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- 2011年夏号
●マンションの隣人は外国人
●外国人は住まい探しで一苦労
●分譲マンションならではの管理上の難しさ
●困った時の生活ルールの伝え方
●外国人とのコミュニケーションのコツ
●コミュニケーションの輪を広げる
●コミュニケーションの輪を広げる
外国人とよりよい関係をつくりながら共に暮らしていく上で、もっとも重要なポイントは、お互いに「顔が見える関係」をつくることです。入
居時に管理組合から「住まいのことで困ったことがあったら相談してください」と声を掛けてください。マンションの玄関や廊下で外国人に会ったら、日本人から「こんにちは」と積極的に挨拶してください。
もちろん日本語で構いません。外国人はフレンドリーな人が多いので、喜んで挨拶を返してくるでしょう。
ある分譲マンションの管理組合では、「外国人が増えてトラブルが多くなり迷惑だ」と思うことも多々あったそうですが、大規模修繕の連絡のため外国人入居者と話をしたのが契機となり、互いに知り合いになってみると実際にトラブルも減ったそうです。
また外国人が多い賃貸マンションでは、家賃を銀行振込にせず、家主のところへ持参させるという工夫をしているところが数多くあります。月に一度、入居者とコミュニケーションを取るためです。互いに打ち解ければ、生活マナーも伝えやすくなります。
3月11日の大地震では、日本人に比べて正確な情報を得にくい外国人は大きな不安にさらされました。地震直後はガス栓の開栓方法がわからず困った人が多いと聞いています。計画停電のニュースを聞いても、自分のマンションがいつ停電するのか把握できませんでした。もしもマンションに親しい日本人がいれば、どれほど心強かったことでしょうか。
一方災害時に、マンションに住まう高齢者を背負って助け出すには、若い外国人の協力が不可欠です。いざというときに助け合いは、日常的なコミュニケーションの積み重ねがあってこそです。マンションのイベントや防災訓練にも積極的に声を掛けましょう。「顔が見える関係」ができれば、その関係はマンションの中だけにとどまらず、地域社会にまで広がっていきます。
今回の大震災では、被災地で炊き出しなどボランティア活動をする外国人の姿がテレビや新聞で報道されました。今や日本人と外国人は共に地域社会を支え合う一員になっているのです。
日本語を含む13カ国語で生活情報をPDFで提供。
「M住まい・引越」の項目の中に、住まい方ルールをイラスト入りで説明しています。
http://www.clair.or.jp/tagengorev/ja/index.html
◎外国人の住まい方ガイド(DVD)
(財)日本賃貸住宅管理協会 日本語を含む6カ国語で、賃貸住宅でのルールやマナー等を映像でわかりやすく説明しています。
有料で販売しています。
http://www.jpm.jp/exch/
◎NPO法人 かながわ外国人すまいサポートセンター
外国人、家主、不動産業者からの住まいに関する相談に応じます。
翻訳サービス(有料)もあります。
http://www.sumasen.com/
◎生活ガイド 地方自治体
外国人住民の増加に伴い、地方自治体が配布している外国人向け「生活ガイド」の中に、賃貸住宅でのルールやマナー等の説明があります。
一般的に、外国人登録窓口等で、新規転入外国人に配布しているので、詳しくは地元自治体へお問い合わせください。
伊藤忠アーバンコミュニティ株式会社マンション管理グループ高橋礼子さんに伺いました。「習慣の違いによる生活上のトラブル(におい、騒音)があります。においの問題では、玄関を開けた状態で、換気扇を使用せず料理をされる外国人の方がいらっしゃいまして、内廊下のマンションに香辛料を使った料理のにおいが蔓延し、クレームになった例がありました。騒音問題では、夜中に窓を開け放し大音量でテレビ見たり、楽器の演奏をされる方がいらっしゃいました。その他ゴミ問題では、方法が分からず分別せずにゴミを捨てる例がありました。トラブル防止対策として、外国人 居住者が多いマンションのゴミ置き場には、英語、韓国語、中国語を併用掲示したり、写真やイラストで分別ゴミの表示をするなど、目で見てわかる掲示板を設置しております。においや騒音トラブルでは居住者の方に、直接お話をするなど外国人の方と程良い距離を保ちながら、コミュニケーションを取るよう努力しています。
逆に日本語を理解し、管理組合の活動に参加されている外国人の方もおり、そういう方は日本人以上に共用部分に対する意識も高く、またマナーも良く、お手本にさせて頂いてます。」
稲葉 佳子(Inaba Yoshiko)
研究分野は、外国人居住、都市研究など。著書に『オオクボ 都市の力』(学芸出版社)、『移民の居住と生活』(共著、明石出版)など。