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団地から生まれ変わったマンションで、新・旧住人のコミュニティが花開く!(2)

昭和46年に竣工した調布市の団地が、建替えにより美しいマンションに生まれ変わりました。入居開始から2年が経過したいま、同マンションでは活発なコミュニティが育まれています。建替え前から居る住人と、全く地縁のない場所からもやってくる新住人。世代も家族構成も異なる居住者たちが、同じマンションに暮らす仲間として新しいコミュニティを築いていくために、管理組合が奮闘した様子をお伝えします。
※建替えの記事はこちら

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一度分断されたコミュニティが、建替えを機に生まれ変わる

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総戸数331戸の「アトラス調布」は、2年前に建替えをして新しく生まれ変わったマンションです。建替え前の「調布富士見町住宅(総戸数176戸)」は、昭和46年竣工。当時は自治会の催しが盛んで、スイカ割り大会やソフトボール大会など行事もたくさん行われていました。しかし、団地に住む人が高齢化し、少しずつ行事も縮小。2017年8月まで管理組合の理事長をしていた多田さん(現 副理事長)が、12年前に建替え前の団地に入居したときは、自治会はほとんど活動していなかったそうです。

 

「私は途中から団地に引っ越してきたので、新しい入居者ということで自治会役員がまわってきました。でもその頃の自治会はただ会費を集めるだけだったのです。せっかくの交流の場がもったいないですよね」と多田さん。

建物の老朽化や住人の高齢化など、様々な課題を解決するために実施された建替えでしたが、新しい建物が竣工した後のコミュニティについては、どのようにすれば皆が安心して楽しく暮らしていけるのかという課題が残っていました。

 

建替え前から居た住人は高齢者、建替えてからの住人は若いファミリー世帯が中心。従来からの住人は顔見知りが多いためコミュニティの土壌は残っていましたが、長い間活動していなかったため一度分断された形になっていました。また、新しく入居した住人は調布に住むのが初めてという人も多く「知り合いがいないのでさみしい」という声も聞かれました。コミュニティの必要性を痛感した多田さんは、管理組合主導でコミュニティを支援することに決めました。

 

管理組合が主導した5つの会とは?

 

管理組合が主導したり、設立に際して支援したりした集まりや団体は以下の5つです。

 

33*ひだまりサロン「杜と光のサロン」……マンション内の共用施設を利用して行われる茶話会で、毎月第3木曜日に開催。マンション住人の有志7名がスタッフとして参加し、調布市社会福祉協議会からの助成金で運営している。マンション住人だけでなく、近隣の住人の参加も受け入れている。

 

*アトラス調布高齢者クラブ「はなみずきの会」……建替え前から要望があり、建替えを機に結成。マンション住人に限らず、調布市の住民で60歳以上であれば誰でも入会でき、現在会員数は68名。社会奉仕活動(公園清掃)、健康増進活動(ウォーキング)、趣味のサークル活動として、囲碁・将棋、絵手紙、手芸、俳句・川柳、フラダンス、麻雀、カラオケの7つのサークルがあり、各々が興味のあるものに参加する。本会は調布市老人クラブ連合会に加入し、調布市の補助金を受けている。

 

*おしゃべり広場……「部屋で赤ちゃんと2人きりで煮詰まっている」という若いママたちの声を受けて設けられた、顔合わせ、知り合いづくりの場。管理組合が主催し、マンションに住む赤ちゃんのいるママが対象。月1回、建替え時に新設されたコミュニティ・ルームで開催している。赤ちゃんとお母さんの名前、部屋番号を書いた名刺を交換することで、子育て世帯のママ同士の交流を促す。

 

*若い世代の会「なんじゃもんじゃ」……子育て世代を対象とした会で、敷地内にあるなんじゃもんじゃの木からその名をとり、ハイキングや読み聞かせの会、ビンゴゲーム大会、ひなまつり、子どもの日などのイベントを開催している。管理組合の中でも、若い理事たちが中心となって活動している。

 

 *防災会……マンションの居住者全員で構成する組織。外部から講師を招いて防災セミナーを開催したり、防災訓練等を実施している。その他、防災備品の購入・備蓄も行っている。

大切なのは、新旧住人が仲良くなれるコミュニティづくり

 

SKM_654e17120920040上記5つの活動を中心に円滑なコミュニティ形成を図っているアトラス調布ですが、マンションの管理費からコミュニティ支援に予算を割くことはしておらず、コミュニティ活動の原資は行政等からの補助金、奨励金、助成金、謝礼金などで賄っています。例えば、調布市が推し進める「資源物地域集団回収事業」に登録。これは資源物の引き渡し量に応じて市から奨励金が交付されるもので、これにより年間30万円程度の収入が見込めます。このように、行政が参加を呼び掛ける事業にはできるだけ協力し、その奨励金等でコミュニティ活動の予算を賄うことにしました。

 

課題としては、まだできたばかりのマンションなので「コミュニティの充実」までには至っていないこと、管理組合の業務範囲が広く、細かい点まで配慮が行き届かないことなどがある、と多田さんはいいます。しかし、マンション内で顔を合わせたら挨拶をする人たちが増え、様々な形で情報交換も行われるようになったそうです。

 

また、コミュニティ支援において最も気を配ったのは、元からの住人と新しい住人が分断されないことでした。アトラス調布では、団地から住替えした住人が全世帯の約3分の1にあたり、顔なじみの人も多いために「元から居る住人が集まる会をつくりたい」という要望もあったそうです。しかし、元から居る住人だけで集まるとどうしても閉鎖的に見えてしまうことから、多田さんはそれを嫌ったそうです。

 

「これまでは理事の高齢化が大きな課題だったのですが、建替えで若い世帯がたくさん入居し、理事も世代交代が進みました。パパが赤ちゃんを抱っこして理事会に出席することも珍しくないんですよ。これからは若い世帯にもどんどん活躍してもらいたい。みんな一緒に入居したんだから、みんなで仲良くなっていければいいですね」。そう話す多田さんの笑顔が、アトラス調布に流れる和やかな空気に溶け込みました。

 

概要(取材年月:2017年09月)
  • 建物名:アトラス調布
  • 所在地:東京都調布市
  • 階数 :8階建て・6階建て
  • 総戸数:331戸(うち従来からの住替え住戸105戸)
  • 竣工年:2015(平成27)年
  • 管理形態:全部委託
  • 管理会社:旭化成不動産コミュニティ(株)
  • 総会開催:毎年8月末
  • 役員数 :16名
  • 役員任期:2年(半数改選)