マンションと地域の交流を、NPO法人企画のイベントで後押し!
新築マンションでは、入居前に住民となる人々を集めてコミュニティ形成のためのパーティなどを開催しているところが多くあります。入居時にはすでに顔見知りになれる、とても有意義な試みですが、中には、自治体や地域まで巻き込んだイベントを催すマンションも見られるようになってきました。今回は、子育て世帯の流入が著しい地域で、マンション入居者向けの子育て支援プログラムを利用している事例を紹介します。
キャンセル待ちも!人気の居住者イベントとは
千葉県流山市にある「パークホームズ流山おおたかの森 ザ レジデンス」。つくばエクスプレス「流山おおたかの森」駅から徒歩およそ3分の場所に建つ、総戸数257戸の大規模マンションです。このマンションでは販売時から、「流山コソダツ計画」という子育て支援プログラムを行うことが決まっていましたが、入居前から、プレイベントとして一般の人も参加可能な疑似体験ワークショップを実施していました。流山おおたかの森駅を中心に、おかしの仕入れから販売、振り返りまでを子どもたち自らが行う「だがしやチャレンジ」など、イベントを数回行い、いずれも参加した人たちに大好評だったそうです。
入居後は、2016年4月のオープニングパーティを皮切りに、入居者限定プログラムを開始。2年間で約15回のプログラムが開催される予定です。すでにこれまでベビーマッサージ講座、子育て講座など各種講座やイベントが行われています。流山市は会場の提供や告知などで協力をしてくれているそうです。
利根運河の水辺空間で行われるシアターナイトに使用する和紙のランプシェードづくりや、お寺での数珠づくりイベントなども実施。ランプシェードづくりでは、流山を流れる日本初の西洋式運河を紹介し、数珠づくりイベントではマンション近くにあるお寺の住職さんの力を借りて、お寺でのお作法やお寺の歴史について学んだりしました。イベントに参加した人からは「いろいろな人と知り合いになれてよかった」と喜びの声が続々聞こえてくるそう。毎回定員いっぱいの申し込みがあり、キャンセル待ちが出るほどの人気イベントも多いということです。
共働き家庭への手厚い支援で、子育て世帯が増え続ける流山市
パークホームズ流山おおたかの森 ザ レジデンスでこのような子育てプログラムが行われることになった背景には、子育て世帯への支援に力を入れている、千葉県・流山市の取り組みがありました。流山市では、ここ数年人口流入が続いています。住む場所と通う認可保育所が離れている児童のために、最寄りの駅までバスで送迎する「駅前送迎保育ステーション」サービスや、学童保育の拡充など、特に共働き世帯への手厚い支援で、30~40代の子育て世帯が増えているのです。
そこで、パークホームズ流山おおたかの森 ザ レジデンスを計画するにあたって、マンションを供給した三井不動産レジデンシャル(株)は、ファミリータイプのマンションならではのコミュニティ形成をと考えました。「女性が輝く社会」を目指し、共働き世帯の子育て支援の充実が必須とされるなか、住まいのつくり手として供給できるサービスは何か。そして、子どもたちが安心・安全に保育されるだけでなく、楽しみ、学び、地域との交流ができるプログラムとして、「流山コソダツ計画」プロジェクトを立ち上げました。そのパートナーに選んだのが、NPO法人「放課後NPOアフタースクール」でした。
小学生のためのアフタースクールを開校するNPO法人
放課後NPOアフタースクールは、小学校を活用して小学生の放課後を支える取り組みをしているNPO法人です。2005年からボランティアとして活動を始め、現在アフタースクールを開校した学校は17校に上ります。放課後を支える、といっても単なる学童保育ではありません。楽しく学び、地域と触れ合うための様々なプログラムが用意されているのです。
放課後NPOアフタースクールが提供するアフタースクールの特徴は3つあります。
①放課後の小学校に開校すること
②その小学校に在籍する子どもなら1~6年生まで誰でも参加が可能なこと
