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  • 2013.04.01掲載

マンションにかける保険|専有部分、共有部分それぞれの地震保険

株式会社マネーライフナビ 高田晶子

◆専有部分、共用部分それぞれの地震保険

地震保険は、火災保険にセットして契約するものですから、火災保険同様、専有部分については各区分所有者が、共用部分については管理組合が契約することになります。
専有部分にかける地震保険は、「建物」と「家財」とに分かれていますので、それぞれ主契約の30〜50%の範囲内で保険金額を設定します。
共用部分の地震保険は「建物」のみが対象となります。火災保険には管理組合が所有する什器備品も補償対象になっているかもしれませんが、地震保険で補償対象にできるのは「建物」と「家財」のみなので、什器備品は地震保険では補償されません。建物に付けられる地震保険の保険金額は上限が5,000万円ですが、これは1戸あたりとなります。ですので、「専有部分+共用部分の共有持分割合をかけたもの」を5,000万円以内とする必要があります。しかし、この限度額に達する事はほとんどありません。

◆マンションの建物の損害判定の基本は一棟ごと

地震で建物や家財に損害が出た場合には、損害調査によって損害の程度が決まり、保険金が支払われます。マンションの場合、「建物」の損害については、マンション全体の損害状況、つまり共用部分の損害の程度によって判定されるのが原則です。共用部分が「一部損」と認定されれば、専有部分についても、たとえ損害が生じていなくとも「一部損」と認定されることになります。なお、専有部分の損害の方が大きい場合には、その専有部分についての判定で保険金が支払われます。

◆共用部分に地震保険を契約するメリット

マンションの場合の判定方法は前述のような仕組みになっているため、共用部分に地震保険が契約されていれば損害調査が入り、専有部分についても比較的スムーズに損害認定されると考えられます。しかし、共用部分が地震保険に未加入の場合には、マンション一棟の損害調査は行われず、専有部分のみの調査となります。この場合、共用部分が一部損であっても専有部分に損害がなければ保険金は支払われません。地震保険については、共用部分に地震保険をかけておいたほうが、専有部分の地震保険についてもスムーズに運ぶと言えるでしょう。
なお、地震保険の損害の判定で知っておきたいのは、建物の損害については「主要構造部」の損害状況で判定されるという点です。廊下のひびやエレベーターの故障、給排水管の破損などは判定の対象外です。地震保険は損害額そのものをカバーしてくれるものではないので、被害額が大きい場合には保険だけではカバーできません。修繕費について各区分所有者からの拠出が必要になることもあるでしょう。しかし、一部でも保険金でカバーできれば負担は軽減されます。少しでも負担が少なくなることで、修繕がしやすくなれば住民の皆さんの生活の再建も早く進むと考えられます。

◆保険の見直しでは各社比較も行おう

共用部分の保険は管理組合の理事が回ってきたときに、初めて内容を吟味してみたという人が多いのではないでしょうか。よい機会ととらえ、単に更新するのではなく、ぜひ内容を検証してみましょう。検証のポイントは次のような項目が考えられます。

<共用部分の火災保険>
・補償内容に過不足はないか
・同じような内容でもっと安い保険料のところはないか
<共用部分の地震保険>
・地震保険を付帯するのかしないのか
・付帯する場合、保険金額は30〜50%の範囲内でいくらにするのか

補償内容については、各マンションの立地等の特性によって備えるべき補償内容が異なるでしょう。また、保険料は管理費に響くものですから、判断材料としては重要です。保険料は補償内容、保険金額、面積、構造、築年数で決まりますが、各保険会社によって大きく異なる場合があります。このようなことから、複数社から補償内容の提案と保険料の見積もりをとり、比較してみることをお勧めしたいと思います。
なお、専有部分の火災保険・地震保険についても住宅購入したときに、あまり深く考えずに契約したという人も少なくありません。家財の補償や地震保険も含め、共用部分の補償との兼ね合いも見ながら、内容を確認しておきましょう。

Profile
高田晶子(Akiko Takada)
・一級FP技能士
・ファイナンシャルプランナー(CFP)
・宅地建物取引主任者
株式会社マネーライフナビ取締役就任。 All About「住宅ローンガイド」。お金の豊かさだけでなく、お金に対して抱いている不安や不満を取り除くことによって得られる安心感こそ大切なこと。「心豊かな生活を送っていただきたい」がモットー。ライフプランやお金に関する情報コンテンツ制作、ライフプラン・住宅取得等の個人相談業務を中心に活動。著書に「住宅ローン」賢い人はこう借りる!(共著、PHP研究所)など。