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- 2013.07.01掲載
今回は、共用部の植栽を計画的に配置し、また風の力を利用して冷気のたまり場を作るという新しい対策方法について取材しました。既存のマンションにも参考になる事例でしょう。
<事例タイトル>
●太陽光発電システムで共用部の電気代を大幅削減
●高圧一括受電で電気代を4割削減
●緑と風の力を利用したマンションの節電
◆自然の恵みを生かした設計
近年、節電意識の高まりとともに、自然の力を利用して設計されたマンションが見られるようになりました。“パッシブデザイン”とも呼ばれるこの手法を10年以上も前から取り入れ、すでに45物件を供給しているマンション会社(東京都板橋区)に話を伺いました。
「例えば、設備機器を用いて太陽熱を発電や給湯などに利用する方法を熱の“アクティブ利用”、それに対して太陽や風などの自然を住戸内に取り入れるため工夫することを“パッシブ利用”といいます」と教えてくれたのは、当マンション会社宣伝部部長の菅原浩一氏。パッシブの考え方に基づいて、できるだけエアコンを使わない暮らし方を目指していて、その工夫は販売するマンションの随所に散りばめられています。
◆緑のカーテンと“ブリーズライン”
一つは緑。敷地南側には強い日差しを和らげる植栽、北側には冷気のたまり場を作る中庭を設けるなど計画的に緑が配され、屋上緑化や壁面緑化、また緑のカーテンなどでコンクリートの躯体が熱をため込むのを防ぎます。ちなみに今ではすっかり一般的になった緑のカーテン、実はこのマンション会社の取り組みから始まったのです。
次に風。居室内に効果的に風を取り入れるため、トイレと浴室以外の居室はすべて引き戸にし、ウォークスルークローゼットなどによって、すべての居室に風の通り道をつくる工夫をしています。面白いのは、この風の通り道を“ブリーズライン(BL)”と名付け、マンションの間取り図に通風性能を表す数値“BL値”を記していることです。
「風の通り道をつくるためには、風の入口だけでなく出口が必要です。この入口と出口を線で結んだ回数をBL値として表しています。通常の“田の字型”の間取りだとBL値5ですが、私たちのマンションではほとんど10以上、多い時ではBL値100を超える間取りもありますよ」(菅原氏)。
◆自然素材で暑い夏も快適に
さらに、内装材にも工夫があります。床は無垢の一枚板を、壁は珪藻土やEP塗装、和室の畳には天然和紙畳など、調質効果の高い自然素材を使用しています。「居住者の方にお話を聞くと、夏に一度もエアコンを使わなかったという方もいましたよ。それはちょっと極端だとしても、皆さんから以前の住まいに比べて快適に過ごせたとご評価いただいています」と菅原氏は言います。
あらかじめ緑のカーテン用のフックが取り付けてあるベランダは、外から見ると緑の連なりが壮観です。居住者みんなが積極的に緑のカーテンづくりに取り組んでいるのが分かります。聞けば、マンションの入居時には土づくりやネットの張り方などを教える緑のカーテン講習会を開いているとか。
今住んでいるマンションに緑のカーテンを、とお考えの方は、土や葉が飛んで他の居住者の迷惑にならないようこまめに掃除をすること、「両隣や上下階の方に、ひと言お断りしておくことも大切です」と、菅原さんは言います。
管理規約等を確認したうえで、まずは自宅のベランダから、手軽で楽しい節電対策を始めてみるのもよさそうです。