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「マンションを住人で経営」するため、管理組合の法人化に成功!ITツールの上手な活用も

マンションの規模が大きくなれば、扱う予算も大きくなるもの。管理組合の理事長になったことのある人は、通帳の金額を見て驚いた経験があることでしょう。管理組合理事長は心身ともに負担も多く、大変なイメージがつきまといます。理事長の負担を軽くするため、管理組合の法人化に踏み切ったマンションの事例をご紹介します。

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理事長の負担の重さに違和感。第1期の理事長が立ち上がる!

図1-1「ザ・パークハウス横浜新子安ガーデン」(以下、ザ・パークハウス横浜新子安)は総戸数497戸の大規模マンション。築3年という新しいマンションながら、共用施設の用途見直しや機械式駐車場の一部平置き化など、様々な改革を行ってきたのは前回ご紹介した通りです。

 

4年目となる今期は、前期から取り組んできた「管理組合の法人化」を成功させました。そのきっかけとなったのは、現在の理事長である林さんが“レジェンド理事長”と呼ぶ1・2期理事長の野邨(のむら)さんが感じていた違和感でした。「これだけ大きなマンションとなると非常に大きな額のお金が動きます。その責任が理事長に集中し、何かトラブルがあった時に個人が前面に出ることになる。裁判沙汰になった事例を見ても、理事長の個人名が出ることもあり、これでは負担が重すぎるのではと思ったんです」と野邨さん。

 

マンション管理適正化法では、「管理費等の保管口座は管理組合名義とし、その口座に保管されている金銭は管理組合の責任において管理する」とされており、口座の印鑑は管理組合が管理することになっています。理事長が印鑑を持っているケースも多く、金額が大きければ大きいほど、心理的な負担も大きくなります。今後理事長になる人に同じ負担を背負わせることにも疑問を感じたといいます。

 

そこで野邨さんは、第3期の理事会で管理組合の法人化を提案。管理組合法人となることで、万が一、訴訟などがあった場合にも理事長個人ではなく、管理組合法人として対応できるようになるなど、メリットがあると考えたのです。

 

法人化とともに、マンション内に自治組織を発足

図2また、ザ・パークハウス横浜新子安では、マンション全体で町内会と関わっていこうという考えから、自治組織を立ち上げました。それまで町内会におんぶにだっこであった地域との関係性を、マンションとして責任を持って対応できるようにすることが目的です。というのも、ザ・パークハウス横浜新子安は、敷地内に地域の一時避難場所や交流施設、認可保育所、学童保育施設などが設置されていることもあり、地域との関係性をより密にしていくことが求められるのです。そのため、管理組合、居住者、管理会社が一体となり、これまで培ってきたコミュニティ力で地域とのつながりをより強固なものにしていく必要があったのです。

 

管理組合の法人化と自治組織の立ち上げを両輪として第3期の総会にかけると、大きな問題もなく無事成立。熱心な理事たちと、毎月発行する『広報紙』や理事会議事録のまとめ『理事会だより』の作成・配布などのサポート業務に尽力してくれる管理会社、そして住人の協力のおかげで、法人化という大きな壁をたった3年で乗り越えたのです。

 

ITツールを活用して、業務をスリム化

OLYMPUS DIGITAL CAMERAまた、ザ・パークハウス横浜新子安は管理組合全体でITツールを活用し、運用業務を行っていることも特徴です。1期目の理事たちは、当初理事会のやり取りをメールでしていました。しかし、誤送信などのリスクもありITツールの利用を検討。管理組合の業務に特化したwebサービスを導入することに決め、まずは理事会メンバーのみで試験的に使い始めました。

 

利用してみると、理事会の日程調整や出欠確認、議事録や理事会の資料も保存でき、情報共有がスムーズに行える、時間帯を気にすることなくいつでも連絡を入れておけると好評で、翌年から管理組合全体での導入をスタート。497戸中400戸ほどが登録をし、毎月200戸がログインしているそうです。ページビューは毎月約1万回以上、30~40代のファミリー世帯が中心のマンションであるため、パソコンやスマホを使っての連絡などに抵抗感が少ない人が多かったことも、導入を後押ししました。

 

実は、熱心な理事会だけに情報共有をとても重要と捉えていましたが、反面「配布物が多すぎる」という声も上がっていたそうです。広報紙などはwebサービスのサーバー上に保管して、紙の掲示物で理事会・管理会社から告知している内容と同等レベルの情報を、住人がパソコンなどから閲覧できるようにしました。将来的にはペーパーレス化を目指しているそうですが、パソコン等が苦手な住人のために広報紙など必要な書類については、書面での全戸投函も実施中です。

 

「今回の自治組織や機械式駐車場の検討にあたってのアンケートなども、webサービスを活用しました。パソコンやスマホから回答ができ、集計も一気に行えます。共用施設の予約やイベントのお知らせ、イベントの際のボランティアを募集するのも、ITツールを駆使したんです」と林さん。マンション内で行われる防災訓練でも、住人の安否確認やマンションの被害状況の把握などでITツールが大活躍。毎年多くの議題を抱え、様々な業務をこなしていかなければいけない理事たちの作業効率をアップさせるのに役立っているそうです。

 

管理組合の法人化を無事済ませ、今後は管理組合法人として活動することになるザ・パークハウス横浜新子安。「最近“住人が経営するマンション”がキーワードになっていますよね。私たちもマンションを経営していく感覚で、みんなで協力しながらよりよいマンションにしていきたいと思っています」と林さんは語ってくれました。

 

 

ザ・パークハウス横浜新子安ガーデン管理組合法人の公式ホームページはこちら!

http://tph-shinkoyasugarden.com

 

概要(取材年月:2018年07月)
  • 建物名:ザ・パークハウス横浜新子安ガーデン
  • 所在地:横浜市神奈川区
  • 階数 :地上10階・地下1階建て
  • 総戸数:497戸
  • 竣工年:2015(平成27)年築
  • 管理形態:全部委託
  • 管理会社:三菱地所コミュニティ(株)
  • 総会開催:毎年1月
  • 役員数 :18名(昨期まで15名)
  • 役員任期:2年(半数交代、最長4年、立候補者がいなければ輪番制)