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マンションライフ・シニアライフ部門
(住み心地、居住価値向上、高齢者対応)
佳作
理事会の活性で管理組合の意義を深掘り
理事長4年間の奮闘記!
両備グレースマンション妹尾駅前管理組合
水原周作様
背景
- 賃貸2棟と分譲5棟、全体で約400戸規模のマンション群の中で、当マンションは分譲棟で一番古く、地上10階建て全59戸。築25年目を迎えます。
- 私自身は、2011 年に進行性の難病を発病し4年後には車椅子の生活になっていました。身体が動く内に住み心地の良いマンションにしておきたい、と定年退職を迎える前に決心し、退職後の翌年2016 年から本年2020年5月の総会まで、4年間理事長を務めさせていただきました。
- 輪番制の理事役員は20年でほぼ一巡、特別大きな問題もなくマンネリ化し理事会の出席率は低くなっていました。マンション内では廊下の室外機置場に物を置く、廊下の窓格子に傘を掛ける、古い自転車が放置されたまま等、目につくところが多くありました。問題はそれらを指摘する者がいないということではないか。管理組合の目的は資産価値の維持と向上であるのに、資産価値が徐々に下がっていることに気付いてもらい、管理組合の意義を改めて認識してもらう必要がある、と理事長就任時に強く感じました。
目的
- そもそも、マンションの資産価値は一般企業と同様に『人+物+金』であると考えています。
人=理事会が活性し、組合員の協調性ある明るい生活風土が醸成されているかどうか。
物=建物の価値であり、維持管理されている状態。
金=長期修繕積立金の期末残高であり、未来への備え、貯え。
この中でも企業と同様に、『人』が最重要と位置付けています。
延々と変化し続けるマンションライフを充実させる、その核になるのが理事会であり、理事会のあるべき姿を描きたいと考えました。
狙いは、
① 20年先まで通用する管理組合運営の仕組みを作る。
② 20年間の長期修繕計画に対する安定した財政を確立させる。
③ 最小の資源で最大効果のある建物営繕と美化、さらには災害リスクを考慮した機能の向上を図る。
実施内容〈バリューアップ〉
自発的な取組みだけで4年間に70項目あり、目的別に主なものを上げると以下になります。
管理組合運営の仕組みづくり
- 輪番制役員2巡目の今後20年先までの名簿を作成。また新たに役員への活動報酬を全員で負担し賄うという報酬制度の取決めをした。
- 組合ロッカーの古い資料を整理し、文書管理手法の見直しをした。
- 町内会と併用の掲示板を組合単独に分離。組合独自に掲示の工夫が出来、引越しやリフォーム等の管理手法の改善が進んだ。
財政の安定化
- 共用部の電気代削減には、全灯のLED化と電力契約コースを切替えた。5年前に比べ年間110万円の削減、35%まで下がった。
- 自転車の整理で駐輪場に空きスペースが発生。駐車場に用途変更し、年間8.4万円の収入増になった。
- 長期修繕計画と積立金の推移を睨み、「す・まいる債」を60口(3千万円)購入。今後10年間で25万円の利息が見込める。
建物営繕と機能の向上
- 長期修繕計画に基づく計画工事の完全実施と、災害危険度の確認及び備え。
- カメラドアホンの改修時に宅配ボックスを新設し、キーレスエントリーも導入した。
- 外来者用駐車場の創設を本年度の総会に提起し賛同を得た。新年度の理事会に退任後も協力し、本年末には稼働の予定。
地域交流[おまけ・副産物]
- 町内会へ補助金を活用した集会所やゴミ収集場の改修を提案。改修プランから補助金申請、施工管理まで支援した。
- 隣棟管理組合と合同での『住まいの相談会』を提案。住民間の交流の場にもなり、年1 回の定例行事になった。
結果
理事会が活性した!
- 理事会欠席者の変化。私からの声かけと、意欲的なコスト削減等の取組みに刺激されたのか1年目途中から欠席者はいなくなった。
- 最終4年間に使った修繕関連費用の1,600万円は、余剰金や保険金等で賄え、結果的には貯えた修繕積立金は使わないで済ませた。
- 今後10年間で1,150万円の財政の良化が確実に見込め、当分、管理費や修繕積立金の値上げは不要であるとの結論が出た。
管理組合の意義が見えた!
- 総会議案書と共有部を見るだけで簡単に資産価値が数値化できる簡易計算式を考案。管理組合の意義は、この計算式にある資産価値を決定付ける5つの要素『固定費・機能・保守・積立金・人』に対し、管理会社任せにせず主体性を以て働き続けることである、と私なりに結論付けています。当マンションをこの計算式に当てはめると、資産価値指数は17ポイントになります。4年間で6ポイント上がったと見ています。
苦労した点・工夫した点
- 理事長としての4年間には他のマンションと同様に、生活騒音や鳩の糞被害、保守業者の不手際、管理人の言動等々、気の重くなる苦情も多くありました。迅速で円満な解決を思い、その殆どを私自らが対応してきました。
居住者の声
- 「ここの住人の方は挨拶の声が明るいですね」、「20年以上経ったマンションにはとても見えないですね」など、管理員さんや外来者からよく言われます。もちろん、今は廊下の室外機置場の物品や窓格子の傘は見かけません。
- 本年度5月の総会で私は退任。挨拶の後で、組合員から4年間の活動への労いと成果に対する多くの感謝の言葉をいただきました。