の選出に苦い過去。周囲がサポート体制に入る
ところで、この第二管理組合で女性が理事長に選任されるのは今回が初めてのことでした。実は以前にも、女性があみだくじで副理事長を引いたことがあるのですが、その人は「できません」と泣き出し、完全拒否。結局引越してしまったという苦い過去があり、選任にあたってはできるだけの配慮をしてきたという経緯がありました。
当時から管理組合の活動に長く関わっていた新井さんは「えー、なんであみだなんてやっちゃったの? と思いましたよ」と話します。中澤さんとはもともと顔見知りだった新井さんは、彼女が副理事長になったという話を受けて、次年度も理事として残ることに決めたそうです。「また『やめる』なんていわれちゃったら困るからね。少しでも力になろうと思って」と笑います。
「息子の学校でPTA活動をやったことがありますが、その時も、多少のトラブルはあったけど、結果的にメリットの方が大きかったんです。ママ友がたくさんできたし、色々な情報は手に入るし。だから副理事長も覚悟を決めてやってみようと思った」と、中澤さんは副理事長を引き受けた時の心境を語ります。新井さんをはじめ、経験豊富な男性陣がバックアップを約束してくれたことも、前向きに考えることができた一因でした。
消費税増税の話から、急きょ大規模修繕を前倒しに!
中澤さんが副理事長になった2011年は、数年後に予定していた2回目の大規模修繕工事のための「長期修繕計画検討委員会」が発足する年でした。コンペ方式でコンサル会社を決め、長期修繕計画について話し合ったところ、具体的な修繕項目について未決定の部分があることがわかり、計画を練り直す必要が出てきました。また、工費をざっと計算してみると、2億数千万円の費用がかかることもわかりました。
さらにその時、3年後の2014年に消費税が5%から8%に上がるという話が出ていました。もしも消費税が8%になってから工事をすると、3%の税金分だけで数百万円の差が出てしまいます。どうせ近いうちにやる工事なら、税金が安い今やった方がいいということで、急きょ、修繕工事を2014年までに済ませることになったのです。
大規模修繕時は、修繕委員会はもちろんですが、理事にも負荷がかかるのが実情です。中澤さんの場合は当初「大規模修繕はまだ先だから」と聞いていたそうです。それにもかかわらず、はじめて副理事長を務め、翌年、自動的に理事長になったとたんに突然の大規模修繕宣告……。右も左もわからない理事長としての業務に加え、大規模修繕委員会にも参加することになってしまったのです。
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右往左往の新理事長。後編では、急ピッチで進めた修繕計画の経緯と、まさかのトラブル発生についてご紹介します。
To Be Continued.
- 建物名:入間駅前プラザ(第二管理組合)
- 所在地:埼玉県入間市
- 階数 :地上5階建て
- 総戸数:210戸(8棟)
- 竣工年:1987(昭和62)年
- 管理形態:部分委託
- 管理会社:日本総合住生活(株)
- 総会開催:毎年5月
- 役員数 :12 - 14名
- 役員任期:1年(輪番制、再任は妨げない、理事長・監事ら数名が留任)