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- 2010年秋号
◆マンションは地震に強い?
昭和56年6月から適用されている新耐震基準で建てられているマンションでは、震度6強から震度7程度の地震に対して、人命に危害を及ぼすような倒壊等の被害を生じないことを目標としています。そのため、建物の倒壊など大きな被害はないということで、全く何の被害も受けないということではないのです。
例えば、生活を維持する設備関連が被害を受ければ、避難所で生活するよりも自室で過ごしたいと居住者が願っても、かなえられないことになります。
●屋上に設置されている高置水槽が転倒・脱落する
●地上に設置している受水槽や地中埋設 配管が地盤沈下等により周辺の配管が破断する
●建物内の配管や、躯体に固定された露出配管、エキスパンション・ジョイント部等の露出配管がその周辺部位の損傷に伴い破断、損傷する
●電気設備(動力設備、TV共聴設備、電話配管設備等)で、コンクリート躯体内に打ち込まれている配管・配線が多いと、帳壁(非耐力壁)が壊れ配管が露出・損傷する
●空調室外機はしっかり固定されていないと脱落する
● 貯湯式給湯器は固定が不十分な場合、転倒し配管が破断し温水が建物内に噴出する
このように、水道もガスも共用の管でつながっているマンションでは、個人だけの対策では対応できなくなります。居住者にこの点についてしっかりと周知し、マンション全体の防災に関心をもつことが居住者の生活につながることを理解し関わっていくことが大切です。
マンションが被災すれば、その被害の程度によって補修するか建て替えるかといった話になりますが、そこで大きな問題になるのが費用の拠出です。「管理費」「修繕積立費」など、どの財政から出金するかの決定や、速やかに出金するための仕組みを管理規約で定めておくことは居住者間のトラブルを回避するうえで非常に重要なことです。地震などの自然災害に対応した保障を考える、国や自治体の住宅再建支援制度の仕組みや、補修または建替えの際に居住者の仮住まいが必要かどうか、工事期間も含めた情報を得て、被災後の再建に向け、先手を打って準備しておくことが望まれます。
なお、拠出を考えるにあたり、被災直後から予想外の出費が重なることも忘れてはなりません。包帯・消毒液などの救急用品、テント、毛布、ポリタンク、電池、文具などの追加備品以外にも、コンクリート片、窓ガラスなどの飛散物の撤去、処分費、清掃・消毒、被害の調査費、設備の点検費、応急修繕費など、挙げたらきりのないほど細かい出費が重なるのです。災害後に発生する費用をリスト化し、計画的に予算を立てておくことで、できる限り予想外の出費を減らすようにしましょう。すべてを業者任せにせず、管理組合や居住者で手分けして作業することにより費用を抑えることはないか整理し、撤去、清掃などに必要な道具を用意し、作業方法を決めておきましょう。
居住者の関心を高めるため、管理組合として、マンションの地震への対応力を知る必要があります。
●消防計画・安全点検が地震に対応しているか
●建物の耐震診断を受けたことがあるか
●マンションの災害対策本部の設置場所を決めているか
●定期的に条件・内容の異なる防災訓練をしているか
●水・食料より救助資機材や応急手当品を優先して十分に備えているか
●居住者の安否を確認する方法を決めているか破損箇所の補修に備えた資金の用意があるか
●管理会社や地域など関係者と災害時の連携について話し合っているか
これらについて確認してみましょう。