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イニシア千住曙町-r棟

「破産しない管理組合」へ! 財政健全化を目指した取り組み

前回、管理組合の法人化についてご紹介した「イニシア千住曙町」では、同じく1期目から管理費や修繕積立金の収支を見直し、財政の健全化にも取り組んできました。8期目を迎える現在、黒字化に成功し、余裕を持った予算を組むことができているというこのマンション。いったいどんな改革をしたのでしょうか。

その他

赤字化する一般会計との戦い! まずは初期設定の見直しから

イニシア千住曙町-ミニショップ

総戸数515戸の「イニシア千住曙町」は、管理組合発足後、すぐに財政の見直しについて取り組んだマンションです。第1、2期の理事長を務めた横山さん(仮名)は、管理組合設立総会の議長となり、そこに上げられた予算案の資料を見て驚きました。

「それは、例えば月極の駐車場がたった2台解約されただけで、組合の会計が赤字化してしまう、という内容だったんです」と横山さん。組合の収入のほとんどは、組合員から徴収する管理費と駐車場からの収入。それに対して支出は、電気代など必ず払わなければならないものだけで、収入の99.8%が消えてしまうという予算案でした。つまり、余裕のない「カツカツの予算」だったのです。

横山さんは言います。「組合の予算は大きく『管理費』と『修繕積立金』の2つに分かれます。これを家計に例えると、管理費は日々の生活費、修繕積立金は支出の目的が決まった取り崩しのできない貯金に近い。生活費に余裕があれば、旅行にも行けるし貯金に回すこともできますが、ギリギリで生活費を回していて、もしも想定外のことが起きたらたちまち首が回らなくなってしまいます」。

横山さんたち第1期の理事たちは、まず「生活費」にあたる管理費の削減に取り組みました。収入を増やすことは簡単ではないので、支出を減らすことが先決です。例えば、共用部分の火災保険を10年積立式に移行。これによって10年で約2000万円の節約になりました。ほかにも、電力会社との契約方式を変更(年間100万円程度の節約)、2期目には利用が極端に少なかった有人「ミニショップ」の廃止(代わりに自販機型コンビニを導入し、年間約600万円の節約)など、大きな成果を上げます。

小さなことからコツコツと。積もったお金は修繕費や共用部分のグレードアップに

isa自転車置き場

年100万円超単位の節約はかなり大きなものですが、イニシア千住曙町ではそれだけでなく、来客用駐車場の有償化(第1期)、プロジェクター等の導入による理事会のペーパーレス化(第2期)など、節約効果は少額でも「ちりも積もれば山となる」とばかりに、できるところから少しずつ改革を進めていきました。

上記にあげたもののほかに、7期目までに以下のような見直しを行いました。

第2期

・節電のため電気の使用量計(デマンド監視装置)導入

・管理会社との委託管理費削減

第3期

・エレベーター保守契約の見直しによる経費削減

・LED照明の導入(投資金額約350万円、以後年間110万円程度の電気代削減見込み)

第5期

・組合・自治会の印刷コスト削減

・プロバイダー契約料の見直しによる経費削減

第6期

・共用部分の火災保険見直しによる経費削減

・機械警備の契約見直しによる経費削減

第7期

・高圧一括受電への変更(全戸承諾を達成。年間約500万円の節約)

・駐車場の外部貸し出し(サブリース契約の締結。以後年間約180万円の収入増)

これらの努力により、7年で約2800万円強の支出の削減に成功したイニシア千住曙町。これをもとに、年間600万円分の管理費の支出を削減(削減分を毎年修繕積立金に振り替えるように制度化)したほか、役員報酬の導入、防災・共用部分の備品購入、住民専用ネット掲示板の運営費などに充てることができました。もちろん、ただコストをカットすればいいと考えたわけではなく、管理員を1名増員したり、 通常は手の届かないFIX窓に清掃を入れたりして必要な予算は割き、サービス水準を維持することも怠りませんでした。

年に約1700万円の黒字が見込まれる状態になったので、8期目からマンションをよりよくしていくための費用をつくることができました。例えば、日当たりが悪く枯れてしまっていた芝生を人工芝に張り替え、植栽も植え替えました。今年の夏には居住者向けに「人工芝お披露目会」を開催し、たくさんの子どもたちが裸足で駆け回る光景が見られたそうです。「お金がなくてできなかったことにやっと手が回るようになった。植栽の改善や外構部の特別清掃など、古びてきたマンションをよみがえらせる事業に投資しています」と横山さん。来期以降も継続的に黒字が見込まれるということです。

消費税増税と連動する管理費、修繕積立金は均等積立方式に

イニシア千住人工芝

イニシア千住曙町では竣工から2年経った時期に、東日本大震災に見舞われました。棟と棟の間にある渡り廊下が破損し、一時的な補修工事が発生するとともに、修繕計画の大幅な見直しをせざるを得ない状況になってしまったのです。

また、同年に国土交通省が「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を公表しました。そこでは必要な計画修繕工事の費用を35年といった長期の計画期間の中で均等割りにして徴収することが推奨されています。組合では、話し合いの結果この方式を採用し、第4期通常総会にて118円/㎡だった修繕積立金を248円/㎡に改定したのです。

もちろん、簡単な道のりではありませんでした。平均的な面積の住戸で、年間約11万円という大幅な負担増となる改定です。住民説明会を計6回開催したり、かわら版と題した説明資料を何度も全戸投函したりと常に情報をオープンにし、日々努力を積み重ねた結果、総会では90%近い賛成を得て可決しました。

また、消費税の増税に伴う管理費の値上げについても議論がなされました。消費税が段階的に上がることで支出が大きく膨らむことは、実は組合にとって大きな負担です。しかし、そのつど管理費を値上げするのは大変なコストと労力を必要とする作業となり、現実的ではありません。そこで、組合では管理費単価と駐車場代が消費税率アップに自動的に追従するようにした規約・細則の変更を第5期に行いました。つまり、消費税率がいつ、どれだけ上がっても、そのつど総会で決議する必要がないのです。

「これで、将来的に消費税がどれだけ上がっても、一般会計が破たんする心配がなくなりました」と横山さん。「資産価値の向上を目指し、これからはマンションをもっと“ステキ”に変えていくために予算を組んでいきたい」と話してくれました。

概要(取材年月:2016年09月)
  • 建物名:イニシア千住曙町
  • 所在地:東京都足立区
  • 階数 :24階建て・5棟
  • 総戸数:515戸
  • 竣工年:2009(平成21)年
  • 管理形態:委託管理
  • 管理会社:大和ライフネクスト(株)
  • 総会開催:4月
  • 役員数 :20名、監事3名
  • 役員任期:2年(半数改選、再任を妨げない)