「強要しない」が長く続けるコツ、笑顔がいっぱいのシニアクラブ
マンションには、老若男女様々な人が住んでいます。その中でも、アクティブに過ごすシニア世代は、その他の居住者にとって大変心強いものです。多くのマンションで自主的に組織されている「シニアクラブ」の中でも、発足から12年と長続きしているクラブにその秘訣を伺いました。
「年寄り同士助け合おう」共助の精神でクラブ発足!
八王子街道とも呼ばれる国道16号線の保土ヶ谷付近を走っていると、不思議な建物が目に留まります。階段状に並んだ白い家が、丘の上を登っていくように続いています。このマンションの名前は「ルネ上星川」。全255戸の大規模マンションです。
ルネ上星川には、シニアの居住者の方たちが発起人となってできたクラブがあります。そもそもは、輪番制である管理組合の理事として顔を合わせた数名が、「年寄り同士集まって、助け合ったらどうか」という話をしたのがきっかけでした。シニアクラブへの参加を呼びかけるビラをつくり、集会に集まったのは7、8名。そこで初めて、どんなことがしたいかを決めるなど、当初は何もわからず手探り状態だったとのことです。
立ち上げメンバーの中にたまたま囲碁のアマチュア7段という方がいたため、とりあえず囲碁クラブをつくり、月1回集会室に集まって囲碁を楽しむことにしてはどうか、ということになりました。こうして2004(平成16)年、ルネ上星川のシニアクラブが正式に発足したのです。
その後も、キリマンジャロの登頂に成功したその道のスペシャリストによるウォーキングの会、音大卒でコーラス指導経験のある方によるコーラス会など、マンパワーを駆使した各部会が次々と立ち上がり、徐々にメンバーが増えていきました。それに伴い、各部会での活動のほかに、クラブのメンバー全員が集まることのできる茶話会や、忘年会・新年会などの各種イベント活動も行うことになったのです。
社会福祉協議会の助成を受け、より大きく活発に
その後も続々とメンバーを増やしていったクラブは、2008(平成20)年保土ヶ谷区社会福祉協議会(以下、協議会)の助成金を受けることになり、その2年後には名称を「ルネクラブ」と変更。居住者相互の助け合い、声の掛け合いを目的とし、「親睦・共助・健康維持」を合言葉に、活発な活動を続けています。
入退会については、マンション居住者であれば年齢を問わず自由としました。(学生は不可)。各種活動への参加不参加も自由です。年会費等の定期会費はなく、各活動に当たって発生する実費は協議会の助成金によるほか、不足分は原則として参加者の人数で割り勘する決まりになっています。
「メンバーの負担にならないよう、“強要しない”ことが一番大事。自由に気軽に参加しながら、単なる親睦だけでなくより楽しい人生を送れるよう、お互いに声を掛け合い助け合うことができる活動を心掛けています」と語るのは、世話人代表の鎌田さん(仮名)。
現在の活動内容としては、年5回程度の茶話会、年1回のバス旅行、クリスマス会、新年会や忘年会などのイベント活動に加え、囲碁会、ウォーキングの会、コーラス会、麻雀会、ゴルフ会と5つの部会があります。「世話人」が4名と、各部会に対し1名ずつ計5名の部会長を立てており、全体の会員数は約60名です。
「この種の団体は長続きさせるのが難しいと言われていますが、当クラブはもう12年も続いている。外部の方からはうらやましい、という声もいただいています」と鎌田さん。強制力がなく、気軽に参加できる仕組みをつくったことが、その成功の秘訣といえそうです。
楽しく参加し、時には役に立つ情報の交換も
楽しく活動しているルネクラブですが、いくつか課題もあります。まずは、世話人のなり手がいないこと。活動の企画運営や、年2回の会報の作成、協議会への決算・活動報告の取りまとめなど、世話人の仕事は幅広く、負担もあります。年1回のバス旅行では、幹事を決めて世話人がそのサポートをするのですが、その幹事のなり手も不足気味です。
また、ほとんどの活動日が平日の昼間ということもあり、まだ若い世代の入会者がいません。メンバーの平均年齢は70歳を超え、最高齢89歳と高齢化してきており、マンション内の若い世代との交流、全体の世代交代が進んでいないのが課題です。
とはいえ、メンバーは皆楽しんで様々な活動に参加していて、「道で会って挨拶をする人が増えた」、「気持ちが明るくなった」といった声が上がっているそうです。茶話会では、社会福祉の専門家を招いた講演会や謡の会など毎回趣向を凝らした催しが行われ、ビンゴゲームや川柳大会などで盛り上がります。
「他愛のない会話でも、みんなで笑って話すだけでストレス発散になるんです」とは、コーラス会の部会長兼世話人の佐藤さん(仮名)。管理組合の理事をしているメンバーに大規模修繕の進捗状況を聞いたり、今話題の電力自由化について情報交換したりと、日々の生活に役立つ話を聞けることも多いとか。「今後は、もっと色々な世代と交流して、お互い助け合いながらこれからも長く続けていけたら」と、鎌田さんも抱負を語ってくれました。
- 建物名:ルネ上星川
- 所在地:神奈川県横浜市
- 階数 :19階建て・5棟
- 総戸数:255戸
- 竣工年:1987(昭和62)年築
- 管理形態:委託管理
- 管理会社:総合ハウジングサービス(株)
- 総会開催:4月(ルネクラブ)
- 役員数 :世話人4名(その中から代表1名・ルネクラブ)
- 役員任期:-