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工事・メンテナンス部門
(建物資産価値の向上)
部門賞
イニシア千住曙町 Project NEST
イニシア千住曙町管理組合法人
鈴木由紀子様 太田一洋様
背景
- 足立区にある515世帯の大型タワーマンション。外構部は豊かな植栽、入口には水景施設もあって、餅つきや夏祭り、ハロウィンイベント、クリスマスイルミネーションなど、いつも何かしら楽しいイベントで賑やかに盛り上がっている、コミュニティと管理の行き届いたそんなマンションです。子どもたちに大人気のオリジナルキャラクターまであり、その着ぐるみは小中学生を中心としたボランティアキッズ達によって運用サポートをしています。
- 「管理組合の使命は、管理費・修繕積立金を払っているオーナーの名代として資産価値を守ること」との共通認識を持つ役員たちが、これまでに様々な改革を行ってきましたが、ひとつ気になっている箇所がありました。それは、エントランスホール内にあった住人専用の「ミニショップブランジェリー」跡地。営業時間が8~21時で利用できる住民とできない住民がはっきり分かれ、年間900万円以上の管理費で運営する意味があるのか疑問だったため、2期でたたむことに。
- いかにも「何かの店がありました」「撤去されました」と判るうら寂しい、廃墟のようなありさまで10年近く放置されていたミニショップ。エントランスホールはマンションの顔なのに、「閉店したまま放置された店の跡地がそのまま残されているのはマンションの価値を下げるのでは」と考えました。
- 管理組合では、2016年に行った植栽の大規模改修を皮切りに、マンションの価値を上げるため「バリューアッププロジェクト」として様々な対策を実施してきました。ミニショップ跡地と隣のパークサイドカフェをひとつながりの空間と考え、リフォームを行った「Project NEST」をご紹介したいと思います。
目的
- マンションの資産価値向上のため、エントラスホール横ミニショップ跡地と隣のパークサイドカフェをひとつながりの空間と考えて、予約なしで気軽に使える「みんなのラウンジ」に進化させる。THE CUBE(応接室)、スタディ(学習エリア)、ラウンジ(くつろぎエリア)という3つの空間へとリフォームする。
実施内容〈バリューアップ〉
アンケートを実施
現在のパークサイドカフェの利用方法、改修案を聞くためアンケートを実施。回答数は紙18人、電子66人の合計84人。静かにくつろげる大人の空間を求める声と、子どもの遊び場に大別されました。後日行った人口ピラミッド調査で、当マンションには単身もしくは夫婦のみ世帯が40%程度との結果が出て、子どもも徐々に減っていく傾向にあるため、空港のラウンジをイメージした大人のためのスペースとする案を採用することにしました。
図面の作成、壁の撤去の確認
売主側が詳細な図面を持っていなかったため、現地調査と白図作成発注に125,000円を拠出。また、ミニショップ跡地とパークサイドカフェを仕切る壁の撤去について、区の建築審査課などに問い合わせ、共用施設委員が千住消防署予防課担当者とも面談しました。すると、当マンションは 100㎡以下で防火区画を区切ることにより、排煙設備を免除された特例建築物であることが判明。パークサイドカフェとミニショップを仕切る壁を撤去すると消防法違反になるそうで、壁を撤去するだけでは不可であると指導されました。そこで区画壁を撤去後、防火ガラスを入れることで許可をいただきましたが、この防火ガラスが最も高くつきました。
内装材、設備等の選定
ラウンジに不可欠なドリップコーヒーの業者探しを開始。他マンションの話を聞くと、毎月、本5冊、雑誌 20冊を入れ替える費用が年間約45万円かかっているとのことで断念し、電子雑誌読み放題サービスの検討を開始しました。また、WEBカメラは手軽ですがハッキングのリスクがあるので、防犯カメラは有線クローズドとすることに決めました。ミニショップに放置されていたパン焼きオーブンとシンクは中古業者に引き取ってもらい、照明、床材、ブリック壁などインテリアの具体的なイメージも固まってきました。
動画作成、住民説明会、賛成多数で可決
施錠できるバックヤードには、PCと防犯カメラを設置することにしました。納品された3DCG動画をもとに、キャプション等を追加して共用施設委員会で動画を編集し、エントランスホールのデジタルサイネージで放映をしました。2回目のアンケートはCG放映のおかげか回答者が179人と格段に増え、様々な意見や質問をいただきましたが、その後の住民説明会とともに、リフォームそのものに関する反対意見はありませんでした。「第11期通常総会 第 3号議案 ミニショップ跡地改修及び使用細則改正の件」として上程。93.5%の賛成で可決しました。
結果
- 数週間の工事期間を経て、無事引き渡しとなりました。改修前はパークサイドカフェで子どもが騒いだり、折り重なってゲームをしたりする姿が見苦しく、たびたびクレームになっていましたが、「スタディ」の設置により勉強エリアの雰囲気ができ、格段にマナーが良くなりました。ラウンジとあわせて、静かに勉強したり仕事をしたりする人のスペースになっています。応接室の稼働も順調で、月30件の利用があります。やはり落ち着いて話ができるスペースをつくって良かったと思いました。
- 工事費用は1950万円。既に5000万円の貯えがある災害等準備会計から拠出し、修繕積立金等には一切手をつけずに改修できました。電子雑誌読み放題のサービスも導入済。また、窓ガラス向こうのアクアゲートパークの植栽改善も行い、仕事や学習で疲れた目を癒す美しい日本庭園が完成しました。
- 引き渡し後の理事会にて、理事長から思いがけず賞状授与。当マンションの名物理事長は、常日頃「理事になったら爪痕を残していってほしい」と言っています。輪番で渋々出席していた理事会でしたが、判らないなりにマンション管理の難しさ、面白さに興味がわき、楽しいイベントに参加しているうちに私自身、楽しくなってしまったのは、理事長の作戦勝ちです。
苦労した点・工夫した点
- 2度行った住民アンケートや住民説明会で上がった意見や質問に対し、説明会会場や紙の配布、居住者専用のWeb掲示板などを活用して、丁寧に回答するようにしました。
- 子どもが使えるようにしてほしい、との意見も多くありましたが、以前からカフェで子どもたちだけで騒ぐ姿にクレームが入っていたこともあり、大人のための空間(同伴者なしでの子どもの利用は想定しない)としました。理事会としては、子どもの遊び場が少なくなっていることは理解していますが、戸建てと違い、マンションの共用施設では保護者が子どもの監督をすべきであることを説明し、理解を得ました。
居住者の声
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