悩みの種だった近隣会社の騒音・安全問題。勇気を出して交渉したことで、今では協力関係に!
マンションでも戸建て住宅と同様に、近隣の住民や会社などとよい関係を築くに越したことはありません。しかし、そのような住民・会社に困った行動や問題点があったら……? 黙って我慢するべきなのか、抗議すべきなのか、迷ってしまうものです。
トラブルに対して誠意をもって話し合ったことで、問題を解決したマンションがあります。
長年の懸案事項。騒音や安全上の問題に手が打てず……
多摩川に近い大田区内にある総戸数26戸のマンション「コスモ多摩川ラミューゼ」。最寄り駅から徒歩7~8分と程よい距離で、良い環境のマンションです。26戸という規模もあって住人同士の距離は近く、年に数回バーベキュー大会や音楽会などを開催しているそうです。
ただ、長年懸案になっている問題がありました。それは近隣問題です。コスモ多摩川ラミューゼは準工業地域に立地していることもあり、道路の反対側には建設機器のレンタル会社があります。建設機器をレンタルするためにトラックなどが次々とくることから、エンジン音、バック時の警告音、車を誘導する声などが住人の居住環境を阻害していたのです。
また、道路沿いに機器を積み込む車が並んだ場合、見通しが悪く、お年寄りの外出や子どもの通学時に不安がありました。道が狭く、ガードレールも設置されていないので、もしも死角から子どもが飛び出してきたら大変危険です。さらに、夕方になると、返却されてきた建設機器を洗浄するため、騒音に加えて水も飛び散ります。マンションの住人はそれぞれに日々悩んだり困ったりしていて、何度も理事会の議題に挙げられていたそうです。しかし、結局いつも行動を起こすことなく終わっていました。
このまま我慢すべきか、勇気をもって交渉するか?
このマンションで10年ほど理事長を続けている是近さんはいいます。「私がここに引越してきたのは15年くらい前なので、それ以前のことはよくわからないのですが、レンタル会社はマンションが建つ前からあったと思います。マンションを買ったときはわからなかったけれど、実際に暮らしてみるといくつかの不都合が出てきた、ということです」。
こういう時、どちらかというと私たちは抗議をしてもめるより我慢をしてしまう傾向があります。このマンションの場合も、個々人が我慢をし、それでも気になるので理事に話し、理事会で取り上げるもやはり我慢をするという方向で処理をしてきたのです。「多分、何となく“こわい”という思いがあったんだと思う」と是近さん。いざ交渉しよう、となるとみんな尻込みしてしまっていたそうです。
しかし、このままでは住人の安全や快適な生活が脅かされると、是近さんたちは立ち上がりました。理事会で話し合い、「騒音削減、安全活動などの推進についてのお願い」とする要望書を作成。理事3名でレンタル会社の代表を訪ね、協力を要請することにしたのです。
要望書の内容は、「路上での機器の積み込みや逆走等に対する安全対策」「騒音の低減」が主です。最後に「一般マナーやルールを重視して、安全を重視した地域と共栄共存できる事業・営業をお願いします」と付け加えることも忘れませんでした。一方的に抗議するのではなく、会社の営業活動に理解を示しつつ、あくまでもマナーとしてお願いをするという形をとったわけです。会社の代表と総務部長が話を聞いてくれ、「善処します」という返事をもらうことができました。
問題が改善したうえ、バーベキューにも招かれる仲に!
それから1ヶ月ほど経ったある日、レンタル会社から「来てほしい」と要請がありました。理事が揃って訪問したところ、レンタル会社の社内で毎週ミーティングを開き、どのように改善したらいいのか考え、その内容を一つひとつ説明してくれたのです。
路上駐車をしていたレンタル機器を積み込むための車両を、敷地の奥の広い場所への駐車に変更し、洗浄等もそちらで行うことになりました。最も頭が痛かった騒音問題は、社員の方それぞれの努力等によって相当改善されたそうです。道路には「飛び出し注意」の看板も設置してくれ、「これからも何かあればすぐに言ってください」との言葉も。その真摯な対応に理事たちは驚いたのでした。ズルズルと先延ばしにしていた「こわいから」という不安は杞憂に過ぎず、まさに「案ずるより産むがやすし」だったわけです。
それからは、是近さんなど理事会メンバーは会社の人たちと顔見知りになり、顔を合わせれば挨拶をする間柄になりました。それだけでなく、マンションのバーベキュー大会や音楽会、総会など、住人が大勢集まる時に使用するテーブルやいすなどを、会社が貸出してくれることも。夏には理事たちが会社のバーベキューに招待され、何人か参加させてもらったこともあるそうです。
住人からは「飛び出し注意の看板で安心感が増し、騒音も少し静かになった」といった声が聞こえ、お向かいの会社の誠意を全員が感じることができました。「伝わった、ということがとても大事。筋を通してきちんと話せばわかってもらえる。マンションで何か問題が発生した場合、こわいとか無理だろうとかいってうやむやにしたり我慢したりしていてはダメなんです」と是近さんは話してくれました。
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次回は、エレベーターの交換が居住者同士の絆を深めたエピソードをご紹介します。
- 建物名:コスモ多摩川ラミューゼ
- 所在地:東京都大田区
- 階数 :地上7階建て
- 総戸数:26戸
- 竣工年:1988(昭和63)年
- 管理形態:全部委託
- 管理会社:大和ライフネクスト(株)
- 総会開催:毎年9月
- 役員数 :4名+監査1名
- 役員任期:1年(再任は妨げない)