③地域の人々に「市民先生」になってもらい、本物の知識や体験の機会を与えるプログラムであること
安心・安全で低コスト、学校が終わったらそのまま参加でき、多くの活動を叶える場所がある、といった数多くのメリットから、小学校を舞台とすることが前提であるため、その趣旨に賛同してくれた小学校でのみ開校することができます。
また、こうした学校での活動以外に、企業・行政と連携して行う「企業連携子育てプロジェクト」も実施しています。今回の「流山コソダツ計画」はそのプロジェクトの一環として行われました。
これまで放課後NPOアフタースクールが実施してきたプログラムは、400種類にも及びます。スポーツや遊びはもちろん、ケーキづくりやバイオリン体験、アクセサリーづくり、宇宙やロボットについて学べるプログラムなど、子どもたちが本物に触れ、楽しんで体験できる内容が中心です。
地域とのつながりを広げ、流山の子どもたちが自ら育っていってほしい
放課後NPOアフタースクールでは、イベントを計画する際に、地域の人の力を借り、地域につながる内容を組み入れているそうです。
「流山コソダツ計画の“コソダツ”とは、“子”どもが自ら“育つ”という意味が含まれています。様々なプログラムへの参加を通じて学ぶことの楽しさを知り、周りの人と協力したり交流する体験を積むことで、子どもに自ら育っていってほしい。そのような地域による子育てをサポートしたい──そんな願いがこめられています」。そう語るのは、放課後NPOアフタースクールの木本さんです。「このプログラムがきっかけとなり、流山に住むいろいろな特技をお持ちの方に市民先生としてマンションに来ていただいたり、 地元のお寺や農園に行って体験学習をしたり、なるべく地域との繋がりに広がりを持たせられるようにしています」。
地域の市民先生は、人のつながりや、今まで築き上げてきたノウハウを活かして、最適な先生を探して依頼をします。子どもに教えた経験がない人も多く、「私で務まりますか?」とためらわれることもありますが、そこは約400種類のプログラムを開催してきた経験でしっかりとフォローをしながら進めていきます。
今回の流山の事例では、地域の歴史や特性を調査していくなかで、いろいろな市民先生の候補者を見つけることができたそうです。利根運河をイベントに利用したいと考えたときに、近くにある東京理科大学の建築学科の有志がたまたま「利根運河シアターナイト」というイベントを実施していたこと、バルーンアートやマジックなどで近隣の幼稚園や老人ホームに出演しているお寺のご住職さんがいたこと、流山で生まれ育ち、今も流山で農業とジャム作りを行っている方がいたこと……。実際に候補者に声をかけたところ、「地域のためなら」ということで、みな快く市民先生を引き受けてくれました。
現在もマンション居住者間で好評の「流山コソダツ計画」プログラムですが、放課後NPOアフタースクールとマンション側の契約は入居開始からの2年間となっているそうです。「私たちは、マンションと地域をつなぐきっかけづくりをさせて頂いただけ。これからもこうした子どもたち主体の関わりを通じて、流山地域を盛り上げる活動が続いて行くとうれしいですね」と木本さん。
マンション管理組合では、このプログラムを通じて生まれた居住者同士の繋がりが、マンション内のコミュニティ形成にもおおいに役立っているといいます。「これからは、ここで生まれた絆を大切にし、子育て世代だけでなく、マンション全体のコミュニティの広がりと地域との親交がさらに深まるよう、今後管理組合がしっかりサポートしていきたいですね」。
マンションと流山地域の今後の活動にも期待が高まります。
- 建物名:パークホームズ流山おおたかの森 ザ レジデンス
- 所在地:千葉県流山市
- 階数 :11階建て
- 総戸数:257戸
- 竣工年:2015(平成27)年築
- 管理形態:全部委託
- 管理会社:三井不動産レジデンシャルサービス(株)
- 総会開催:2月
- 役員数 :12名
- 役員任期:1年