防災部門(防災力の向上)
佳作
マンション敷地法面に対する
【土砂災害防止法の指定解除に向けた
整備工事等】の提案について
三菱地所コミュニティ株式会社 横浜第一支店
長谷清浩様
背景
- 横浜市南区に所在する、築20年の69戸のマンション。敷地内に急斜法面の竹林を有しており、一部分が隣地戸建て住戸と接しています。
- 2018年9月の植栽剪定時に、法面に設置されている境界フェンスが傾き破損している状態を発見。緊急調査の結果、土砂の一部が崩落しており、急斜面崩落に対する対策が必要であることが判明しました。それを受けて、同年9月に土砂災害特別警戒区域(レッド)に指定されました。
- フェンスの傾きによって、近隣の住民からは「台風・豪雨時にさらなる崩落が起こるのでは」と心配の声が上がっていました。マンション崖地部分が土砂災害特別警戒区域(レッド)に指定されたことにより、建物の建替え時に「建築物の構造規制」がかかることも懸念されていたようです。管理組合では対応方法に苦慮(近隣対応・対策案・改修費用等)。さらに土砂災害特別警戒区域に指定されたことで、近隣への影響だけでなくマンションの資産価値の低下を心配していました。
目的
- 崩落の判明当時、隣地住戸にフェンスが倒れ、越境して被害を与えている状態であり、今後急斜面地が台風・豪雨・地震等で崩壊した場合には、近隣住民等に生命または身体に著しく危害が生ずる恐れがあると考えられました。該当部分に「アンカー」「植生マット」および「樹木の剪定」を行い、崩落の危険を予防・解消し、定期的な保全を行うことにより、良好な崖の維持・管理を行うことを目指しました。あわせて土砂災害特別警戒区域(レッド)の指定解除も目標としました。
実施内容〈バリューアップ〉
①管理組合への報告・説明・対策協議
②元施工会社との現地調査・対策立案
③横浜川崎治水事務所との協議
④危険個所の応急対策(理事会・近隣住戸承認のもと)
⑤横浜市建築防災課に助成金申請
⑥管理組合 臨時総会
⑦当該急斜法面の整備工事等を実施
総会で承認、市より助成金も
「土砂災害防止法の指定解除に向けた整備工事等」の実施」についてが総会で承認決議され、工事を実施しました。2019年7月に着工し、2019年8月に完工。総工事費約450万円に対して、横浜市より100万円の助成金の交付を受けることができました。
結果
- 無事、工事が完了しました。横浜川崎治水事務所に「土砂災害特別警戒区域(レッド)指定解除の申請書」を提出し審査を受け、その後(2021年2月)、土砂災害特別警戒区域(レッド)指定が解除されました。
- 管理会社として、地道な提案と行政との粘り強い交渉が住民の安心・安全にお役に立てたのではないかと考えています。
苦労した点・工夫した点
- 管理組合の長期修繕計画に計上されていない多額の整備工事であるため、組合員の理解を得るのに理事会も苦労をされました。管理会社としては、土砂災害特別警戒区域(レッド)指定されていることによって、マンションの売買等の際に必要となる重要事項説明書に記載が必要となり、資産価値に大きく影響を与える可能性があることを説明し、安全性と資産価値の向上のために必要な対策であることをアドバイスしました。
- 工事を実施するにあたり、近隣住戸との協議および同意等が必要でしたが、当マンションの管理員が近隣家主と日頃よりコミュニケーションを良好にしていたため、円滑に対策を進めることができました。
居住者の声
- 対策について横浜川崎治水事務所と打合せを重ね、土砂災害特別警戒区域(レッド)を外すことができ、近隣の安全やマンション資産価値の低下に影響を与えない対策を講じることができたことを、管理組合より評価されました。また、費用的にも横浜市減災対策助成金の申請をすることにより、組合の修繕費用の低減に寄与することができたため、感謝の言葉をいただきました。
- 近隣の住民からは、土砂崩落防止対策及び土砂災害特別警戒区域(レッド)指定が解除されたことにより、「建築物の構造規制」がなくなり、今後建物の建替え等の有効活用に対して評価されました。何より、崩落の心配がなくなったことに、安心感を持っていただくことができました。