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手作りの「かわら版」が、理事会と居住者のコミュニケーションを促進【前編】

マンション管理組合を運営していく中で、理事会の活動を所有者や居住者に知ってもらう機会は貴重なもの。しかし、実際は総会くらいしか意見交換の場がないという管理組合がほとんどではないかと思います。当サイトの「マンションいい話コンテスト」で2018年のグランプリを獲得した『かわら版って、いいよ!』は、かわら版を発行することで居住者が理事会への理解を深めた好事例。受賞作品の執筆者であり、かわら版の編集を担当している髙橋さんにお話を伺いに、新潟のマンションにお邪魔しました。

その他

総会紛糾でかわら版発行を決意。「公正な事実を書くことが大事」

P2040062「ダイアパレスシアース万代」は、新潟県新潟市、新潟駅から徒歩約10分の場所に立地する、築24年のマンション。総戸数は391戸と、同市の中でも規模が大きい方のマンションだそうです。広報部会に在籍する髙橋さんは、4年前から「かわら版」の編集を理事会から任されています。自ら立候補して編集を担当することになったいきさつは、「マンションいい話コンテスト」の原稿にも詳しく書いてありますが、総会に参加して問題意識を持ったことに端を発します。

 

7年前、大規模修繕工事の臨時総会で、それまでに委員会などから詳細な説明がされていたにもかかわらず、すべての前提をひっくり返すような質問があり、会場が静まり返りました。その時、一人の出席者が「もう、黙らっしゃい!」と一喝し、みんなが拍手喝采をしたとのこと。髙橋さんは、この時に「資料をもっと簡単な形で都度出すようにしていたらよかったんじゃないか」と考えたそうです。そもそも資料に目を通し、説明をきちんと聞いていれば総会の場で根本的な話になるはずもないのですが、分厚い資料に目を通すのは誰でも骨が折れるもの。理事会の活動を報告している広報誌に改善できる余地があると気づいたのです。

 

それから4年、髙橋さんは現在もかわら版の制作を続けています。かわら版の内容は、基本的にその月の理事会で話し合いが持たれたことをダイジェストとして掲載しています。「かわら版は書き手の姿勢が大切。公正な事実だけを書くように心がけています。人間だから時には間違えることもありますが、その時は必ず次号や号外で修正をすることにしています」と髙橋さんはいいます。

 

居住マナーに問題意識。モラル低下に一石を投じる

P_20181130_102509_vHDR_On_p実は、理事会が発行するかわら版は以前から存在していました。しかし発行頻度がまちまちで、内容も結論しか書かれておらず、そこに至る経緯は一切わからなかったそうです。髙橋さんが関わるようになってからは、だいたい年に6回、お知らせが多い年には15回もかわら版を制作しています。

理事会に7年在籍し、現在理事長を務めている江島さんは、「今は理事会があるたびにかわら版を発行してくださるし、話の流れも書いてくれるので、今月の理事会ではどんな話し合いをして、どんなことに時間を割いて活動しているかということがよくわかるんです。だから、住人の方が理事会のことを理解してくれていて、すごく助かります」と話してくれました。

 

広報部会は髙橋さんのほかにもう1人いて、印刷などの作業を担います。出来上がったものは理事長と副理事長、広報部会の2人、管理会社のフロントマンの5人が毎回目を通し、記事に関連する人が登場する場合はその人にもチェックをしてもらうようにしています。もちろん、理事会の議事録は管理会社が作成し、誰もが閲覧できるようになっているのですが、複数の人たちがしっかりチェックしたかわら版を読めば、議事録を読まなくても管理組合の動向がよくわかります。

 

「それまでは居住者の間であいさつもなく、規則が守られていない場面が多々あった」という髙橋さん。共用部に出前のどんぶりが放置されていたり、不審者がうろうろしたりなど、衛生面、治安面にも問題があったそうです。「だんだんダメになっていくマンションは、人付き合いがなくモラルが低下しているといいます。このマンションも、人がどんどん入れ替わり、モラルがなくなっていっているように感じていました。そういうところから変えていきたかった」と髙橋さん。雑誌などで特集されるマンション関連の記事にも必ず目を通し、マンションでの暮らし方について日々勉強するようにしているそうです。

 

盛りだくさんな内容で、記事を心待ちにする人が続出!

図1髙橋さんが手がけるようになってからのかわら版に目を通すと、理事会で話し合われたこと、理事会からのお知らせ、居住者の動向(住んでいる人や空き室の数、駐車場の空きなど)、その月の作業予定、管理費の未収状況、その他マナー等に対する注意喚起、髙橋さん自身が感じたことなど、その内容は実に多岐にわたります。管理員室の前には「かわら版」と書かれた投書箱があり、誰でも自由に投書をすることができるようになっています。書かれた内容はすべて理事会で精査し、載せられる範囲でかわら版にも掲載するようにしているとのこと。内容が盛りだくさんなのもうなずけます。

 

「あいさつする人が増えたことを実感している」と髙橋さん。モラルの低下に関しても、ごみの捨て方やバルコニー・共用部でのマナーなどを繰り返し掲載することで、今はずいぶん改善されているそうです。鮮やかな黄色い用紙を使って発行しているかわら版ですが、「黄色い紙が入っているとすぐに読んでいるのよ」、「今度はいつ出ますか?」など、直接声をかけてもらうこともあるそうです。「楽しみにしてくれる人がいると励みになる」と元気に笑う髙橋さん。今後も精力的に記事を書いていきたいと話してくれました。

 

☆☆☆

後編では、「かわら版」の具体的な活用方法や、所有者たちに必要とされる理由をご紹介します。

 

To Be Continued.

概要(取材年月:2019年02月)
  • 建物名:ダイアパレスシアース万代
  • 所在地:新潟県新潟市
  • 階数 :地上14階建て(ドレーンパイプ工法)
  • 総戸数:391戸
  • 竣工年:1995(平成7)年
  • 管理形態:全部委託
  • 管理会社:コミュニティワン(株)
  • 総会開催:毎年3月
  • 役員数 :14名
  • 役員任期:2年(半数改選、継続可)