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- (2)工事・メンテナンス部門 佳作
工事・メンテナンス部門
(建物資産価値の向上)
佳作
大阪府北部地震を乗り越えて
将来の修繕費用を大幅削減
株式会社長谷工コミュニティ
吉田健司様
背景
- 1999年に竣工された178戸のマンション。駐車場は平面駐車場5台、タワーパーキング1号機36台、2号機36台、機械式駐車場33台、合計119台の駐車場が設けられていました。
- 駅が近いという立地のため年数と共にマンション内の駐車場は空き区画が増加傾向にあり、2018年5月時点で36台の空き区画(約30%)が発生していました。外部への貸し出し等も理事会の議題として挙がっていましたが、防犯・安全面を不安視する意見もあり、検討課題となっていました。また、機械式駐車場やタワーパーキングは経年劣化が進行しており、定期点検でも不具合の指摘を受け、大がかりな改修が必要な時期に差しかかっていました。
- そんな折、2018年6月18日に発生した大阪府北部地震によってタワーパーキング1号機の空きパレットが1階に落下し、使用不可能になるという事態が発生しました。
目的
- 地震発生から約2週間後に臨時総会を開催し、タワーパーキングの復旧工事が提案されました。しかし、空き区画が増えていたことから、これを機に駐車場全体の見直しを行う意見が出され、理事会で再検討を行うこととなりました。
- 駐車場台数の適正化と有効活用、効率的な駐車場運用だけでなく、駐車場料金の適正化や将来的な修繕費用の抑制までを考慮に入れ、今後の駐車場運営方針について管理会社から管理組合に提案をしました。
実施内容〈バリューアップ〉
アンケートを受けた提案を
理事会で検討するほか、複数回にわたる住民アンケートを実施。その結果を受け、以下のような提案をしました。
・機械式駐車場42台を解体・撤去し、平面化工事を実施する。
・タワーパーキング1号機(36台)を復旧し、一部区画をセミハイルーフ化(10台、普通車区画16台)する。
・駐車場使用料の一部を改定(セミハイルーフ区画のみ)。機械式駐車場からの移動対象者には2年間の経過措置を設ける。
機械式駐車場の解体・撤去に伴う効果と課題について
今後、機械式駐車場を維持管理していくには多額の費用が必要になり、駐車場の使用料だけでは収入が大幅に不足する事態が想定されること、機械式駐車場の解体・撤去によって収支状況の大幅な改善が期待できることを実際に予定されている修繕費などを提示して説明。削減可能な費用として、部品交換費用、保守点検費用、作動に伴う電気代、地下ピットに設置された排水ポンプの取替費用、移動式粉末消火設備の取替費用等を挙げました。
また、解体・撤去によって駐車場台数が減ってしまう点については、駐車場附置義務の緩和措置が適用可能であることを市役所に確認。過去の契約者数の推移と現在の契約車輌の制限(車高・車幅等)をもとに確保すべき台数を計算しました。
改修工事費用と今後の収支を図表化
予定される工事費用(機械式駐車場解体・撤去費用、アスファルト改修工事費、タワーパーキング1号機復旧工事費とセミハイルーフ化工事費など)を明確にし、一時的には多額の費用が必要となるものの将来的に大幅な収支改善が期待できる根拠となる表を作成。長期修繕計画によると、数年後には2,000万円以上、30年後には6,700万円以上の赤字予測が出ていたものが、今回の工事によって数年後に700万円以上、30年後には11,000万円以上もの黒字予測に転換することがわかり、一気に合意形成へと進みました。提案した案が無事承認され、駐車場全体の改修工事が実施されることになりました。
結果
- 無事工事が完了。駐車場の移動や料金の改定もスムーズに行うことができました。
- 工事を行ったことで、今後30年間の想定修繕費用が17,849万円削減できる見込みとなり、修繕積立金改定計画についても大きな好影響を与える結果に。これまでに抱えていた問題を一挙に解決することができました。
苦労した点・工夫した点
- タワーパーキングの早期復旧を求める意見と、これを機に駐車場全体の運営を見直す意見が対立したため、調整を図ることが大変でした。当初は機械式駐車場を解体する案は一切出ていなかったのですが、他の事例を参考に管理会社から提案することで、居住者の合意形成を図ることができました。
居住者の声
理事長を初めとする理事会の方々、総会出席者の方からも「良い提案をしてくれた」と、感謝の言葉をいただきました。