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団地にヤギがやってきた! エコ除草でコミュニティの活性化を

広大な敷地の一角で、ヤギが草を食べています。その様子を団地住民が立ち止まって楽し気に見ている……。秋になると、町田山崎団地ではそんな光景が見られます。団地でヤギを飼っているわけではなく、コミュニティの活性化をも見越したヤギによる除草活動を行っているのです。前回ご紹介した貸し菜園(クラインガルテン)と同じく、団地の空地を利用したコミュニティ支援の取り組みをご紹介します。(写真提供:UR都市機構)

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空地の草刈りをヤギにまかせたら……?

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町田にある総戸数3920戸のUR賃貸住宅「町田山崎団地」。起伏に富んだ広大な敷地に、たくさんの草花や大きな木々が生い茂る、自然豊かな環境が魅力の団地です。

前回紹介した、クラインガルテンのある都市計画道路用地の横にある道を東に向かって進むと、団地敷地の南北をつなぐ主要な橋である「三の橋」が見えてきます。橋の上から都市計画道路用地を見下ろすと、なんとそこにはヤギが2頭、のんびり草を食べているのです。橋には「ヤギが来ています」という看板や貼り紙が貼られ、ヤギの様子を見ようと道行く人が足を止めていました。

町田山崎団地の空地となっている都市計画道路用地では、春から夏にかけて雑草が伸び放題となるため、URが年に一度、エンジン付きの草刈り機で除草をしていました。

しかし、草刈り機から排出されるCO2や騒音などの問題もあったことから、2013(平成25)年に、URがエコ効果を期待して「ヤギによる除草」を発案しました。エコ効果以外にも、団地住民の方たちに対するアニマルセラピー効果やコミュニティの活性化への期待も込められていました。そこで、まずは除草の実証実験を行うことが決まりました。

メス3頭、オス1頭の全4頭に雑草を食べさせ除草する実験は、2013年(平成25)の9月から11月の2カ月にわたって行われました。その間に約1,000㎡の土地の草を完食し、草が生い茂っていた場所はすっかりきれいになり、住民に惜しまれながら故郷へ帰っていったヤギたち。最後の日には、自治会主催によるヤギとのお別れ会が開かれたそうです。

それから4年、毎年恒例となったヤギによる除草が今年も行われていました。今年は2頭のヤギがやってきて、約1,000㎡の敷地を2カ月にわたって除草しました。

(写真提供:UR都市機構)

期待されるコミュニティ形成効果

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ヤギによる除草実験の実施主体はURの関連会社であるURコミュニティで、桜美林大学で臨床心理学を教える種市康太郎教授など専門家にも意見を求めながら検証を実施。ヤギによるコミュニティ形成効果の検証方法としては、団地住民へのアンケート、イベント参加者へのアンケート、定点カメラによる動態調査などが行われ、ヤギの放牧が終了した後ごとにデータを分析しています。

3年間で蓄積されたアンケート結果などを見ると、ヤギの除草に対して9割以上の人が「好感を持っている」と答えていて、「ヤギが話題となって近所での会話が増えた」という回答も6割を超えているそう。ヤギ除草がコミュニティ形成の効果を生んでいることが実証されました。

ヤギの放牧にあたっては、逃亡防止のための電気柵(ごく弱い電流で人体に影響のないもの)を設置。小屋の設置や清掃、飲み水や鉱塩(ミネラル補給と尿石予防のため)の交換、爪切りなどヤギのお世話については、URコミュニティが業務委託先に依頼し、定期的に行っています。

2013(平成25)年に行われた第1回のヤギ放牧が成功したことを受けて、管理会社では同じく町田の藤の台団地や埼玉県の北本団地でもヤギの放牧を行い、アンケート調査や定点調査を実施することになりました。自治会に日常の管理の一部をお願いし、コミュニティ形成効果がどのように広がるかについても現在検証を行っているそうです。

(写真提供:UR都市機構)

団地にすっかりとけこんだヤギたち。ヤギを気遣う声も

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町田山崎団地では、今年の9月14日、団地自治会主催によるヤギのウェルカム・セレモニーが開催されました。あいにく直前まで雨が降っていたのですが、数多くの団地住民が参加し、特に団地敷地内に複数ある保育園・幼稚園の園児たちが大喜びの笑顔を見せていました。

これまでに4回行われているヤギによる除草実験ですが、その間には前述したようなウェルカム・セレモニーやお別れ会、ヤギとのふれあい見学会などが開催されています。子どもたちやその保護者を中心とした団地住民がヤギとふれあい、また橋を通るたびに草を食べたり休んだりしているヤギを眺めているうちに、ヤギはすっかり団地にとけこみ、「台風が来るからヤギが心配」、「草がなくなりそうだから場所を移動させてほしい」などヤギのことを気遣うような声も寄せられているそうです。

町田山崎団地は、総戸数3920戸という大所帯ですが、空き家、高齢化といった日本中の団地が抱えている問題はここでも顕在化していて、自治会の運営も困難なものになっているそうです。自治会主催でのヤギ関連のイベントを、開催できなかった年もあるのが現状です。

そのために自治会では、バックアップメンバーとして日常業務をお手伝いしてくれる人を募集し、現在25名ほどの参加があるそうですが、それでも運営は厳しいと自治会事務局長は話します。

ヤギの除草やクラインガルテンなどの取り組みによって一定の成果を見せているコミュニティ形成ですが、今後はどのように継続していくか、団地全体の長期的な取り組みが課題となっていきそうです。

概要(取材年月:2016年09月)
  • 建物名:町田山崎団地
  • 所在地:東京都町田市
  • 階数 :5階建て・116棟
  • 総戸数:3920戸(賃貸)
  • 竣工年:1968~69(昭和44~45)年
  • 管理形態:―
  • 管理会社:―
  • 総会開催:4月(自治会)
  • 役員数 :8名(自治会)
  • 役員任期:1年(自治会)