防災部門(防災力の向上)
佳作
ごみ置き場にプラス
-お客様の声から
災害に強いマンションへ-
株式会社大京穴吹建設
安保文華様
背景・経緯
- 当該マンションは、総戸数54戸と中規模ながら、理事会の防災意識が非常に高いマンションです。「未曾有の災害時には行政に頼らず、自分たちのことは自分たちで」という姿勢のもと、防災備蓄倉庫の必要性についても検討が重ねられてきました。
- マンション内で不要になったエレベータ機械室や配電盤室などが防災備蓄倉庫に改修する候補になりましたが、いずれも震災時には建具のゆがみで開けられなくなるという懸念がありました。
- 同時期にごみ置場の老朽化が問題視されており、扉の重さや害虫、臭いについて居住者の方々から不満の声があがっていました。
目的
「自分たちのことは自分たちで」をテーマに、防災備蓄品を置くことができるよう、防災備蓄倉庫を新設するための検討がなされていました。同時に、ごみ置き場にも老朽化などの諸問題があったため、一気に解決する方法として、ごみ置き場を改修し、その一部を防災備蓄倉庫とするリノベーションプランをご提案することにしました。
実施内容〈バリューアップ〉
平面図を作成し、備蓄量を立体的に検討
まず、備蓄量をイメージしやすくするために1210 の平面図を作成し、空き箱を使って防災備蓄品を最大限に置ける量を立体的に検討しました。また、「非常食や飲料がごみ置場に置いてある」という心理的抵抗が極力なくなるように、ごみ置き場スペースとの間に壁を新設し、防災備蓄倉庫として独立したスペースを確保することにしました。
ごみ置き場にはラック等を設置して使いやすく
ごみ置場には燃えないごみや資源ごみを置くためのラックを設置し、量が多い燃えるごみは、壁とラックの間にネットを張ることができるようにフックを取り付け、年末年始などの回収が少ないときにも溢れ出ないように工夫をしています。また既存の地流しのほかに手洗いと鏡を追加し、災害時には洗面として機能するようにしました。
結果
- ごみ置き場は、竣工から4カ月経った後も非常にきれいに保たれています。
- 防災備蓄品については、防災パンフレット等で推奨されている量よりも多く、防災備蓄品を置くことができました。
※東京都防災パンフレットでは、自助(各家庭)で3日分+共助(マンション自治会等)で3日分当マンションの居住者54戸×平均2.4人でおよそ130人分の備蓄を必要とすると、「水・1170リットル、非常食・1170食、非常用トイレ・1950回分」を備蓄すればいいのですが、実際には「水・1248リットル、非常食・1755食、非常用トイレ・3,600回分、毛布・150枚、応急手当セット、ブルーシート」を備蓄品としておくことができています。
苦労した点・工夫した点
- 一番の懸念点は、ごみ置き場と防災備蓄品が同じ部屋にあることへの抵抗感でした。両者の間に壁を設けるだけでなく、防災備蓄倉庫の床を一段上げることでごみ置き場を清掃した際の水が流れていかないよう工夫しました。
- ごみ置き場は天井を明るい色で塗装したり、照明のレイアウトを変更したりして、明るく使いやすいものになるよう工夫しました。床に高耐久性、防食性に優れた塗装を施し、汚れやにおいが染み込むことなく、清掃性もアップ。さらに壁面に大きなピクトグラムを描くことで、ごみの分別がしやすく、マナーの啓蒙にもなっています。
- ごみ置き場に設けた手洗い器は、普段は作業後に手洗いができる場として、災害時には洗面として使用することを想定しています。
居住者の声
きれいで明るくなった、害虫がほぼいなくなった、防災備蓄倉庫ができたことで安心感があるなど好評です。